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パナソニックが進める家電の“再生と循環” 中古もアリ「新・商売の基準」

パナソニックは、メーカーによる検査済み再生品「Panasonic Factory Refresh」の販売を開始する。

すでに、2023年6月から、リファービッシュ品のサブスクリプション(定額利用)サービスや販売を開始し、対象商品を徐々に増やしてきたが、新たに冷蔵庫や炊飯器、ミラーレス一眼カメラ、冷蔵庫などを加えて、10カテゴリーで展開。それにあわせて、「Panasonic Factory Refresh」の名称で展開することになる。同社が打ち出している「新・商売の基準」による新たな取り組みのひとつでもあり、サーキュラーエコノミーの実現に貢献すると位置づける。

パナソニックが打ち出す「新・商売の基準」に、Panasonic Factory Refreshがどう貢献するのだろうか。

サブスク・展示戻りを販売する「Factory Refresh」

パナソニックが、4月10日からスタートした「Panasonic Factory Refresh」は、サブスクリプションサービスの契約終了後の商品や初期不良品、店頭展示の戻り品などを対象に、パナソニックの製造拠点やサービス拠点で再生。厳格な出荷基準を満たした商品に、1年間のメーカー保証を付けて、同社公式ショッピングサイト「Panasonic Store Plus」を通じて販売することになる。買い切り型での販売だけでなく、サブスクリプションサービスとして利用することも可能だ。

同社では、2023年6月から、ヘアードライヤー ナノケアのリファービッシュ品を、サブスクリプションサービスで提供。2023年12月から、ドラム式洗濯乾燥機と4K有機ELテレビのリファービッシュ品の販売を開始。2024年2月からは、卓上型食器洗い乾燥機(食洗機)のサブスクリプションサービスを提供してきた。

新たに、'24年4月から、ポータブルテレビ、ブルーレイディスクレコーダー、ミラーレス一眼カメラ、冷蔵庫のリファービッシュ品の販売を開始。2024年9月には、電子レンジと炊飯器を加えて、10カテゴリーに拡大。「Panasonic Factory Refresh」のブランドで展開することになる。

販売価格は、商品カテゴリーやニーズ、在庫状況、時期、商品個体の傷、使用期間などによって決まるため、固定されるものではないというが、冷蔵庫やドラム式洗濯乾燥機の場合、通常販売時の約2割引きで販売されることになるという。

Panasonic Factory Refreshのロゴを新たに用意して、ウェブサイトなどで使用するが、再生品にロゴは貼付しない。今後、取り扱いカテゴリーを拡大していく考えも示している。

Panasonic Factory Refreshへの再生は、有機ELテレビやドラム式洗濯乾燥機は、テレビ生産を行なっていた宇都宮工場で実施し、ヘアードライヤー ナノケアなどはサービス工場で再生する。

ドラム式洗濯乾燥機は、宇都宮工場のPanasonic Factory Refresh向け専用工程で再生を実施。入荷した商品の外観確認を行ない、本体および付属品を確認したあと、クエン酸洗浄や高圧スチーム洗浄を行ない、動作確認を実施。清掃およびクリーニングを行ない、最終確認後、梱包して出荷する。

また、有機ELテレビでは、基板に搭載されている部品の交換なども行なうほか、ホワイトバランスの調整、性能検査、安全検査なども行なう。

サービス工場での再生は、クリーニングが中心となり、ヘアードライヤー ナノケアでは、外観の傷が3つまでの商品を対象に再生する。傷が多い場合には、筐体部品を交換するといった作業は行なわず、再生から除外するという。

循環の創出と「パナソニックを環境価値のブランドに」

同社の調査によると、家電を、長く、安心して使いたい人は76.7%となり、その理由として、節約や節電、環境負荷への配慮があがっているという。また、これまでのリファービッシュ品購入者の総合満足度は89%に達し、「価格面やSDGsの側面から、良い買い物ができた」、「中古品と感じさせない仕上がり」といった評価があるという。

パナソニック 執行役員 コンシューマーマーケティングジャパン本部長の宮地晋治氏は、「所有から利用へと変化するなかで、新たな選択肢を提供することで、新たなお客様との接点拡大を図るとともに、製造された商品を循環することで、資源の最大活用にも貢献できる。今後は、リファービッシュ品に対するお客様の関心、安心の向上を図る必要がある。そのためにリファービッシュの循環スキームを構築することにした」という。同氏は、パナソニックくらしアプライアンス社副社長およびパナソニックマーケティングジャパン 代表取締役社長も兼務する。

パナソニック 執行役員 コンシューマーマーケティングジャパン本部長兼くらしアプライアンス社副社長国内マーケティング担当兼パナソニックマーケティングジャパン 代表取締役社長の宮地晋治氏

だが、同社では、Panasonic Factory Refreshの収益化は急いでいない。

パナソニックの宮地氏は、「まずは、家電におけるサーキュラーエコノミー(循環経済)の新たな仕組みを日本のなかに作っていくことに注力する。経済産業省の『成長志向型の資源自律経済戦略』に沿って、日本の企業として、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、積極的に参画し、貢献したいと考えている。今回は、その意思表明であり、新たなスキームを作るためのスタート地点に立ったところである」と位置づける。

先に触れたように、対象となるのは、サブスクリプションサービスの契約終了後の商品や初期不良品、店頭展示の戻り品であり、現時点では絶対量はそれほど多くはない。そのため、大規模に事業を展開するものではないという。

「Panasonic Factory Refreshの取り組みは投資段階であり、いまは具体的な事業目標は持っていない。日本社会のなかでスキームを作ることを優先しており、そのなかでどれぐらいの規模で事業が展開できるのかを模索していくことになる。国や自治体と連携して、ルール形成を踏まえて循環型社会を構築し、その後、地域の販売店を通じた販売を開始するといったことを検討していくことになる」とする。

指標として掲げるのは、家電事業全体としてのメリットだ。

「パナソニックを、環境において価値があるブランドとして認知してもらい、圧倒的支持を得られる家電メーカーになれれば、家電事業全体として利益貢献につながる。まずは、購買体験価値、使用体験価値をいかに高め、満足度を高めるかが重要になる」とする。

また、「将来的には、地域における循環型の仕組みづくりにも取り組みたい」と語る。

ドラム式洗濯乾燥機と有機ELテレビは、宇都宮工場で一括して再生しているが、物流コストの問題や輸送に伴うCO2排出量の増加の問題を考慮すると、全国から集めることのデメリットもある。「将来的には、地域で循環する仕組みを構築することも大切である」と指摘する。

さらに、社会の許容性やニーズを捉えながら、ルールも柔軟に変更していく考えだ。

たとえば、ヘアードライヤー ナノケアでは、外観の傷が3つまでとしているが、これを緩和したり、審査基準を変更したりといったことも検討していく可能性を示す。

「厳しい審査基準のままでは、環境の貢献が限定的であったり、市場の拡大につながらなかったりといったことも起こる。循環型社会への貢献度や価値の提供という点も考慮し、審査基準をどこまで緩和をするかといったことも検討し、ビジネスモデルを構築していく」とする。

高付加価値製品のみが対象となる理由。ユーザーの顔が見える関係

一方、今回のPanasonic Factory Refreshの取り組みは、同社が展開している新販売スキームと密接に関連した施策である点も見逃せない。

新販売スキームは、メーカーが指定した価格で小売店が販売し、そのかわりに店舗の在庫リスクについて責任を持ち、在庫の返品を受け付ける仕組みで、指定価格制度とも呼ばれている。

2023年度には、同社の家電商品全体の25%が新販売スキームによるものであり、白物家電に限定すると約4割を占める。一部商品では指定価格での販売比率が6~7割を占めるものもあるという。また、2024年度には、白物家電では5割以上を新販売スキームによって販売する計画だ。

同社が発表したPanasonic Factory Refreshの対象商品は、すべて新販売スキームの対象商品と限定しており、「パナソニックが発売しているすべての商品を対象にすることは考えていない」とする。

パナソニックでは、新販売スキームを通じて、商品価値に見合った適切な価格で販売することを目指している。その点では、「求めやすい価格」を追求する施策ともいえる。しかし、付加価値モデルであるため、機能が気に入っているものの、手が出ないという消費者がいることも確かだ。

「付加価値を持った商品を、求めやすい価格、適切な価格で提供するという点で、循環型商品はひとつの提案になる。より購入しやすい価格で提供することができる」とする。

Panasonic Factory Refreshの価格は、新品の指定価格をもとに、外観や使用時間を勘案して決めていくことになる。新品価格から約2割引きの価格が目安として示されており、購入の敷居を下げることになるのは明らかだ。

一方、Panasonic Factory Refreshは、パナソニックが打ち出してきた「新・商売の基準」の各種施策とも連動していることも重要なポイントだ。

パナソニックでは、全国100カ所のサービス拠点を通じた購入後のサポート体制を敷いている。Panasonic Factory Refreshでは1年間のメーカー保証を付けており、これらの拠点を活用して安心して利用することができる。また、Panasonic Store Plusを通じた販売に限定しているため、購入履歴やサービス利用状況など、顧客の「顔」が見えており、これらのデータを活用した購入提案や利用提案が可能になるほか、IoT接続によって、使用状況にあわせてお手入れの提案をしたり、トラブルを未然に防止したりといったことも可能になる。

さらに、新品では、IoT延長保証サービスを用意し、IoT接続を促進しており、2024年3月末までに900万人が登録しているが、同サービスを通じて、使用状況の定期診断や、クリーニングおよびお手入れの提案、遠隔診断や異常検知などを行なっている。その結果、質の高い商品を多く回収し、Panasonic Factory Refreshとして再生することができるようになることも想定される。

加えて、新販売スキームでは、毎年行なっていたマイナーチェンジのサイクルを見直し、2年以上のサイクルで商品を投入することが可能になってきたが、これは商品モデル数を減少させ、修理のために保有する部品点数の減少にも直結。保有年数の長期化にも寄与する。そのため、Panasonic Factory Refreshを購入しても、長期間利用できる安心感が生まれることにつながる。

このように、Panasonic Factory Refreshは、「再生して販売する」という単独の仕組みではなく、パナソニックが取り組む「新・商売の基準」の各種施策と連動した上で成立するものになる。

「Panasonic Factory Refreshは、パナソニックならではの感動を与えることができる商品を作り続け、それを購入してもらうための仕組みのひとつである。パナソニックのファンを増やして、日本のくらしを豊かにし、持続可能な社会に貢献できる」と、パナソニックの宮地氏は語る。

Panasonic Factory Refreshは、「新・商売の基準」を実現する重要なピースのひとつとなるというわけだ。

大河原 克行

35年以上に渡り、ITおよびエレクトロニクス産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。 現在、ウェブ媒体やビジネス誌などで活躍中。PC WatchやクラウドWatch(以上、インプレス)、ASCII.jp (角川アスキー総合研究所)、マイナビニュース(マイナビ)、ITmedia PC USERなどで連載記事を執筆。著書に、「イラストでわかる最新IT用語集 厳選50」(日経BP社)、「究め極めた省・小・精が未来を拓く エプソンブランド40年のあゆみ」(ダイヤモンド社)など