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サツマイモで空調電力削減「芋緑化」 東急不動産が渋谷ビル屋上で拡大

ウノサワ東急ビル屋上

東急不動産は、空調設備の省エネ効果が見込める仕組み「室外機芋緑化システム(芋緑化)」を、オフィスビル屋上での菜園活動「Vegetable Smiles(ベジスマ)」に取り入れ、多くの施設に展開していく。

べジスマは東急不動産が従前より取り組んでいる、屋上やテラスでの菜園活動で、芋緑化を取り入れたべジスマの取り組みは「環境で選ばれる商業施設・オフィスビルに向けたプロジェクト」の第3弾となる。

芋緑化は、日建設計と住友商事が共同で開発した技術で、空調設備のエネルギー削減を目的とした取り組み。空調室外機の周りに芋の葉を繁茂させ、葉による日陰効果と蒸散作用により機器周辺の温度を下げることで、空調電力の低減効果を得る。

イラストレーション・図版作成:カレラ

サツマイモは成長が早く、2カ月程度で完全繁茂となる。また、病害虫に強く対候性もあり、自動給水の潅水装置による管理が可能で人の手がほとんどかからないなど、オフィスビルにおける緑化と相性がよい植物だという。

東急不動産では、2021年に行なったウノサワ東急ビル室外機置場での実証実験で夏期のエネルギー削減傾向が見られたことから、2022年に渋谷道玄坂東急ビル、新目黒東急ビルへ設置範囲を広げて実証実験を実施している。

また、日建設計および早稲田大学・創造理工学部建築学科・高口研究室と共同研究を行ない、日中において最大約10%の省エネ効果があることを確認した。

空調エネルギーはオフィスビル全体の消費エネルギーの約4割を占めるという。ビルの共用部については建物管理者による運転時間の短縮や外こまめな温度調整が可能だが、専有部はテナントごとの操作のため一律での省エネ推進が難しいという課題がある。その中で芋緑化は、テナントの快適性を維持しながら省エネを推進できる有効な手段になり得るとしている。

また、芋緑化では副産物として成熟したサツマイモを収穫できる。東急不動産ではウノサワ東急ビルなど3施設で収穫イベントを開催。約300kgのサツマイモを、イベント参加者への配布、焼きいも販売、取引先への手土産用のクッキーの製作などに使用した。

収穫イベントの様子(2022年10月)
収穫したサツマイモを使ったクッキー(写真:Hiroshi Takano)

2023年は6月上旬に植え付けを実施し、10月頃に収穫予定。イベントを展開して、テナント同士のコミュニケーション促進と省エネに繋げる。

べジスマとは、東急不動産が保有するオフィスビルの屋上やテラスにおいて、約10年にわたって実施している菜園活動。これまでにトウモロコシやブドウ、スイカなど50種類以上の野菜や果物を栽培、収穫しており、加工品づくり等のイベントによるテナント同士のコミュニケーション醸成や、ビル内の飲食店舗のオリジナルメニュー作成、地域住民や近隣の保育園に通う子どもたちの環境教育などに繋げている。

今後は、芋緑化を取り入れたベジスマを強化し、サツマイモ収穫とベジスマをあわせてイベントを展開する計画。また、本社所在地の「渋谷ソラスタ」がある渋谷道玄坂エリア(国道246号沿い)を重点エリアとし、2023年度は新たに芋緑化を2施設(渋谷スクエアA、渋谷プレイス)、屋上菜園を4施設(渋谷ソラスタ、渋谷センタープレイス、渋谷道玄坂東急ビル、渋谷フクラス)に展開する。そのほかベジスマを行なっている施設は、ウノサワ東急ビル、新目黒東急ビル、渋谷道玄坂東急ビル、日比谷パークフロント、東京ポートシティ竹芝。

6月4日に実施した渋谷スクエアAでの植え付けの様子
2023年度の屋上菜園・芋緑化 新規展開施設(国道246号沿い)