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ANA、マイルも貯まるバーチャル旅行アプリ「ANA GranWhale」

ANA NEOは、バーチャル旅行プラットフォームのアプリ「ANA GranWhale」を日本向けにオープンした。iOS、Androidに対応するスマートフォンアプリで、バーチャル旅行ができるエリアは開始時点で国内61カ所、海外3カ所、合計64カ所が用意されている。利用は無料。ANAのマイル会員は、利用することでマイルが貯まる仕組みも用意されている。

「ANA GranWhale」(エーエヌエー グランホエール)は、バーチャル空間で旅行ができるプラットフォーム。バーチャル旅行の「V-TRIP」、ショッピングの「Skyモール」で構成され、マイルが貯まる・使える仕組みも用意される。またグループで参加できる機能を用意、テキストチャットや音声で会話しながらバーチャル旅行を楽しめる。

「ANA GranWhale」の3つの構成

バーチャル旅行の「V-TRIP」

ユーザーは自分の分身になるアバターをアプリ上で作成し、操作。3Dグラフィックのメタバース空間上で、旅行先を選んで出かけることが可能。旅行先の多くは、許可を得て、実際の写真を基に制作されており、“公式感"のあるリアルな雰囲気が特徴になっている。また京都の一部では国交省の都市デジタルツイン「PLATEAU」のデータも活用されている。

歴史やトリビアなど、旅行ガイドの情報も充実させており、詳しい内容を知識として学べるほか、実際の旅行のようにアバターを写し込んだ記念写真の撮影も可能。アバターの衣装を現地に合わせて着替えるといったことも行なえる。

「V-TRIP」
京都の二条城
海外のウユニ湖

オープン当初の旅行先スポットは、京都が19カ所、北海道が23カ所、沖縄が10カ所、そのほか国内が9カ所、海外3カ所となっている。

今後は、現地にあるホテルを予約できるようにするといった、紹介している旅行先スポットと連携した取り組みも進めるほか、ユーザーが写真などを投稿できるユーザー参加型のコンテンツも拡充する方針。

Skyモール

ショッピング空間の「Skyモール」は、メタバース空間内でバーチャルショップが並ぶ、ショッピングモールエリア。商業施設のようにアバターで通りを歩いて回れるほか、ショップの中ではアバターのファッションやアクセサリーといったデジタルアイテムに加えて、自宅に配送される実際の商品を購入することも可能。

オープン当初はANAグループの4店舗に加えて、伊藤園やミズノ、ムラサキスポーツ、SHIPS、ラコステなど合計14店舗が店を構える。

マイルが使える

「ANA GranWhale」内では、毎日ログインして訪れたり、ゲートウェイエリアである「Skyロビー」を巡ったりすることで「グランチップ」を獲得可能。貯まったグランチップはデジタルアイテムに交換できるほか、「マイルガチャ」を引くことでANAのマイルが当たる。

「ANA GranWhale」のサービス内では、有料サービスを利用する際のポイントとして「Vマイル」を設定。ANA マイレージクラブの会員は1マイル=1Vマイルで交換でき、獲得したVマイルをANAのマイルに交換して、実生活で利用することが可能になっている。

リアルとバーチャルの融合を目指すロードマップ

ANA NEOは5月、NFT事業への参入を発表しているが、約3年をかけて開発したバーチャル旅行プラットフォームの「ANA GranWhale」と合わせて、今後は“バーチャル体験"を軸に、2つのサービスの連携・融合を図っていく。その後もコミュニティの形成を図って世界中の人をつなげることを目標にし、教育から行政サービスまでさまざまな分野が集合する「Skyビレッジ」構想につなげていく。

足元の「ANA GranWhale」は、東アジア・東南アジアにて小規模なテストの形でサービスインしており、日本でのローンチに合わせて大々的に展開を開始する。また日本での展開以降の動向をみて、北米や欧州での展開も検討していく。

リアル旅行の価値「絶対に下がらない」

コロナ禍で航空事業が打撃を受けたANAグループは、非航空事業の展開を本格化させており、ANAマイル経済圏の拡大を図る施策など、実生活に結びついたさまざまな取り組みを進めている。

一方で、今回の「ANA GranWhale」はバーチャル旅行がテーマで、(航空事業の)観光需要と被っている、と考えることもできる。ANA NEO代表取締役社長の冨田光欧氏は、そうした指摘を多数受けるとした上で、逆だと明言する。

「ANA GranWhale」を発表するANA NEO代表取締役社長の冨田光欧氏

「リアルな航空会社のANAがバーチャル旅行を提供したら、飛行機に乗らなくなるじゃないか、と言われるが、まったく逆だと思う。訪日客を含め、まだまだ良い観光スポットが知られていない。こういうサービスで体験しても、リアルの旅の価値は絶対に下がらない。本当の旅の価値とは、現地を訪れて、体験したり、地元の人と話しをしたりすること。そういう旅の醍醐味が失われるわけではない。それはバーチャル空間では再現できない。(バーチャルなプラットフォームで)旅先の良さを知ってもらって、それにリアリティがあればあるほど、現地に行きたくなる。このサービスは旅に取って代わるものではなく、旅の入口で、旅を誘発するものだ。訪日客にも、日本のいろんな場所を知ってもらって、ANAで来てもらえれば嬉しいな、というもの」(冨田氏)

今後の展開については、長期的な視点で取り組む方針が示されている。ANAグループにおける直近の3カ年の計画には収益源として盛り込まず、まずはダウンロード数の拡大や、メタバース空間での滞留時間の拡大を図る施策に、今後数年間は傾注していく方針。ロードマップ全体からするとローンチ時点は「3割ぐらいではないか」(冨田氏)ともしており、今後もさまざまな展開を仕掛けていく。