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キリン、減塩食品の塩味を電流で増強させるスプーン・お椀

「エレキソルト -スプーン-」(左)と「エレキソルト –椀-」(右)

キリンホールディングスは、明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明研究室との共同研究で、減塩食品の塩味を約1.5倍に増強させる独自の電流波形を開発。使うことで塩味を強く感じるスプーン、お椀型の「エレキソルト」デバイスを開発した。実証実験を実施し、2023年に日本国内での発売を目指す。

塩分のとり過ぎという健康課題の改善を図るデバイス。健康志向の高まりから、日本の減塩・無塩食品市場は拡大を続けており、2015年から2020年にかけての5年間で約26%成長し、2020年の販売額は1,413億円と予測されている。

一方、同社のアンケートでは、塩分を控えた食事(減塩食)を行なっている/行なう意思のある人のうち約63%が減塩食に課題を感じ、そのうち約8割が味に対する不満を抱えていた。この結果から、減塩食をおいしく続けられるようにすることで、健康課題の改善のほか、減塩・無塩関連市場拡大に繋がる可能性があるとしている。

キリンホールディングスは2019年から宮下芳明研究室と共同で、人体に影響しないごく微弱な電流を用いて疑似的に食品の味の感じ方を変化させる「電気味覚」の技術の活用について研究を行なっている。その研究成果として、減塩食の味わいを増強させる独自の電流波形を開発。減塩をしている/していた経験のある人を対象にした臨床試験で、減塩食を食べたときに感じる塩味が約1.5倍程度に増強されることを世界で初めて確認した。

独自開発の電流波形を用いた際の塩味増強効果
エレキソルトデバイス使用時の電流の流れ方

また、減塩に取り組んでいる人の、「薄味ではなく濃い味で食べたいもの」を調査。1位がラーメン、2位がみそ汁という結果から、減塩のために控えているラーメンをご褒美として濃い味で食べたい、日常的に食べる習慣がある一方で味に不満を抱えている汁物をおいしく食べたい、というニーズが高いことがわかった。

こういったニーズに対応するため、ラーメンや汁物を食べるのに適した「エレキソルト -スプーン-」「エレキソルト –椀-」を開発した。いずれも、スイッチで電源を入れて好みの強度(4段階)を選択して使用する。

エレキソルト -スプーン-は、スプーンの柄にあるスイッチで強度を選択。通常のスプーンと同じように使用することで、スプーン先端から微弱な電流が食品に流れて効果を発揮する。食事全般に使用できるが、代表される使用方法の例は、ラーメンのレンゲ代わり、具沢山のスープやカレー。

エレキソルト -椀-は、側面にあるスイッチでで強度を選択。お椀の底部を手で持つことで、お椀内部に微弱な電流が流れて効果を発揮する。想定される使用方法は、味噌汁やお吸い物、ラーメンやうどんの取り分け用の器。

実証実験は9月から、減塩専門店「無塩ドットコム」を運営するノルトと、レシピ提案力に強みを持つオレンジページと共同で実施。ノルトおよびオレンジページの会員を対象に8月から募集を行ない、共同開発した減塩食をエレキソルトデバイスとセットで提供して、満足度を評価する。実施内容は、会場での試食調査、家庭で使用してもらうホームユーステスト。

実証実験で有用性を検証した後、2023年に日本国内での発売を目指す。また、健康的な食を提供する複数の企業とのコラボレーションを推進し、楽しく・おいしく・健康的な食習慣を実現できるサービスの提供を目指す。