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KDDI、曲がる太陽電池を使った電柱型基地局

KDDI、KDDI総合研究所、エネコートテクノロジーズは、曲がる太陽電池として開発が進んでいる「ペロブスカイト型」と「CIGS型」の太陽電池を活用した「サステナブル基地局」の実証実験を2024年2月から群馬県で開始する。1年間の実証実験で新型太陽電池の課題を抽出するなどして開発を進め、2020年代後半にも実用化を目指す。ペロブスカイト太陽電池で発電した電力で商用基地局を運用する実証実験は国内初としている。

KDDIは、太陽光パネルを活用した「サステナブル基地局」の運用を6月9日から開始している。一方、太陽光パネルの設置には十分な土地が必要なため、大型の鉄塔など一部の基地局への設置に限られ、基地局の多くを占める電柱型基地局やビル設置型基地局など、敷地面積が狭く、太陽光パネルの敷設が難しい基地局への展開が課題だったという。

今回の実証実験では、次世代の太陽電池として開発が進むペロブスカイト太陽電池を採用する。ペロブスカイト太陽電池は、薄い、軽い、曲げやすいといった特徴があり、電柱型の基地局に設置したポールに巻き付ける形で設置する。これにより、敷地面積の少ない電柱型の基地局でも太陽光発電が可能になり、電力を再生可能エネルギーでまかなう「サステナブル基地局」の拡大を図る。また同様の特徴を持つ次世代の「CIGS太陽電池」も設置して、比較を行なう。

太陽電池の形状にポール型を採用する狙いについては、風圧に対する設計が理由に挙げられている。例えば電柱型基地局では地上10m付近に太陽電池パネルを設置することになるため、従来の曲がらない太陽電池パネルでは風圧加重が大きく、設置が困難だったという。

設置可能な数の面では、電柱型の基地局は、これまでサステナブル基地局として展開してきた大型の基地局と比較して圧倒的に数が多く“万単位”にまで増えるため、サステナブル基地局の取り組みやカーボンニュートラルを目指す取り組みを、より一層進められる形になる。

ペロブスカイト太陽電池の発電効率については、ポール型にして発電する事例が少ないとして、実証実験の1年間で詳細を確認していく。現在の予測では、必要な電力の約4割をペロブスカイト太陽電池で賄える見込みとしている。

3社は今後も、カーボンニュートラルの実現に向けて、エネコートテクノロジーズのペロブスカイト太陽電池の技術をKDDIの基地局に活用していく方針。商用展開と「サステナブル基地局」の拡大を目指すほか、ペロブスカイト太陽電池の基地局以外への活用も検討していく。

なお、ペロブスカイト太陽電池を開発・製造するエネコートテクノロジーズは、環境課題に取り組むスタートアップに出資するファンド「KDDI Green Partners Fund」の出資先のひとつになっている。