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海や川での事故防止 夏のレジャーに潜む危険を知る

夏休みには、海や川でのレジャーを予定している人も多くいるでしょう。海や川を楽しむ上で、事故を防ぐために様々な危険があることを知っておく必要があります。ここでは政府広報オンラインが公表している、海や川において事故を防ぐために注意すべき点を紹介します。

水難は海だけではなく川でも多く発生

警察庁「令和4年における水難の概況」によれば、2022年(令和4年)に全国で発生した水難は1,346件、水難者の人数は1,640人で、うち死者・行方不明者は727人にのぼります。政府広報オンラインでも、「いったん事故が起きると、命にかかわる重大事故になる可能性が非常に高いのが、水難の特徴」と指摘しています。

水難の死亡・行方不明が発生している場所は、「海」(49.9%)、「河川」(33.7%)、「用水路」(9.4%)、「湖沼池」(5.4%)となっています。場所別の傾向は、例年大きな変化はありません。

水難の場所別 死者・行方不明者の割合(データ出典:警察庁「令和4年における水難の概況」)

中学生以下の死者・行方不明者の割合を場所別にみると、全体で最も多い海(15.4%)よりも河川(53.8%)が多いことがわかります。

死者・行方不明者(中学生以下)の場所別数(データ出典:警察庁「令和4年における水難の概況」)

水難の死亡・行方不明の行為別のデータもあり、「魚とり・釣り」(25.6%)、作業中(6.3%)、「水遊び」(5.6%)、「水泳」(5.5%)、「通行中」(4.3%)の順です。その他に含まれる中で多いのは、シュノーケリング、スキューバダイビング、サーフィンです。

死者・行方不明者の行為別数(データ出典:警察庁「令和4年における水難の概況」)

政府広報オンラインでは、こうした水の事故を防ぐためには、海や川などそれぞれの自然環境の特徴を理解し、水難につながりやすい危険な場所、危険な行為などを知っておくことが重要と呼び掛けています。

海では場所・体調・天気に注意して子どもはしっかり見守る

海での水難を防ぐための注意点として、遊泳する場所、健康状態、天気、子どもの見守り、ライフジャケットなど自己救命策の確保の5つを挙げています。これらは遊泳だけではなく海釣りの際にも通じるものです。

遊泳する場所については、ライフセーバーや監視員等が常にいる、管理された海水浴場を利用すること。海水浴場以外の海岸は、急に水深が深くなっている場所や岸から沖への海水の流れ(離岸流)などが発生する場所があるため危険であることを知っておきましょう。また、海水浴場以外ではライフセーバーや監視員等が不在なため、万が一事故が発生しても、救助までに時間が掛かる場合があります。

遊泳はライフセーバーや監視員等がいる管理された海水浴場で

事故の要因となる恐れがある「離岸流」とは、岸から沖への海水の強い流れのことです。遊泳中に入り込んでしまうと、流れに逆らって岸へ戻ることは不可能としています。遊泳中の事故内容では「溺水」と「帰還不能」の2つで全体の92%を占め、それらに離岸流が大きく関わっているとみられるそうです。

一般の海水浴客が、海面の様子から離岸流の有無を知ることは困難とされています。管理された海水浴場でも看板や旗、アナウンスなどによる情報提供や監視員の案内にも注意を払いましょう。

少しも泳いでいないのにどんどん沖に流されていく場合などは、離岸流に入り込んでしまっている可能性があります。離岸流の幅は10~30mほど。もし離岸流に乗ってしまったら、海岸に向かって泳がず、海岸と平行に泳ぐことで離岸流から抜け出せる可能性があるそうです。無理に泳がず浮いて救助を待つことも有効としています。

出典:政府広報オンライン(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201608/1.html)

健康状態は、体調が優れないときや睡眠不足等で疲れているときは、遊泳だけではなく釣りなども控えるよう呼び掛けています。特に飲酒後は、判断力、集中力や運動能力が低下していて大変危険なので絶対にやめましょう。溺れた際の死亡率も高くなるとされています。そのほか体調に関しては、準備運動や適度な水分補給も意識して行ないましょう。

事前に天気予報を確認することも大切です。海が荒れているとき、荒れることが予想されるときは、遊泳などを中止しましょう。

子どもと一緒に海に行った際には、子どもから目を離さないようにすることも重要です。子どもは危険が近づいていても察知できないうえに、小さな波でも思いがけず足をすくわれ、溺れることがあるとしています。波打ち際で遊んでいるだけであっても、波にさらわれ沖に流されることがあるので、海に入っていなくても油断しないようにしましょう。

出典:政府広報オンライン(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201407/3.html)

子どもを守るためには、救命策としてライフジャケットを着用させることを推奨しています。また大人でも、ライフジャケット着用の有無が生死を分ける要素になるとしています。

ライフジャケットを着用しても、海に落ちた際に脱げてしまったり、膨張式のライフジャケットが膨らまないといったことがないよう、保守・点検と、正しく着用することが大切です。

海の事故に遭遇した際の救助機関への連絡手段として携帯電話が挙げられますが、携帯電話を海没させてしまうと通報できなくなってしまいます。ストラップ付防水パックを利用して携帯電話等を携行し、連絡手段の確保しましょう。

海上における事件・事故時には118番・NET118を活用できることを頭に入れておくことも重要です。海上保安庁が運用する緊急通報用電話番号で、海の事故で救助を求める際は、携帯電話のGPS機能を「ON」にしたうえで遭難者自身が118番に直接通報することにより、海上保安庁が正確な位置を受信でき、迅速な救助につながります。

出典:海上保安庁 海の「事件・事故」は118番(https://www.kaiho.mlit.go.jp/doc/tel118.html)

聴覚や発話に障がいをもつ方を対象にした、スマートフォンなどを使用した入力操作により通報ができる「NET118」サービスも運用されています。

海上保安庁緊急通報用電話番号「118番」

海に行く際に、家族や友人・関係者に自身の目的地や帰宅時間を伝えておくこと、現在位置等を定期的に連絡することなども、自己防衛策として役立ちます。万が一事故が起こってしまった場合に、周囲の人が事故に早く気づくきっかけとなり、速やかな救助要請、迅速な救助につながります。また、単独行動を控え、2人以上で行動することも迅速な救助につながります。

事故以外にも、クラゲやエイといった危険な海洋生物にも注意が必要です。これらの危険生物に刺されたりした場合は、すぐに海から出て、医療機関を受診しましょう。

海釣りに際しては、釣り場に応じた履物を選ぶことも重要としています。釣り場は非常に滑りやすくなっていることがあり、また海中転落による事故も多いためです。釣り場の環境に合わせた、脱げにくく、滑りにくい履物を選びましょう。

出典:政府広報オンライン(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201608/1.html)

マリンレジャーは技能・体力と天候・海の状況に応じた活動を

そのほか、マリンレジャー事故(海浜事故)で多いのは、サーフィンに関連したものです。サーフィンに関連する事故の内容は、「負傷」が最も多く、次いで「帰還不能」が多くなっています。

負傷は自分のサーフボードや他のサーファーに衝突して負傷するケースが多く、帰還不能はサーフィンに適した乗りやすい波を求めて沖に出過ぎたり、海面に浮かんで波を待つうちに流されたりして岸に戻れなくなったりすることによるものとしています。

出典:政府広報オンライン(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201608/1.html)

こういった事故は、自分の技量をよく知り、周囲の他のサーファーや遊泳者などに注意を払うことで避けられるケースもあるとし、自分の技量や体力に応じて活動することが重要としています。

ウエットスーツを着用する、ルールを守り、周囲の状況に注意するといったことも大切です。

また、遊泳や海釣りと同様、天気予報等で気象・海象情報を入手すること、グループで行動することを心がけるようにしましょう。お酒を飲んだらサーフィンをしないことも徹底する必要があります。

モーターボートや水上オートバイなど、海岸付近から沖合まで広い範囲で行なうレジャーでも事故が発生しています。機関故障や燃料欠乏など、出港前に十分な点検を行なうことで防止できる事故も多いことから、出港前には必ずエンジンのオイルや冷却水、燃料、バッテリーの確認など、船体・機関を点検するよう呼び掛けています。操縦免許証や、海難を周囲へ知らせる小型船舶用信号紅炎、海図などの法定備品も確認しましょう。

そのほか、気象・海象情報の確認、ライフジャケット着用、航行中は確実に見張りを行なうこと、海上交通ルールやマナーを守る、スマートフォンなどの連絡手段の確保が、事故防止ならびに、万が一の時の速やかな救助要請、迅速な救助につながります。

川は右岸と左岸で流れが違うことも

冒頭のデータにある通り、海だけではなく、川での水難も多く発生しています。子どもの事故が多い点も特徴で、絶対に一人では遊ばせないようにすることが大切です。

川は、曲がり方、傾斜、川幅、岩の突出などの地形によって、右岸、左岸でも川の流れが違っていたり、川底に深みがあったりします。そのため、急に流されたり、深みにはまったりする危険があるのです。安全と思われる場所でも、上流で豪雨などがあると急に増水し、水難につながる危険があります。

そのため、川での水難を防ぐためには、川の地形を知り、急な増水に備えることが重要となります。河川財団による「全国の水難事故マップ」では、河川で発生した水難事故のうち、報道などで把握できた事故の発生場所と発生状況を地図上で確認できます。

出かける前には海と同じように天気をチェックするほか、川の情報も確認し、悪天候が予想されているときは、無理をせず、中止・延期を検討しましょう。また、上流にダムがある場合は水量や水の需要に応じて放水することがあり、その場合は急激に増水することがあると認識しておくことも大切です。国土交通省の「川の防災情報」では、全国のリアルタイム雨量・水位などの情報を提供しています。

川の水流が速い・深みがあるところを避けることも、事故を防ぐうえでは大切です。「危険を示す掲示板」が設置されているところもあり、掲示板がある場所では遊ばないようにしましょう。

危険を示す掲示板の一例。出典:政府広報オンライン(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201407/3.html)

遊んでいる際に注意する場所として、河原や中州、川幅の狭いところが挙げられています。これは、急な増水により水没する可能性があるためです。特に中州は、増水すると逃げ道がなくなり、取り残されてしまう危険があります。また、川幅が狭い場所は、増水すると短時間のうちに水位が上昇し、川の流れが速くなる恐れがあると注意喚起しています。

河原や中州、川幅の狭い場所に注意

天気は出かける前だけではなく、川辺にいるときにも注意を払う必要があります。特に「上流(水が流れてくる方)の空に黒い雲が見えたとき」「雷が聞こえたとき」「雨が降り始めたとき」「落ち葉や流木、ゴミが流れてきたとき」などの変化は、川の水が急に増えるサインのため、すぐに避難するよう呼び掛けています。

そのほか、浅い川であっても急に増水することがあるため、ライフジャケットを必ず着用しましょう。

出典:政府広報オンライン(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201407/3.html)
編集部