ゲームはこれからどうなるのか?
「GAME Watch」これまでの6年、これからの10年



 GAME Watchは2000年12月に、PC Watchからコンシューマやアーケードなども含め「GAME」全般を扱う媒体として産声を上げ、この12月で丸6年になる。バックナンバーを見てみると「ワンダースワンカラー」や「新型プレイステーション 2」が発売となっている。ソニー・コンピュータエンタテインメントのプレイステーション 2が発売されたのが2000年の春で、マイクロソフトに至ってはXbox 360どころかXboxすら発売されていない。そんな時代だった。

セガは2000年1月31日に「ドリームキャストの製造を中止」を断腸の思いで発表した。発売は'98年で、2001年3月で生産を中止
 それほど長い間に渡って媒体運営を続けてきた気がしないのだが、あっという間の6年間だった。携帯型ゲーム機だって、6年前と言えば、すでにゲームボーイカラーが発売されていたが、モノクロがごく当然だった。今ではプレイステーションのソフトをダウンロードし遊ぶことができ、ニンテンドーDSではワンセグチューナーの発売まで予定されている。

 ふと振り返ってみると、ゲーム業界の流れが如何に速いかが判ると同時に、今後の予想が非常に困難であることが判る。それは単純に技術動向だけに左右されないゲームの“エンタテインメント性”故だろう。そこには市場動向と人々のライフスタイルという見えにくいバックグラウンドがある。


携帯型ゲーム機のヒットは据置型ゲーム機にどう影響するのか?

2006年、最もヒットしたゲーム機「ニンテンドーDS Lite」。特にこれまでゲームをプレイしていなかった層を振り向かせた功績は大きい。この層を継続的なゲームプレーヤーに育てていきたいところ

 たとえば、今年一番の話題は「次世代機がスタートラインに着く」と言うことになると思うが (時間的にはXbox 360が1年も早くスタートしているが) 、同時に「携帯型ゲーム機のヒット」が挙げられるだろう。ニンテンドーDSの大ヒットに隠れがちだが、PSPもヒットを記録している。コンシューマゲーム機市場において据置型ハードと携帯型ハードが逆転現象を起こした初めての年と言える。

 この大ヒットの原因として挙げられるのが「東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング」をはじめとしたこれまでゲームをしたことの無い層をターゲットとしたソフトウェアに脚光があたったことだろう。しかしそれだけには収まらないような気がする。ゲーム機の意味合いそのものが変わってきている気がするのだ。

 携帯型ゲーム機と呼ばれていることもあり、個人的には携帯型ゲーム機の使用想定シチュエーションは“移動中”、“移動先”が圧倒的だと考えていた。しかし、携帯電話のゲームアプリを含め、発表されているデータを見ると、携帯電話/携帯型ゲーム機でゲームを一番プレイしているのは“寝る前のベッドの中”なのだという。「携帯していつでもどこでもゲームがプレイできる」ことが重要であると考えていたが、前述のデータの意味合いを考えれば、現在では携帯型ゲーム機は「パーソナルツール」としての側面が大きいことを意味しているのではないだろうか。

 もっと言ってしまえば、“自分だけのディスプレイ”といえないこともない。PSPで音楽UMDや映画UMDが販売され、売上げを伸ばしているのも同様の理由付けを見いだすことができる。自分の好きな映画を自由に楽しめる。チャンネル戦争の行き着く果てとして、1人に1台のディスプレイ……携帯型ゲーム機はそこに滑り込んだのではないだろうか。そういった側面では、ニンテンドーDSのワンセグチューナーもツールと考えれば悪い選択ではないだろう。

 そしてさらに進めていくと、パーソナルツールであるが故にユーザーはネットに接続したとも言える。「みんなでリビングにいながらインターネットが楽しめますよ」と標榜してきた商品がこれまでにもあったが、ヒットした商品はないのではないだろうか。圧倒的な強さを見せるプラットフォームとしてのPCでさえ、現時点では「リビングPC」は成功したとは言い難い状況にある。これはインターネットの性質が、個々人に根ざすものだからではないだろうか。


据置型ゲーム機のこれからは?

  据置型ゲーム機は携帯型ゲーム機のヒットとは逆行する形となる。リビングにあるテレビに繋がることを考えたとき、パーソナルとは逆転するからだ。そうなると旗色が悪くなりそうだが、だからこそ任天堂、ソニー・コンピュータエンタテインメント、マイクロソフトの各社の方針の違いが色濃く出たと言える。

 任天堂は家庭内に敵を作らないゲーム機作りとは? という所からスタートし、ゲームが家庭に入り込んでいくことを想定した作りになっている。テレビのチャンネルを模した「Wii Channel」はまさに体現していると言えるだろう。Wii発売後のミッションとしては、もしこの「Wii Channel」が家庭で受け入れられたとして、そこからどうやって休眠ゲームユーザーを掘り起こすかだろう。

任天堂のファミリーコンピューター。通称「ファミコン」。全てはここからはじまったと言っても過言ではない。最近のアイドルタレントの宣伝材料に「趣味:ファミコン」と書かれていたが、たぶん彼女がプレイしているのはプレイステーションやニンテンドーDSで下手をするとファミコンすら見ていないと思われる。それだけ偉大だという話 そして最も新しい任天堂の据置型ハード「Wii」。誰もが楽しめる機械として「We」と引っかけるネーミングとなっている。これまで自らが築き上げてきたコントローラーの文化を自らリセットし、新しい発想でコントローラを作り上げた。これが受け入れられるかどうかが注目すべき所

 ソニー・コンピュータエンタテインメントはどうなのだろうか? 開発の経緯を見ていると、ゲーム機を超えたいわばデジタルエンタテインメントに特化したPCといった存在感だ。しかしPCだと言ったとたんあちらこちらからこんな話が聞こえてきた。「PCというが、『Office』などのビジネスアプリケーションが動かなければPCとしては機能しないだろう」と。個人的には家庭内で動作するPCという位置づけを考えた場合、別にビジネスアプリが無くても良いのではないかと思う。家庭内でPCにやらせたくても、いまだに簡単にできないことは山のようにあるはずだ。ホームサーバーの商品としての位置づけは家庭において未だに空席となったままなのだ。そこにプレイステーションが入ることは悪くない。

 だが「プレイステーション 3」の発売が近づいてもソニー・コンピュータエンタテインメントからは「『プレイステーション 3』とは何なのか?」という総括的な説明はなかった。そして東京ゲームショウ2006において価格改定を発表。これは、プレイステーション 3がゲーム機ですという説明に置き換えられると思う。土壇場になってソニー・コンピュータエンタテインメントはゲーム機宣言をしたわけだ。

 実際に発売され、「プレイステーション 3」のメニュー周りを触ると感じられるのは、マルチメディアに特化したPCといった印象だ。今後機能拡張が頻繁に行なわれる部分を見ても、これまでのゲーム機とは一線を画す。ソニー・コンピュータエンタテインメントがどうしたいか、その本心は計れないが、今後の展開としては商品特性を考えれば、純粋なゲーム機としてだけでなく、“プレイステーション”というプラットフォームを長期的にかつ総合的にどう成長させていきたいかを示すべきだろう。

2000年3月に発売された「プレイステーション 2」その圧倒的なグラフィックス表現は大きな衝撃を与えた。それ同時にフォーマットとしてDVDを採用したことも大きな革命だった 2006年11月11日に発売されたばかりの最新ハード「プレイステーション 3」。グラフィックス表現はさらにもう一段階突き抜け、HDクオリティを実現。そして、ネットワークマシンとしての機能も発売当初から充実している

 マイクロソフトについて、その優位性はXbox Liveを始めとしたコミュニティにある。そしてそこには巨大なWindowsの資産もあるわけだが、Xbox Liveはゲームをプレイする上でのコミュニティを考えると実によくできている。ほかのゲームを遊んでいてもフレンドがサインアップすれば知らせてくれるし、「このゲームで遊ぼうよ」とお誘いをかけることができる。Xbox 360という“庭”の中で遊ぶという限定事項以外は実に横の繋がりを作りやすく設計されている。

 マイクロソフトはもう一つ、Windowsというプラットフォームをもち、2007年にはVistaが本格投入される。ここではWindows用のゲームがより快適にプレイできるような工夫でいっぱいだ。DirectX 10もリリースされれば、グラフィックス的には今よりも1段も2段も突き抜けたものが登場するだろう。これがどのように影響してくるのか? さらにマイクロソフトの携帯型ゲーム機の影も見え隠れする。

 こういったハードウェアの流れだけではくみ取れない潮流としてオンラインゲームがある。もう無くてはならないゲームジャンルとして市場を形成し、多くの問題をはらみながらも引き返せないところまで来た。

 オンラインゲームの先進国の韓国のニュースを弊誌でも報道しているが、日本以上に市場の流れの速さを強く感じる。オンラインにおけるカジュアルゲームの次に来るものとは何なのだろうか? しかし、一方で面白い話も思い出す。10年ほど前に米Microsoft本社において取材したとき「どんなにマニアックなFPS (一人称視点のシューティング) が流行っても、結局一番アクセス数があるのはカジュアルなカードゲームなんだよ」と聞かされた。市場のパイが違うわけだからそれは当然という気もするが、MMORPGという新しいジャンルを作り上げた韓国市場が一巡して戻ってきたのは面白い。最近では韓国市場と日本市場では徐々に動向が変わってきた印象だが、今後も世界的な規模での市場動向に要注目だろう。

マイクロソフトが満を持してゲーム業界に参入した「Xbox」。Xbox Liveでネットワーク周りを強化したところが新しかった 次世代機中、最も早くに発売された「Xbox 360」。HDクオリティのグラフィックスと、圧倒的に進化したXbox Liveが武器。現状日本では芳しくないが、米国では圧倒的な支持を得ている。日本でもこの冬から来年に向けて多数のゲームソフトの発売が予定されており、今後の展開は要注目だろう


10年後のゲーム機、10年後のGAME Watch

 ゲーム業界はこれまで良くも悪くも“次世代ゲーム機”を中心にまわってきた。ファミコンからスーパーファミコンへ、「メガドライブ」から「セガサターン」へ、「プレイステーション」の登場、そして「プレイステーション 2」になり、Xboxが登場し、プレイステーション 3へと技術革新と共に拡大し、注目を集めてきた。いままさにその瞬間に位置するゲーム業界としてはこの話題に触れないわけにはいかないだろう。そういった意味合いから少し最近の動向に触れてみた。

 ここから10年後を想像すると……一番最初に言ったとおり、その変化ぶりは激しく、おそらく1週間先の天気を予想するより難しいだろう。しかし、これまで書いてきたことはゲーム業界の市場についてハードウェアのリリースの観点から見てきたのであって、実は“ゲーム”のこと自体についてはまったく触れていない。

 ゲーム好きから言えば“面白いゲーム”が先であって、面白いゲームさえ遊べるのであれば別段ゲームのハードウェアがなんであれ関係ないのではないだろうか。そういった意味では新世代機が出れば全部買う。どんな理由があるにせよ、プレイできないゲームがあってはならないわけだし。とにかく面白いゲームが遊べればいいわけだ。

 となると「GAME Watch」の10年後を想像するのは容易い。続けうる限りゲーム好きでありたいわけで、そういった観点から好きなゲームを紹介していく。それはハードが変わっても違いはなく、10年後も変わらずゲーム好きでいることだろう。

(GAME Watch チーフ 船津 稔)



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