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店を出たら決済完了。NTTデータのレジ無し実験店舗を体験

レジなし店舗の本格展開へ。NTTデータが実験店舗

NTTデータの「レジ無しデジタル店舗出店サービス」実験店舗

海外における「Amazon Go」や、ローソンが試験的導入した深夜無人営業「スマート店舗」など、「レジなし店舗」に注目が集まっている。その背景としては、人手不足や従業員の労働環境の改善といった店舗側の課題解決とあわせて、レジ待ち解消など消費者のメリットも見込めるからだ。

しかし、店舗のオペレーションや、不正・盗難対策など、まだまだ課題もまだ大きい。

そうした中、NTTデータが提案するのが「レジ無しデジタル店舗出店サービス」。レジ無し店舗への参入意向が強い小売企業を支援し、共同で店舗のデジタル化を推進する取り組みだ。NTTデータ自身が店舗を運営するのではなく、小売業界向けにシステムを提供する形となる。

NTTデータは同事業の展開に向け、実証実験用のデジタル店舗を開発。カメラや重量センサーからのデータ解析を得意とする中国CloudPickとの業務提携によるもので、六本木のビル内に設置されている。広さは約30m2。このレジ無し店舗を体験してきた。

かざして入店。あとは選んで退出するだけ

今回の店舗は、弁当やおにぎり、お菓子や、飲料などの食品や、ウエットティッシュなどの日用品を扱うコンビニ業態的な設定になっている。

主な利用の流れは以下の通りだ。

  • スマホアプリでQRコードを表示し、入店ゲートにかざすして個人を認証し入店
  • 店内で商品を手に取ると、店舗上部のカメラや商品棚のセンサーが、商品を判断
  • 退店ゲートを通ると、認証・決済
  • 購買内容や履歴は、スマホアプリの電子レシートで確認

実際に体験してみたが、極めてシンプルだ。

基本的には、入場のためにスマホのQRコードをゲートにかざすだけ。退出時には認証はいらないので、入場後はスマホをポケットにしまっておいても良い。

QRコードをかざして入店
店内はコンビニ風

入場時には「いらっしゃいませ」とゲートが反応。お菓子やティッシュなどを手にとって退出する時には、ゲートはなんの反応も起こさないので、一瞬、万引きしてしまったようで、すこし不安になる……。

退出時はスルッと通過できてしまう

だが心配は無用だ。スマホの購入履歴を見るときちんと決済されており、レシートでも明細が確認できる。また、決済情報がものの数秒で、スマホに反映されるのも印象的だ。

即座に決済完了
レシートで明細を確認できる

消費者のメリットは、とにかく「レジに並ばずに支払える」こと。買うものが決まっていれば、入場から10秒程度でも退出できると思う。

従業員や店舗経営者にとっても、レジ打ちが無くなることによる業務効率化と労働時間短縮が図れる。また棚の状態が遠隔地から確認できるため、運営負担の軽減や従業員の省力化も見込まれるという。

40台のカメラで行動分析。クラウドで決済

利用者が必要なものは、入場機能と決済機能が紐づいたスマートフォンだけ。

利用者の行動は、店舗の天井に備えた約40台のカメラと、商品棚の重量センサーで把握。手にとって、退店ゲートを通ると、NTTデータの決済プラットフォーム「CAFIS」を通じて認証・決済される。カメラや重量の変化で利用者の行動を把握しており、一度手にとった商品でも、棚に戻せば退店時には決済されない。実験店舗でも商品が誤って判定されることはほとんどないという。

天井に約40台のカメラ

また、カメラによる店内行動解析は、商品のピックアップの判別のほか、商品を購入せずに、棚の前で立ち止まったり、手にとって戻したなどの行動も判別。特徴的な動きに対して、製品に“興味があり”と判断し、後日キャンペーンを案内するなど、個人の行動にあわせたパーソナライズにも対応する。来店を促すクーポンを発行し、利用者が設定を行なわずにお得に購入できるようにする、といった使い方も想定されている。

現在の実験店舗には、人数制限は設けていない。ただし、人が増えるとカメラの死角ができるため、行動把握の精度低下も予想される。そうした課題を抽出するのも実験の目的という。

また、今回の店舗は天井が低く、広く画角が取れないため、カメラ台数が増えているとのことで、実店舗ではカメラを減らせる見込み。40台以上のカメラ画像処理は店舗内のサーバーで行なう必要があるため、実験店舗では処理用のサーバーが複数台設置されている。

映像データの処理は店舗側(ローカル)で、個人IDや決済に紐付いた処理はクラウド側で行なわれる。今後5Gの普及や、カメラ台数の削減、性能向上により、サーバーなどの店舗側設備負担は徐々に減らしていく計画という。

バーチャルアシスタントによる遠隔での店舗案内やサポートも省力化の仕組みとして紹介

業態や規模に合わせたレジなし展開を検証

今回の実験店舗は、コンビニエンスストアやドラッグストアなどの業態をイメージしたものだが、この実験を通して、店舗の広さや業態に応じたカスタマイズや最適化の必要性などを検証していく。

例えば、入場や決済用のアプリについては、大手チェーンであれば「アプリやカードの会員証などで代用したい」という意向があり、会社内に利用者を限定した店舗では、社員証に認証・決済機能を持たせたいとされる。設置場所や業態、規模によって、要求は当然変わってくる。

また、広さや商材によって、求められるカメラ台数やサーバー能力なども異なるほか、従業員の店舗業務フローも違ってくる。そうした課題を抽出し、ビジネスプランに落とし込むための仮説検証などを、実験店舗においてパートナー企業とNTTデータで共同で進めていくという。

2019年度内には、実店舗におけるレジなしデジタル店舗実証実験を1~2店程度で実施予定。2022年度末に小売業界1,000店舗への導入を目標とする。