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マイナンバーカードを使う「新認証アプリ」 デジタル庁開発へ

デジタル庁は30日、浅沼尚デジタル監による四半期活動報告を開催し、「DFFT」の具体化に向けた取組みや「公共サービスメッシュ」、マイナンバーカードの活用シーン拡大などについて説明した。また、マイナンバーカードを使った本人確認手続きやログイン認証ができる新たな「認証アプリ」の開発についても報告した。

マイナンバーカードを使う「認証アプリ」開発へ

マイナンバーカードの申請数は約9,500万件となり、国民の4分の3を超え、「デジタル社会で一番便利で安全な本人確認ツールとして認知されるようになってきた」(浅沼尚デジタル監)とする。

コンビニでの住民票交付や健康保険証、オンラインでの引越し手続など、利用シーンは拡大しており、日常生活においてさらなる拡大を見込む。コンビニ交付は交付枚数全体の15%となり、金融機関でのオンライン本人確認においては、約50%でマイナンバーカードが利用されているという(2022年11月実績)。

デジタル庁は、マイナンバーカードの使えるシーンの拡大に加え、「サービスの使いやすさ」を追求した「利用者中心のサービス」の実現を目指す。

そのため、新たな取組として、民間サービスなどの個人認証に活用できる「認証アプリ」(仮称)の開発企画もスタートした。

民間のアプリなどでも、マイナンバーカードの本人認証機能を活用できるようにするもの。例えば銀行における本人認証でマイナンバーカードを使う際、独自に機能開発せずにデジ庁によるアプリを呼び出して使うなどで、サービス全体のコストを下げられるようになる。本人認証が必要なサービス開発において、マイナンバーカードを積極的に活用してもらう狙いだ。アプリは、2024年の提供開始を目指す。

利用者視点でサービス開発。新マイナポータルは'24年3月正式版

また、行政サービスを「利用者視点」で開発していく。

一例として挙げているのが「新しいマイナポータル」。2022年末に公開したα版では、利用者中心の開発プロセスを導入している。利用者から意見が直接届く仕組みやユーザーインタビューなどを行なうことで、意見を集約・分析して、サービス改善に活かしている。フィードバックに基づき、手続きの案内や表現を修正したり、ユーザーの状況にあった表示を行なうよう改善しているという。

マイナポータルα版
ユーザーの意見をサービス改善に反映

3月23日には、マイナポータルα版にフィードバックに基づく新機能を追加した。

「やるべきことを忘れない」では、自治体に申請した手続きの進捗を示すほか、利用者証明書の有効期限(5年間)が迫ったら「タスク」として表示する。また、健康保険証の利用登録や公金口座登録などを促す仕組みも備えている。

やるべきことを忘れない

「子育ての記録をいつでも確認」は、出生時の情報や妊婦や乳幼児の検診情報をオンラインで振り返り、予防接種の状況なども確認できる。また健康保険証情報なども確認可能。

子育ての記録をいつでも確認

新しいマイナポータルは、2023年夏にベータ版を公開し、2024年3月に正式版となる予定。こうした利用者視点の開発プロセスは、マイナポータル以外のシステム開発にも反映していく方針。

開発体制も柔軟な開発のため、より小規模な事業者とも協業できる仕組みを構築していく。また、業務知見やノウハウの蓄積に向け、デジタル庁内での内部開発を強化する。まずは、新規サービスや比較的小規模のシステムとして切り出しできる、5つのプロジェクトから取り組む。

  • 本人確認手続きや個人認証を国、地方自治体、民間が横断的に利用できるワンアプリ「新認証アプリ」
  • 「新マイナポータル」のフロントUI
  • インターネットで簡単に補助金が申請できる「jグランツ」
  • 官民のAPIの連携を可能にする「公共APIゲートウェイ」
  • 自治体での手続きなどを改善し、国民の利便性を向上させる省庁のデザインシステムの統一

中長期的には、将来的に中核になるシステムや、柔軟な開発が求められるシステムなどを中心に、「内部開発」の範囲拡大を進める。これらの実現のために、2023年度中に民間出身人材を新たに200名以上採用する方針で、民間出身人材はすでに入庁している人とあわせて500名規模となる。

DFFTを推進。公共サービスメッシュは'25年度稼働

また、2023年4月29日、30日に開催される「G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合」で協議される「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」を推進する取組みや、行政オンラインサービスを支える情報連携システム「公共サービスメッシュ」などに取り組む。

DFFTは、セキュリティなどの信頼を確保しながら、国境を超えて自由にデータを流通、活用できるようにする仕組み。国ごとに違うデータの扱いや考え方、ルールなどが課題となり、海外事業で得たデータを日本で活かせない、あるいは自動運転の走行データを海外で利用できないといった問題が確認されているという。

こうした課題解決に向けて、「通商ルールの形成」や「規制協力」、「技術による対応」の3つの柱を掲げており、このうちデジタル庁では、規制協力と技術による対応を主に担っている。プライバシーやセキュリティなどWTOが担ってきた「貿易」以外の課題について、国際的な課題解決に向けた官民連携の枠組みを構築していく。4月末に開催される「G7群馬高崎デジタル技術・大臣会合」において、「国際的な枠組み」創設を含む閣僚宣言の合意を目指す。

「公共サービスメッシュ」は、行政機関が保持する情報連携のための新たなシステムとして検討が行なわれている。2025年度中の稼働に向けて設計・開発をすすめていく。