2001年12月

vol.23『オーシャンズ11』

vol.22『プリティ・プリンセス』

vol.21『ピアニスト』

vol.20『アモーレス・ペロス』

2001年11月

vol.19『ハリー・ポッターと賢者の石』

vol.18『殺し屋1』

vol.17『ムッシュ・カステラの恋』

vol.16『インティマシー』

2001年10月

vol.15『Short6』

vol.14『メメント』

vol.13『GO』

vol.12『赤ずきんの森』

vol.11『ドラキュリア』

2001年9月

vol.10『陰陽師

vol.9『サイアム・サンセット』

vol.8『ブロウ』

vol.7『ブリジットジョーンズの日記』

2001年8月
vol.6『おいしい生活』

vol.4『キス・オブ・ザ・ドラゴン』

2001年7月
vol.3『まぶだち』

vol.2『がんばれ、リアム』

vol.1『眺めのいい部屋』


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  7歳の少年リアムをとりまく、ちょっと厳しい社会情勢

   舞台は1930年代初頭のリバプール。7歳の少年リアム・サリヴァンは両親とお兄ちゃん、お姉ちゃんの5人家族。貧しいながらも家族はカトリック教徒の誇りを持ってつましく仲良く暮らしていた。そんなリアムの当面の難関は教会での聖体拝領儀式。内気なリアムは先生や神父に地獄の説教なんかされると怖くて声が出なくなってしまうのだ。そんなささやかな暮らしの中、町には不況の波が押し寄せ、父は失業してしまう。なかなか新しい職にありつけない父は、アイルランド人やユダヤ人が自分の仕事を奪っていると逆恨みするようになってしまう・・。


  ダメパパとひたむき少年の構図はソレデモヤッパリシアワセ?

 

 古くはトリュフォーの『大人は判ってくれない』やトルナトーレの『ニュー・シネマ・パラダイス』から『リトル・ダンサー』まで、子供を描いた名作は数限りない。筆者は映画に子供・老人・動物が出てくるだけで涙が止まらない単純人間であるが、最近特に涙が止まらない現象に陥りがちなのは、『運動靴と赤い金魚』や、『太陽は、ぼくの瞳』などのマジッド・マシディ監督作品にみられる「ダメパパ+ひたむき少年(それもちょっと内気)」と言う構図である。

 父権復権なんて駄洒落みたいなことを唱える社会派の作家も多いが、映画で描かれる“父親像”と言うのはえてして「厳格な父」か「ダメパパ」の両極端であることが多い。しかし実際には「厳格な父」と呼ばれる人物が、彼を取り巻く社会現象(リストラであったり、奥さんに逃げられたり)によって、ただの飲んだくれになってしまい、「ダメパパ」に転落してしまうという非常にシンプルな構図が現実社会では一般的。実は「厳格な父」の物語も、監督によってころっと「ダメパパ」の物語になるわけだから、これから父子関係を描こうとする映画監督たちは、ぜひ「厳格な父」→「ダメパパ」→「最後に子供に癒される」という図式の、(読者諸氏大丈夫。これはネタバレではありません)筆者を泣かせる映画をバンバン撮って欲しいものである。



  『がんばれ、リアム』のみどころは、“がんばれ、リアム”なところ

 

 さて、表題の映画であるが、実は前出の図式にプラスされて筆者のポイントが高いのはこの映画のみどころが、そのまま“がんばれ、リアム”なことである。なんたってちょっと見ただけではお世辞にもかわいいとは言えないリアムクン。映画中でもあまりしゃべることはないのだが、名前を聞かれても「スススゥゥゥゥ。。。リアム(半角カタカナ)」となかなかうまくしゃべることができない。しゃべることができないから、言わなきゃいけないことはいつも歌にして歩きながら歌っている(一人で歌うのは大好きらしい)。でも肝心な時にはやっぱりしゃべれない・・・。物語の大きな要素の一つにカトリックの聖体拝領の儀式があるのだが、リアムクンはキリスト像が怖いのだ。だってよく見ると手にくぎが刺さって血が流れてるし、キリスト様は怖い顔をしてらっしゃるし・・。展開は映画に任せるとして、とにかくこれを見ていて“がんばれ!”と思わない人間は筆者とはお友達になれません。そんなリアムクンは人の痛みにとっても敏感で、失業期間が長くて辛そうなお父さんには横にそっと座ってあげるし、貧乏でつかれたお母さんには髪の毛を優しく梳いてあげる。映画自体は1930年代のリバプールという荒んだ時代を背景に描かれるが、リアムクンはそんな時代の片隅に生きる人達にとって静かな初夏の天気雨のような存在なのだ。

 「優しさ」の存在自体が疑われてしまうようなせちがらい昨今だが、それでも純粋な「優しさ」は誰でも持っているはず。「声に出さなくても、出来が悪くても、あなたの優しさはきっと誰かに伝わるよ」。そんな監督のささやきが聞こえてくるような作品だ。「最近、人(恋人・部下・etc)に優しくしてないな~」と思いあたるふしがあるあなたに、是非オススメ!


(okoshi@impress.co.jp)

原題:LIAM
監督:スティーヴン・フリアーズ
脚本:ジミー・マクガヴァン
撮影:アンドリュー・ダン
音楽:ジョン・マーフィー
出演:イアン・ハート/クレア・ハケット/
   アンソニー・ボロウズ/ミーガン・バーンズほか
2000年/イギリス/1時間31分/カラー/ヴィスタサイズ/ドルビーSR
字幕:寺尾次郎
提供:日本コロムビア、朝日新聞社、トライエム
配給:ザナドゥー

2001年晩秋、恵比寿ガーデンシネマにてロードショー

□OFFICIAL SITE(8月上旬オープン予定)
http://www.liam-jp.com/

(C)BBC MM




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