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日本でスタートする「Xbox Cloud Gaming」の狙い。全てのPCが「ゲーミングPC」に

日本で年内スタート予定だった「Xbox Cloud Gaming」が10月1日から正式にサービスを開始する

マイクロソフトが日本でもクラウドゲーミングサービスを開始すると発表した。日本でもAndroid向けとしてクローズドなベータテストが進んでおり、「年内」スタートが明言されていたが、東京ゲームショウに合わせたマイクロソフトのイベントの中で、10月1日より開始されることが正式発表された。

発表に合わせ、米マイクロソフト Xbox Cloud Gaming担当コーポレート・バイスプレジデントのKareem Choudhry氏と、バイスプレジデントでXbox Cloud Gaming担当Head of Product & StrategyのCatherine Gluckstein氏に話を聞くことができた。詳細をお伝えしよう。

米マイクロソフト Xbox Cloud Gaming担当コーポレート・バイスプレジデントのKareem Choudhry氏
米マイクロソフト バイスプレジデントでXbox Cloud Gaming担当Head of Product & StrategyのCatherine Gluckstein氏

Xbox Cloud Gamingとはなにか

まず、マイクロソフトが展開するクラウドゲーミングの内容について説明しよう。

マイクロソフトが展開するクラウドゲーミングの名称は「Xbox Cloud Gaming」。その名の通り、同社のゲーム事業であるXboxの一部として提供される。

Xboxには有料サービスである「Xbox Live Gold」と「Xbox Game Pass Ultimate」があるが、Xbox Cloud Gamingは後者に含まれるサービスになる。Xbox Game Pass UltimateはXbox Live Goldの内容を全て含み、100タイトル以上のゲームの遊び放題型のプレイ権が付属する。月額利用料は1,100円。要は「Xbox関連なら、これに入っておけば全てのサービスが利用できる」というパッケージだ。

今回そこにさらに、ゲーム機・PCに加え、クラウドでのゲームプレイが追加される形だ。クラウドゲーミングの利用に伴う追加料金は発生しない(通信費は別途発生する)。

Xbox Cloud Gamingで、100以上のコンソールゲームをWindows PC、iPhone、Android でプレイしよう

Xbox Cloud Gamingの対象機種は、Xbox Series XなどのXboxコンソール(家庭用ゲーム機)はもちろん、Windows PCとAndroid、そしてiPhone/iPad。iPhoneとiPadについては専用アプリは使わず、ウェブブラウザーからのプレイになる。Windowsからは、専用アプリ以外にブラウザーからも利用できる。

ブラウザからのアクセス先は「xbox.com/play」。シンプルで覚えやすい。

筆者もAndroidでテストプレイした経験があるが、非常に動作は快適だ。回線さえしっかりしていれば、意外なほど普通に遊べる。もちろん、プレイにはXboxゲームコントローラーなども使えるが、タッチスクリーンなどでも遊べるようになっている。

「好きな場所で好きな時間に」ゲームプレイを提供

さて、ここからは、Kareem Choudhry氏とCatherine Gluckstein氏のインタビューをお届けしよう。サービスの特徴や狙いなどがより詳しくわかってくるはずだ。(以下敬称略)

取材はオンラインミーティングの形で行なわれた。左からGluckstein氏、Choudhry氏

Choudhry:マイクロソフトのミッションは、地球上のすべての人と組織がより多くのことを達成できるようにすることです。その流れでXboxを考えると、プレイヤーを中心に据えて行動する必要があります。私たちのビジョンは、人々が好きなゲームを、好きな人と、好きな場所でプレイできるようにすることです。

この観点で調査してみると、コンソールでゲームをプレイする人の81%が、PCやモバイルでもゲームをしていることがわかります。

Gluckstein:Xboxのミッションは、地球上のすべてのゲーマーに、ゲームの楽しさとコミュニティを提供することです。世界には30億人以上のゲーマーがいると言われています。Kareem(Choudhry氏)が言うように、彼らはさまざまなデバイスでゲームを楽しんでいます。だからこそ、クラウドゲーミングには多くのチャンスがあると考えているんです。

Xboxハードウェアをお持ちの方は、ローカルでゲームを最も忠実にプレイできます。クラウドゲーミングは、テレビが塞がっている時や忙しい時などにゲームをプレイするための追加手段だと考えています。ゲーム機のそばにいないときでも、クラウドを介して中断したところからゲームを再開できます。つまり、ゲーム機で遊ぶのを中断したのちにタブレットでゲームを再生すると、前回の続きから遊べるわけです。

日本ではAndroidでテストを行なっていましたが、サービス開始時には複数のデバイスを使えるようにします。iOSデバイスやWindows PCですね。

重要なことは、我々にとってのクラウドゲーミングとは、コンソールやPCに「加える」ものであり、コンソールやPCを代替するものではない、ということです。ゲーマーの中には、3つのコンソール(マイクロソフト・任天堂・ソニー)で遊ぶ人もいます。クラウドゲーミングだけでプレイする人もいます。我々は選択肢を提供したいのです。

私たちは、最新のXbox Series XをベースにしたサーバーインフラをAzureに導入し始めていますが、日本でのサービス開始時には、すべてのユーザーが、この最新のハードウェアを使ってプレイすることになるので、フレームレートの向上やロード時間の短縮やリッチなゲーム体験など、あらゆる面で改善された形で提供されます。

Choudhry:そして、日本では10月1日から、Xbox Game Pass Ultimateの一部として、Xbox Cloud Gamingがスタートすることになります。

――それはすばらしい。対象となるプラットフォームや機能は、海外ですでにサービスが使える国々と同じ、と考えていいのでしょうか?

Gluckstein:はい、その通りです。しかも、日本市場向けには、9月末に発売される『スカーレット・ネクサス』や『ドラゴンクエスト・ビルダーズ』、そして『HADES』や『龍が如く』シリーズのような素晴らしいゲームが用意されています。今年の年末に発売される『Forza Horizon 5』や『Halo infinite』なども、発売日からクラウド向けにも提供されます。

これらのゲームはすべて、モバイル機器で遊べるよう、タッチ操作も可能になっています。つまり、コントローラーがなくても、タッチ操作だけで約100種類のゲームが遊べるということです。もちろん、Xboxコントローラーも使えますが。

――海外でのXbox Cloud Gamingの利用状況を教えていただけますでしょうか? また、日本でのベータテストの反応はいかがでしたか?

Gluckstein:ゲームへのエンゲージメントが向上し、以前はプレイしていなかった時間帯にもプレイするようになったり、次のお気に入りのゲームを簡単に見つけられるようになったりしていますね。

人々がいつ、どのようにプレイしているかについても多くのことが分かってきました。

モバイル機器では、1日の始まりと終わりに多くのゲームがプレイされており、5人に1人がタッチ操作でプレイしていることが分かっています。

特に日本市場では、プレビュー期間中、素晴らしいエンゲージメントを得ることができました。好評だったタイトルは、「Minecraft dungeons」、「Forza Horizon 4」、「Killer instinct」の順。好意的な意見が非常に多かったですね。

自分たちがこの変化の非常に初期段階にいることを実感しています。クラウドゲームサービスを運営することの意味を学び始めたところであり、技術とインフラ、そしてカスタマー・エクスペリエンスの向上に努めています。

――5Gはクラウドゲーミングにどのような影響を与えるでしょうか?

Choudhry:5Gについて考えるとワクワクしてきますね。

3G以前、音楽は通信産業と結びついていませんでしたが、3Gで非常に密接な関係になりました。映像は、4Gの時代になって密接に結びつくようになりました。そして、ゲームと5Gは、どちらも世界を揺るがすものになると信じています。

――すなわち、4Gにおける映像サービスのような存在が5Gとゲームで成立する、と?

Choudhry:そういうことです。

Gluckstein:クラウドゲーミングの目的は、より多くの人がプレイできるようにすることです。ですから、この体験のために5Gが必須なわけではありません。私たちは、4G接続のお客様がクラウドを介して素晴らしい時間を過ごせるように、非常に努力してきました。

しかし、5Gの普及により、世界中の人々がネットワーク接続を利用しやすくなることは間違いありません。結果として、より高品質な体験を提供することができます。

つまり、より多くの人々をサービスの中に招き入れ、体験を向上させることができるのです。

PCやゲーム機との「食い合い」はない。全てのPCが「ゲーミングPC」に

――クラウドゲーミングという変化は、ゲーム市場にどのような影響を与えると考えていますか?

Gluckstein:まずは、クラウドへの最適化が行なわれますが、ここには3つのセクションがあります。

1つ目は、ローカルデバイス用に開発されたゲームを、他のデバイスにストリーミングすること。次は我々が「クラウド対応ゲーム」と呼んでいる段階。例えば、コンソールやPC向けに開発された『Minecraft dungeons』のようなゲームを、モバイルデバイス向けにネイティブな感覚で楽しめるようにするための、タッチコントロールなどを行なう点ですね。また、フォントサイズやその他のストリーミング機能をサポートするAPIの開発にも着手しており、開発者がストリーミング環境下でゲームを最適化できるようにしています。

そして最後に、私たちが真剣に考えているのは「クラウドネイティブ」タイトルと呼ばれる分野。これは、クラウドの活用を前提に構築されたタイトルです。ゲームのパワーを利用してゲームプレイやスクリーンなどのビジネスモデルを革新し、より魅力的でインタラクティブなゲームを構築するために、世界中の開発者の皆様が、大きな関心を寄せています。

このことについては、私たちは常に考えていますが、まだ結論は出ていません。「この変化の道程は初期段階である」と考えているのです。

――クラウドゲーミングがコンソールやPCのビジネスを脅かす可能性はありますか?

Gluckstein:全くありません。

ここでは2つの行動が見られます。

1つは、誰かがゲームをプレイしているときに、デバイスをまたいでプレイできると、より長く、より多くの時間を費やすことができる、ということです。

次に、より多くのゲームを試していただいているという点です。

クラウドからゲームに参加するのはとても簡単。クリックするだけですぐにゲームが楽しめます。お金を払ってプレイするゲームを決めるまでに、さらに多くのゲームを試すことになります。また、長い間プレイしていなかったゲームを再び遊ぶ人もいます。その様子を見て、また別の人がゲームに飛び込んできます。

カジュアルな人は、最初はクラウドで遊ぶかもしれませんが、その後、コンソールでプレイするかもしれません。

このように、より深く楽しむ人と、より広く楽しむ人の両方が同時に存在しているのです。

――Windows 11について伺います。Xbox Cloud Gamingは、もちろんWindows 10でも遊べます。しかし、これがWindows 11ではさらに積極的なアピールが行なわれています。

Windows 11の登場は、全体にどのような影響を与えるのでしょうか。

特に日本のPCメーカーの多くは、Windows 11によるクラウドゲーミングに非常に可能性を感じているようです。なぜなら、日本のほとんどの人はまだゲーミングPCを持っていないからです。

Choudhry:確かに。PCに関して言えば、以前はゲームができるかどうかが、PCのハードウェア性能で決まっていました。それはWindows 10でも同じですし、Windows 11でもそうなるでしょう。

しかし、クラウドはすべてのWindows PCをゲーミングPCに変えてしまうのです。

ダウンロードしてローカルでプレイすることもできるし、クラウドでもプレイできます。

――先日のSurfaceに関するイベントでは、かなりクラウドゲーミングがアピールされていましたね。

Gluckstein:そうですね。 私たちは、Windowsチームの友人や同僚と協力して、シームレスな体験を進化させ、構築するために取り組んでいます。そのため、Windows 11では、ゲームが実際に組み込まれ、XboxやPCアプリがすぐに使えるようになります。

――クラウドゲーミングのビジネスモデルは今後どうなると考えていますか?

Choudhry:Game Passというサービスは当社における最新のビジネスモデルの革新であり、月々の低価格で何百ものゲームにアクセスできます。クラウドゲーミングに対応することで、Game Pass Ultimateでは、10億台ものデバイスで何百ものゲームにアクセスできます。

私たちは、誰もがゲームをデジタルで購入し、そのゲームを自分のものにできるようにすべきだと考え続けていますし、同時に、サブスクリプションサービスも大切だと考えています。私たちは、これらすべてのモデルをサポートし続け、新しいモデルにも革新を続けていきます。