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パナソニック、コンセントで通信「HD-PLC」を「Nessum」に改称 無線/海中通信も

パナソニックは、電力線通信技術として知られるブランド名「HD-PLC」を、「Nessum(ネッサム)」へ改称。グローバル展開を加速する。

HD-PLC技術は、電力線等を通じてネットワークを構築する技術で、17年前に開発され、社外へもライセンス供与されて製品が販売されている。今回、IEEE標準規格協会の次世代通信規格「IEEE P1901c」として、パナソニックが開発した「Wavelet OFDM」をベースとするHD-PLC技術がドラフト1.0として8月に承認されたことから、今後のグローバル展開を見据えて新ブランド名を発表した。

HD-PLC(High Definition Power Line Communication)は、元々家庭内での電力線を使った高画質の映像通信を目的とした技術名。電力線にネットワークの情報を乗せることが可能で家庭内にLANケーブルを施設することなく、家庭内のコンセントを通じて電力の供給とインターネットの利用できるのがメリット。デメリットとしては、LANケーブルに比べて通信速度が最大でも数10Mbps程度と劣るものの、元々通信速度がそれほど要求されない用途では、配線の容易さなどからメリットがある。

現在では電力線だけでなく、工場やビルなどの同軸線や専用線などさまざな配線にも適用されているほか、ループアンテナを接続することで、近距離無線として利用も可能。用途が拡大したことから、従来の「電力線」をイメージする名称では顧客から「分かりづらい」という声があったほか、サーボモーターの「PLC制御」とも混同されやすくなってきたことから、名称を変更した。

新ブランドは無線・有線の総称として「Nessum」、有線ブランドとして「Nessum Wire」、無線ブランドとして「Nessum AIR」を展開。これまで通信を提供できなかった場所でも「スマート化」を可能にすることをコンセプトとし、さまざまな分野で展開をしていく方針。

低コストで長距離通信が可能な「Nessum Wire」

Nessum Wireは、長距離での通信が可能なのが特徴。施設にネットワークを構築する場合、一般的に利用されるLANケーブルは、100mごとにハブの設置が必要など、数km単位での設置には課題がある。Nessum Wireでは、銅線を使い数kmの距離でもケーブル1本で通信が可能なのが特徴。

例えば、トンネルや地下施設など、遮蔽空間での設置に有利で、無線が届かず、新たな線の追加も難しい状況でも、電力線などを利用すればケーブル埋設工事などのコストも削減でき、さまざまな機器を利用できる。工場内でも、広大な敷地内に施設されている既設の電力線を活用し、工作機械やモニタ、IPカメラなどを同一のネットワークで管理できる。監視カメラや照明、エレベーターの配線、空調装置、太陽光発電モジュールなどもネットワークで簡単に接続でき、スマート化を低コストで進められる。

通信範囲の制御が可能な「Nessum AIR」

Nessum AIRは、通信範囲を厳密に制御しながら通信が行なえる短距離無線技術。配線の末端にループアンテナを接続するだけで、無線LAN機器などを使わずに短距離の無線通信が行なえるようになる。

電波が短距離にしか届かないのが一番のメリットで、数cm~100cmの範囲で通信範囲を制限可能。Wi-FiやBluetoothなどの通信技術では、通信距離が長すぎて他の機器と混信してしまうようなシーンでも混信の心配無く通信できる。

例えば、複数のEV充電器が並んでいる状況で、自分のクルマの駐車スペースにあるEV充電器と通信して充電しようとしても、誤って隣接するEV充電器と通信が行なわれ、充電できないということが起こりうるという。別途センサーなどを使用するなど、解決策はあるが、Nessum AIRならば、そもそも隣のEV充電器には電波が届かず、目の前に駐車した車両とのみ通信が行なえるため、余計な装備を着ける必要が無い。また、駐車場内にLANケーブルを埋設する必要も無く、コストが安い。Wavelet OFDMを活用するため通信速度も最大100Mbpsと高速になる。将来的にはワイヤレス電力伝送と組み合わせた充電制御などのソリューションへの活用も視野に入れている。

海中でも通信を可能になる技術としても研究が進められており、音響通信や可視光線通信に続く水中通信手段としての活用が期待されている。現在は最大4mで1Mbpsの通信が可能になっているが、これを10mまで拡張する予定。