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立つのがやっとの父退院で家の準備に悪戦苦闘! 両親W介護体験記(3)

前回は父が急性期病院から地域包括ケア病棟のある病院に転院するまでのお話をしましたが、今回は退院・帰宅するまでの準備のお話です。転院先ではリハビリでの運動機能の回復、食欲の回復を目指し、20日後には退院予定。現状、意思の疎通も難しく、立つのがやっとの父が、どこまで回復できるかわからぬままの準備となります。

部屋を圧迫していた家具を処分しスペースを確保

まず手をつけたのが、不要品を捨てること。まあ、断捨離的なことです。最悪、家の中で車椅子を使うことになりそうだし、介護ベッドもほぼ導入確定、となると、ジャマなものはどんどん捨てなければなりません。これを機に母の嫁入り道具で扉が閉まらなくなっていた巨大な洋服ダンスや、今や見ることもできないビデオテープがたくさん入った収納ラックなど、大物も解体して処分。居間に置かれていたコタツも、イスに座れるように高いテーブルに変更(コタツ付き)。とにかくスペースを確保するためにじゃんじゃん物を捨てたり整理したりしていきました。

ずっとコタツで過ごしてきた両親だけに、高いテーブルでもコタツになる商品をセレクト

意外と面倒だったのが、部屋のレイアウトです。父は元々テレビをよく見る人で、退院後はテレビが唯一の楽しみになるかもしれない、ということで目の悪い父でもテレビが見えるように介護ベッドとテレビのレイアウトに関してはあーでもない、こーでもないと最後まで悩みました。結局は無理のないレイアウトにしておいて、問題があればすぐに変えられるようにしておこう、と無難なところに落ち着きました。

いろいろある介護サービス。どれが必要なの?

同時進行で取りかかったのが、介護サービスの手配です。どんなサービスを受けることができて、どのサービスを取り入れるべきか、以前相談した母のケアマネージャーさんに聞いてみることに。転院時の父の状態からすると、必要そうなものは、


    (1)訪問医療(医者が定期的に診療に来てくれる)
    (2)訪問看護(看護師さんが定期的に体の状態を見てくれる)
    (3)訪問介護(ヘルパーさんに来てもらい、生活のサポートをしてもらう)
    (4)福祉用具のレンタル(介護ベッドなど生活に必要な福祉用具を借りる)
    (5)訪問入浴介護(自宅に浴槽を持ち込んでもらって入浴の介助をしてもらう)

ひとまず(1)~(3)は父のことをよく知っているケアマネさんが、ちょっとクセのある父の性格にも合うところを探して手配してくれることになりました。(5)はまだ必要かどうかわからないので、とりあえず浴槽が入れられるように部屋のスペースだけは確保し、退院後に様子を見て必要であれば手配することに。

自治体で配布している介護保険のパンフレットには主な在宅サービスの種類や費用の目安も掲載されていた

どういう状態で帰ってくるかわからないけれど、備えあれば憂いなし、ということで介護マックスの状態で準備だけはしておくことになりました。ちなみにどれも料金は要介護度や介護保険の自己負担分(1~3割)によって変わります。料金の目安は案内してもらえるのですが、父の場合は要介護度も介護保険の割合も決まっていなかったので、ある意味見切り発車。まずは準備万端にしておいて、都度検討して追加・停止していくことにしました。

手軽にレンタルができる充実の福祉用具

ということで、うちで準備が必要なのは福祉用具です。事前にケアマネさんからレンタル用品のパンフレットをもらっていたのですが、とにかく種類が多い。ベッドに車椅子、簡易的にセッティングできる手すりやスロープ、杖に簡易トイレ、入浴補助用具など、介護に必要なものはすべて揃っているんです。

福祉用具をレンタルしている会社のパンフレット。インデックスを見るだけでいろいろな種類が用意されているのがわかる

まずはケアマネさんと相談しながら必要そうなものピックアップしました。意外にも、手すりもレンタルできるんですよね。家の中を歩く時やトイレには手すりが必要だと思い、工事も考えていましたが、格安で借りられるとわかりとても助かりました。これならお試しでまずはレンタルして、必要なら工事するってことができます。しかも車イスはすぐに用意できるので、退院してからでも大丈夫、と言ってもらえたのもありがたかったです。

寝室からトイレまでの導線にセットした手すり。床面には重たい鉄板が入っているので安定感抜群。トイレの前とトイレの中にはつかまり立ちができる手すりを入れた
自力で自宅の風呂に入れるかわからないが、シャワーベンチも用意。必要なければ返却、必要であれば買い取りになる

そして、充実ぶりに驚いたのが介護ベッドまわり。ベッドのタイプはもちろん、マットレスも床ずれ防止など、機能によっていろいろな種類が揃っているし、柵のようなサイドレールも自由に付ける場所や形が決められる。このほかベッド用のテーブルも多種多様。パンフレットを見ただけではどれを選べばいいかわからなかったのですが、一度、福祉用品メーカーの営業さんに来てもらい、父の状態を説明したら適切なものをいくつか選んで説明してくれたので、意外とあっさり決めることができました。

退院直前に搬入した介護ベッド。マットレス、サイドレール、テーブルと安心のフル装備に

この後、再び営業さんが家に来て寸法を測って、指定の場所にベッドや手すりを置いても問題ないかチェックしてくれたり、アドバイスを元に細かな変更があったりしました。福祉用具のレンタルについてはこれで一段落。あとは退院の直前・直後に搬入、セッティングをしてもらうだけとなりました。

認知症の母との生活で気をつけていること

この時期は当然、母との二人暮らしになります。母娘水入らずの生活も始めて1カ月が経ち、私の課題は「うまく母を動かすこと」になってきました。認知症の母は家にいるとほとんど動きませんが、何かをお願いすると「はい!」といい返事をして動いてくれます(といってもお願いしたそばから何をお願いされたか忘れてしまうことも多く、とりあえず返事だけはしておこう、という感じですが 笑)。だから、できることはなるべくさせるように心がけています。

昔から習慣としてやっていたことは意外と覚えているので、ほつれた服を縫ったり、食器洗いのすすぎだけお願いしたり(「洗って」とお願いすると洗剤もつけず、洗い残しも多いので諦めました)、お米を研いで炊飯器にセットしてもらったりしています。料理も野菜を切るなど簡単なことはお願いするようにして、今までできていたことができなくならないようにしているわけです。

逆に自分にストレスがたまるようなことはお願いしない、ということも覚えました。私にも独自の生活スタイルがあり、それを崩されるとかなりイライラしてしまうんですよ。例えば、私は「出したものは指定の位置に戻す」ことを習慣としていますが、でも母は認知症の影響か、洗い終わった洗濯物や食器を空いているところにポンポン入れてしまいます。正直どこにしまったかわからなくなることも多いので(ラップが冷蔵庫に入っていたり、マヨネーズが冷凍庫に入っていたり、なんてこともザラです)、しまう作業はお願いするのをやめました。

「おおらかな気持ちで入れ直せばいいじゃん」と思う人もいるかもしれませんが、こういった些細なことが積み重なってイライラが爆発するので、精神安定のためにもお願いすることは限定しています。それでも高血糖でインシュリン注射も処方されている母が夜中に卵かけご飯を食べたり、妙なタイミングでつまみ食いをしたりすると、それだけで私は大爆発。先日も私の見えないところで母が甘みたっぷりの黒豆の煮汁を飲み干したことが発覚し、激怒してしまいました。まだまだ修業が足りない筆者であります……。

父の状態を確認するために許された転院後初の面会

一方、入院中の父の様子を電話で確認すると、相変わらず食欲が戻らず、自力で排尿できないために入れられた尿道カテーテルも、一度外してみたもののうまくいかず、と、さほど状態は変わらないようでした。そして、入院から約1週間、面会の機会が与えられます。コロナ禍で面会が一切できませんでしたが、父の現状を知るために面会が許されたんです。

一番の目的は、今、どのくらい動けるのかを確認すること。それによってさらに必要となる介護サービスや福祉用品も考えられるからです。当日は例のケアマネさんも同行し、リハビリ室で久しぶりに父と再会。転院時よりも少しは話が通じているようでしたが、とにかく元気がない。仲良しの母のケアマネさんが明るく話しかけても、わかっているのか、わかってないのか、という感じでした。体もベッドから車椅子へ移動して戻る、程度で精一杯。つまり歩けないし、立って座ってがやっと、ということ。「これはベッドから離れられない生活になるかもな~」と思いながら家路についたのでした。

父がどういう状態でも退院の期日は決めているので、あとは準備して帰りを待つのみ。次回は退院から現在についてのお話です。果たして父はどんな状態で帰ってくるのでしょうか?

中野悦子