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Visa、日本でデビットカードを強化。タッチ決済日本一の石川・珠洲市

ビザ・ワールドワイド・ジャパン(Visa)は9日、Visaのタッチ決済の最新情報のアップデートや地方におけるVisaのキャッシュレス推進についての説明会を開催。「日本で一番Visaのタッチ決済が使われている」という石川県珠洲市や北國銀行によるキャッシュレス普及事例などについて説明した。

Visaデビットを日本で強化

Visaは、対面取引の非接触(タッチ決済)を積極的に推進しており、コロナ禍においてその勢いを増している。ヨーロッパでは8割がタッチ決済となり、2021年前半にはアジア太平洋地域においても、対面取引の半分がタッチ決済になったという。

日本でキャッシュレス比率も加速しており、2020年は29.7%となった。コロナ禍では非接触の支払いを積極的に選ぶ傾向が強く、今後も決済回数・金額ともに大幅に伸びると予測している。また、カードだけでなく、スマートフォン(Apple Pay/Google Payなどのモバイルウォレット)やウェアラブルによるタッチ決済の伸長も見込まれる。

Visaが日本市場で強化しているのが「Visaデビット」。日本では個人の銀行口座から出金されるお金の約半分が「ATMからの現金引き出し」となっており、これが日本の現金比率の高さに直結している。Visaデビットを使うと、現金を使わずに銀行口座から引き落とされるため、「現金を持ち歩かず、日常生活に密着した使い方ができる」という点を強調していく。

また、非接触のVisaデビットで支払うことで、1回の決済ごとに約8秒の時間短縮になるほか、現金における衛生的な問題もなくなる。こうした点から、現金を置き換える有力な手段としてVisaデビットを強化していく。

日本におけるVisaのタッチ決済対応カードの発行枚数は、2019年から2021年までの2年で5倍となり、コンビニにおけるタッチ決済利用数は36倍となった。コンビニは特に「現金からキャッシュレスへの移行に重要な役割を果たしている」という。加えて、12の交通機関でVisaのタッチ決済の導入が進められており、買い物から移動までをVisaのタッチ決済でカバーするなど、Visaだけで生活できる環境を整備していく。

Visaタッチ日本一。石川県珠洲市の取り組み

地方におけるキャッシュレスは、都市部に比べて遅れているといわれるが、地域の取り組みによっては、先進的で生活に普及していることもある。その一例として紹介されたのが、石川県を中心とする北國銀行の取り組みだ。

北國銀行の杖村修司頭取は、同行がVisaによる「スーパーキャッシュレスリージョン」として支援を受けて、キャッシュレスを推進している事例を説明。「北陸地方は他の地域と比べてVisaネットワークでのキャッシュレス比率が高く、Visaのタッチ決済もよく使われている」とした。

その中でも、石川県珠洲市は、人口15,000以下、65歳以上の人口が半分以上と小規模な町だが、「Visaタッチの人口あたりの回数がおそらく日本で一番高い」とする。その理由が北國銀行による「デビットとタッチ決済」の普及活動で、「地方で高齢者が多くてもキャッシュレスは進められる」という。

銀行のカード事業というと、一般的にはカード発行を中心に事業展開するケースが多い。しかし北國銀行では、端末や加盟店業務(アクワイアリング)とカード発行(イシュア)の両方を担い、利用者だけでなく「使える加盟店」の開拓に力を入れていることが特徴となる。

デビットカードの発行枚数は約24万枚で、加盟店は6,592店。今後1万店以上への拡大を目指す。カード事業の利益は9.4億円。10年後には40億円を目標としている。

この牽引役となっているのが、北國銀行が2年前から展開しているデジタルバンク「HOKKOKU LIFE+(ホッコクライフタス)」。パブリッククラウドを使い、通帳レス・印鑑レスの口座に、インターネットバンキングとVisaデビットカードをセットしたデジタル口座となっており、9割強の取引がスマホで完結でき、そこにVisaデビットカードをセットにしている。デジタル口座により、「新しいスタイル、ストーリーを提案していくことが大切」という。

加盟店業務とカード発行、ポイント、ECモール、スマホアプリを一体化して提供することで地域のキャッシュレス化を推進。「新しい体験と共感を得てもらってキャッシュレスを進めていく」と地方ならではのキャッシュレス化を強調。また、地方活性化を目指す新しいECサイト「COREZO」も2年前からスタートし、中長期では年間10億円程度の売上を目指す。

銀行業務だけでなく、コンサルティングやシステム、ECなどの「地域総合会社」としての展開を強化。そのパートナーとして、Visaを選んだという。「QRコード決済も否定はしないが、日本では安心・安全、セキュリティが非常に大切。スピードが速いVisaタッチの非接触が顧客ニーズが高い」とVisaとのパートナーシップと地域のキャッシュレス推進を強調した。

杖村頭取は、「キャッシュレスは大手がやるものとお思いかもしれないが、我々は『地域の問題は地域に任せてほしい』と考えている。加盟店はほとんど我々の取引先。加盟店自体の生産性をあげる、DXを進めることを一緒にやっている。交通、大学、公共施設などで高いシェアを持っているため、地域に任せてほしい。加盟店の端末を無料で配布するなど、約4億円規模の投資も行ないながら地域社会を変えていく。それがあってこそのデジタルトランスフォーメーションで地域を発展させていく。他の地域でも我々と同じようなソリューションを広げるお手伝いをしていきたい」とキャッスレスとともに地方のDXを進める方針を説明した。