2001年10月
「シブヤ・シネマ・ソサエティ(S.C.S)」 総支配人 山下章さん

「シネクイント」支配人 斉藤 智徳さん

「ユーロスペース」劇場支配人 北條誠人さん

2001年9月
「シネアミューズ」劇場支配人 佐藤順子さん

「東宝株式会社」菊地裕介さん

「アップリンク」中村美穂さん

「セテラ・インターナショナル」加賀谷光輝さん

2001年8月
「ザナドゥー」杉山淳子さん

「ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン」石井恵美子さん

「スローラーナー」遠藤麻早美さん

2001年7月
「有限会社リベロ」武田由紀さん

「日本ヘラルド映画」島田いずみさん

「UIP映画」宮下恵理さん

「オンリー・ハーツ」中村洋子さん

「プレノン・アッシュ」佐藤美鈴さん


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映画に関わる職業につきたかったんです
 でもやっぱりイメージと現実は大きく違いました

 地下鉄表参道駅から3分ほど歩いた住宅街に、知る人ぞ知る映画専門ショップ「CINECITY」がひっそりと佇んでいる。運営母体はプレノン・アッシュ。香港を中心とする中国語圏の作品、ハリウッド黄金期の知られざる傑作群の発掘から出発し、ウォン・カーウァイ作品---『恋する惑星』(95年公開)、『天使の涙』(96年公開)、『ブエノスアイレス』(97年公開)---で単館興業の年間1位を獲得した実力派映画配給会社である。

 

 今回紹介する佐藤美鈴さんはそんなプレノン・アッシュの最も新しいスタッフだ。入社は去年(2000年)の10月。ホームページの人材募集ページを見て応募し、念願の映画会社に就職となった。

 ところで、配給会社の面接では何を聞かれるのだろうか。かねてよりの疑問をぶつけてみた。すると、「最近観た映画の感想などを聞かれました。その後、プレノンアッシュが配給する作品の試写会に招かれまして、観た映画の感想や紹介など、どのようにこの作品を薦めるかという広報・宣伝の実地訓練みたいなことをさせられました」という答えが返ってきた。佐藤さん自身、配給の仕事がどういうものか、まったく知らなかったという。つまり事前準備は一切せず、ぶっつけ本番で面接にのぞんだことになる。佐藤さんは「運良く採用してもらいました」と謙遜気味に笑うが、適正はバッチリだったということなのだろう。

 また、映画にかける情熱も採用の大きな原動力となった。学生時代の休日は映画を観ることがスケジュールの中心だったという。「映画が好きだったんです、やっぱり。他大学の文学部に映画の講義を聴きに通っていたこともあります。レポートはほとんど提出しませんでしたが・・・(笑)」。

獨協大学の外国語学部フランス語学科を卒業後、アルバイトをしながら映画関係の職を探していたという。映画への執念か、のんびりした性格のなせる業か。「死なない程度にはお金を稼いでいました」という彼女の言葉からは残念ながら真実はわからなかった。

 仮に、映画への情熱が異常に激しかったとしてみよう。想いが先行した場合、実際の現場を体験すると、ギャップが生じるのはよくあることだ。就職する前とした後の職業に対する感じ方にギャップはあったのだろうか。「ありましたね~。入る前は、なんかこう、華やかなイメージがあったんです。確かに、そういう場面もあるんですが、基本的には、監督さんや俳優さんを立てるための裏方です(笑)」。確かにギャップはあったらしい。それでも、失望にはほど遠いようだ。そのことは、彼女の嬉々とした喋りから伝わってくる。

 

作品の性質によって宣伝の仕方も変わります

 現在、佐藤さんが担当しているのは『ロマンス X』(公開中)という作品だ。その前は『セシル・B ザ・シネマ・ウォーズ』という作品だった。この、まったく異なる性質を持つ2つ作品について聞いてみた。実際、作品の性質によって、宣伝に対する心構えみたいなものも変化するらしい。

 「『セシル・Bザ・シネマ・ウォーズ』の場合、前向きに元気に、映画が好きな人に素直に観てもらいたいという気持ちで仕事をしていたんです。映画ファンの方々の映画好きな気持ちをもっと拡大させる、みたいな。一方で、『ロマンス X』はちょっと違いますね。自分で女としてはまだまだ未熟でこの映画を全部理解できていないんだなぁ、ということを実感しまして、だからこそ女性にはぜひ観て欲しいと思う気持ちで仕事に望んでいるんです。同時に自分自身も一緒に成長していければ、と思っているんですが」と佐藤さん。なるほど、宣伝も奥が深い。

 

 
1日1回は必ず失敗しています

 佐藤さんはプレノン・アッシュに入社してまだ半年と少しだ。新人に失敗は付きものだが、話によると1日に1回は失敗をしているという。確かにおっとりした喋り方は、失敗を誘う雰囲気を醸し出しているが。最も強烈な失敗とはどんな感じのものだったのだろうか。

 「『セシル・Bザ・シネマ・ウォーズ』の公開直前、ジョン・ウォーターズ監督の来日準備で大変な時期がありました。とうとう明日から来日取材開始という日、忙しくて終電で帰ったのがいけなかったのかもしれないのですが、朝の9時30分までに済ませなければいけない仕事を抱えたまま寝てしまい、起きたのは10時15分でした。その時はもう何も考えられずに行動していまして、気がついたら会社にいました。あの時は社長に電話をかけて、クビでも構わないですが、今日だけは仕事をさせてください、と言ったのを覚えています(笑)」。寝坊による遅刻は新入社員にとって恐怖以外の何ものでもない。それがあの、ジョン・ウォーターズ絡みということであれば、いろいろな意味で頭が真っ白になってもおかしくはあるまい。しかし、ジョン・ウォーターズ監督の"呪い"はまだ続く。

 「あと、これもジョン・ウォーターズ監督に関連することですが、勉強のために彼の作品を延々観続けたことがあるんですけど、しばらくは凄い悪夢を見続けました(笑)。そのために遅刻しそうになったり・・・」。

 

 
男性の評価が決まります

 最後に、佐藤さんに『ロマンス X』の宣伝をしてもらおう。彼女自身の言葉は、作品の持つ独特の個性をうまく表現している。

 「この映画を通して女性には自分の気づいていない女性としての可能性というものを考えて欲しいと思います。男性にはこの映画を観て、女性というものの固定的なイメージを壊して欲しいと思います。この映画の感想を聞くことで、その男性の評価が決まると思いますよ。だからカップルで観に来ていただきたいと思います」。と、いうことである。

 公開初日には、初日限定のプレゼントを用意していたそうだ。どんなものなのかはもらった人たちだけが知っていることにしたいという。佐藤さん曰わく「とてもイイもの」だったらしい。女性の性について大胆かつ繊細に描く『ロマンス X』を担当中の佐藤さんならではの言葉が伺えた。

『ロマンスX』 1998/フランス/95分
監督:カトリーヌ・ブレイヤ
出演:キャロリーヌ・デュセイ、サガモア・ステヴナンほか
配給:プレノンアッシュ
渋谷シネ・アミューズ、シネ・リーブル池袋にて公開中

(C)Flach Film/CB Films/Arte France Cinema

 

 

 

(谷古宇浩司)

 

 

 
 
・・・LINK

□プレノン・アッシュ
http://www.prenomh.com/

□『ロマンスX』OFFICIAL SITE
http://e.goo.ne.jp/romancex/index.html

□特集:『ロマンスX』トークセッション
http://www.watch.impress.co.jp/movie/special/2001/06/08/010608_1.htm

 



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