2001年10月
「シブヤ・シネマ・ソサエティ(S.C.S)」 総支配人 山下章さん

「シネクイント」支配人 斉藤 智徳さん

「ユーロスペース」劇場支配人 北條誠人さん

2001年9月
「シネアミューズ」劇場支配人 佐藤順子さん

「東宝株式会社」菊地裕介さん

「アップリンク」中村美穂さん

「セテラ・インターナショナル」加賀谷光輝さん

2001年8月
「ザナドゥー」杉山淳子さん

「ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン」石井恵美子さん

「スローラーナー」遠藤麻早美さん

2001年7月
「有限会社リベロ」武田由紀さん

「日本ヘラルド映画」島田いずみさん

「UIP映画」宮下恵理さん

「オンリー・ハーツ」中村洋子さん

「プレノン・アッシュ」佐藤美鈴さん


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  シネクイント、そして斉藤さんは映画の鬼である
 「世界中の喜怒哀楽をお届けします」。シネクイントのコンセプトだ。ミニシアターとはいえ、パルコのブランドを背負っている。色が付きやすい。勢い、若い女性をターゲットにデートコースとして有効な作品が上映されがちだ。そんな映画館の支配人である斉藤さんのパーソナリティをご紹介しよう。風貌は至って普通の支配人然としている。しかしその風貌に騙されてはいけない。上映される「お洒落な」作品の上辺の雰囲気にシネクイントの本質を見たと思うのは早合点というものだ。デートメニューの1つとしてシネクイントでの映画鑑賞を選ぶのはいい。ファッションとしてシネクイントで映画を見ることも構わない。ただし、心して欲しい。シネクイント、そして斉藤さんは映画の鬼である。
◆実はロマンポルノの脚本家だった男  

「シネクイントは99年7月にオープンしたわけですが、斉藤さんはそれまで何をしていたんですか」

斉藤さん
「映画の仕事に関わり始めたのは80年代初め頃かな。その頃、日活が若手の発掘に力を入れていてね。脚本家として映画のシナリオを書いていたんですよ」


「脚本家だったんですか!どんな作品の脚本を?」

斉藤さん
「日活ロマンポルノ。ロマンポルノは当時、映画監督や脚本家の登竜門だったんだよ。ただ基本的に映画は好きだったけど自分がポルノの脚本を書くのに向いているとは思わなかったな。若い女性を主人公にして書ける、というので書き始めたわけです。山本奈津子って知ってます?」


「いえ」 [MW補足:主演/山本奈津子『ロリータ妻 微熱』のち改題『未熟妻・微熱』(84年)などに白山完氏と共同で脚本家として参加]

斉藤さん
「そうなんだよね。最近はアダルトとピンクの違いさえわかんない人が多くてさ」


「さすがにそれはわかりますが…」

斉藤さん
「僕は現場があまり好きじゃなくてさ」


「映画の制作現場ですか」

斉藤さん
「そう。だから辞めちゃって、色々な事をしてたよ。フランス座とかで働いたりもしてた。で、以前日活にいた人ってあちこちに分散していてさ。パルコの面接担当者も日活の人だったし」


「へえ。それでシネクイントの立ち上げから関わっているわけですね」

斉藤さん
「ヒョイヒョイヒョイって色んな所を渡り歩いて、ここにいるんです」


「支配人として劇場の運営に携わっていて、脚本家としての経験は役に立ちますか」

斉藤さん
「作品選定は通常3人くらいで当たるんです。僕と僕の上司の部長と配給担当者の3人。場合によってはアルバイトに参加してもらうこともあります。作品選定に脚本家の経験は役に立ちますよ、とても。作品の構造が分かるからさ。なぜ、ここでこのシーンが挿入されるのか、なんてことの意味も、脚本家だったからこそよく分かる時がありますね」


  ◆ビジネス感覚と嗜好のバランス

「今、『クイーン・コング』をやってますね。これは斉藤さんが選んだわけですか」

斉藤さん
「そう。いけると思ったんだよ。ビジュアル的にもいけると思ったし。予算取りをして、パルコパート3の入り口に足跡付けたり、周辺にポスター貼りまくったり、イベントなんかも仕掛けたり、かなり本気でやったんだけど、その時はたぶん商売感覚って全然なかったのかもしれない(笑)。当たらないとさ、ツライんだよね。だからホラ、今は声が小さいでしょ。当たった時っていうのは、もう胸張って歩いているからね」


「なるほど、だから声が小さいんですかー。ところで、イベントというのは」

斉藤さん
「スペイン坂広場でちょっと露出過剰な女性を3人ほど踊らせたんですよ。そうしたら、周辺の人に怒鳴られてさー。常識はないんですか!って。今はけっこうへこんでいるんですよ。しばらくは夜も眠れなかった」


「オールナイトで色々な企画をやっていますよね。スタッフ全員で考えるんですか。それとも斉藤さん一人で?」

斉藤さん
「う~ん。基本的にみんなでアイデアを出し合うんだけど、いい企画ってほとんど出ないんだよね。とても難しい。特に若い人はさ、昔の映画を観ていないんじゃないかな。フェリーニの『道』も観てないようだし。色々な引き出しは欲しいですよね。映画に詳しい方がいいに決まっているんです。でも最近はあまりいないんですよ、そういう人って。で、僕が企画を出すとオールナイトで『女の子限定 日活ロマンポルノ特集』とかになっちゃう。」

◆シネクイントのミニシアターとしての存在感について  


「ミニシアターとしてのシネクイントの在り方をどのように考えていますか。渋谷には多くのミニシアターがありますよね。その中での差別化について」

斉藤さん
「今まで2年間ほどやってきてようやく少しだけシネクイントの立場みたいなものが出てきたかな、と思っています。なんとなくね。今度『メメント』が上映されますが、変則的なミステリーなんですよ。そういう変化球的な作品と『クイーン・コング』のような色モノと、これも上映予定の『ハッシュ!』という、作品の質で勝負する直球があってね。作品のバラエティに富んでいるんです。でもまだ地固めの段階ですよ。極端に路線を変更するのは難しいです。でも、今年は色モノが当たったんですよね。『アタック・ナンバーハーフ』とか『けものがれ、俺らの猿と』とか。正直言ってわかんないですね。本当に難しい」

「映画産業は割に合わないとよく聞きますが…」

斉藤さん
「割に合わないですね。僕は先週の火曜日に休んだくらいでそれ以降は出ずっぱりだもん。ホテル泊まりですよ。朝は早いし、夜も遅い。休日は会議だし、土日も出てきます。ほとんど缶詰状態。それでも給料は安いし。しかも浮き沈みが激しいビジネスだしね。失敗すると落ち込むし」


「でも結局は映画が好きだからやり続けられるんでしょうね。逆にそうでもないとできない、と。ありがとうございました」

(谷古宇浩司)



【劇場データ】
 1999年7月オープン。フランス・キネット社製の座席は、全席カップ・ホルダー付きで全228席。「世界中の喜怒哀楽(エンタテインメント)をお届けします」をキーコンセプトにジャンルを問わない作品の上映を行っている。過去の上映作品は初上映の『バッファロー'66』を皮切りに『GO!GO!L.A.』、『アシッド・ハウス』、『チューブ・テイルズ』、『クロコダイルの涙』、「ギャラクシー・クエスト』など多彩。ホールで手に入る多様な作品チラシを目当てに訪れる映画ファンも多い。シネクイント公式サイトの『支配人日記』は必読!カレー好きなシネクイントのトモちゃんが抱くロマンポルノへの愛情には涙必至だ。

□シネクイントOFFICIAL SITE
http://www.parco-city.co.jp/cine_quinto/

 


オープニング作品
『バッファロー'66』
(1998年 アメリカ作品)
監督:ヴィンセント・ギャロ
出演:ヴィンセント・ギャロ、クリスティーナ・リッチ、アンジェリカ・ヒューストン、ベン・ギャザラほか

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