いつモノコト
みずほ銀行でe-口座にしたら記帳できなくなった話
2021年3月19日 10:03
紙の通帳レスのe-口座が開始
みずほ銀行は、2021年1月18日から、紙の通帳を発行しない「みずほe-口座」をスタートした。通帳を発行しない口座で、みずほダイレクト通帳を申し込めば、入出金明細が見られるようになる。
オンラインでの取り引きはWebブラウザで利用できる「みずほダイレクト」で可能だが、当月と前月、前々月ぶんまでしか明細は確認できない。CSVもしくはPDFでダウンロードできるが、その期間は変わらない。これまで、継続的に取り引きを確認できるようにするには、みずほダイレクトで最低でも3カ月に一度ダウンロードするか、紙の通帳に記帳するしか手段はなかった。
これが、みずほe-口座にし、さらにみずほダイレクト通帳にすると、最大で10年ぶんのデータを保存される(後述するが「最大で10年」に注意)。
みずほe-口座利用者は、基本的にオンラインでのみずほダイレクト通帳を利用することになる。e-口座でありながらも通帳を使うという選択肢もあるようだが、一冊当たり1,100円かかる。
すでに口座を持っている人も、みずほe-口座にし、紙の通帳からみずほダイレクト通帳に切り替えられる。また、1年以上記帳がない口座については、みずほe-口座に自動で切り替わかる。この更新タイミングは、年1回で1月末時点で1年以上記帳がない口座とされている。毎年3月上旬に切り替えが行なわれるようだが、初回となる今年は、2月下旬~3月上旬にかけて複数回実施される予定だったようだ。
しかし、2月28日にシステム障害が発生。定期預金などの移行といった通常の更新に加えて、e-口座への切り替え処理が基幹システムに負荷をかけ、4,318台のATMの停止につながった。この障害では、キャッシュカードがATMに入ったまま取り出せなくなった人も出たという。そのため、記帳ない人のe-口座への変更は「実施のタイミングを当面の間、見合わせることにいたしました」と発表している。
e-口座で10年ぶんを見られるのは約10年後
既存のみずほダイレクトの利用者であれば、e-口座・みずほダイレクト通帳への切り替えは簡単だ。みずほダイレクトから申し込める。まずe-口座に変更したうえで、続いてみずほダイレクト通帳へ申し込むことになる。
筆者の場合は、すぐに使えるようになったと記憶している。みずほダイレクト通帳を利用するには、みずほダイレクトにログインし「みずほe-口座」を選択すればいい。照会する期間を指定して表示させる。3カ月前まで見られる入出金明細と同様の操作で、CSVやPDFでのダウンロードも可能だ。
いまどき紙での記録がどうしても必要ということもないし、データのほうが利用しやすい。紙で必要であればダウンロードしたデータを自分で印刷すればいいだけだ。
ただし、みずほダイレクト通帳で見られる明細は、3カ月より前のもの。それより直近のものは、入出金明細に切り替えて見なければならない。内部的に別々にデータを保存しているのかもしれないが、まとめて表示するUIにして欲しかったところだ。
なお、みずほ銀行にはスマートフォン用に「みずほダイレクトアプリ」があり、みずほダイレクト(ダイレクトバンキング)から利用できるが、Webブラウザに切り替わりそこから見ることになる。
「最大10年分のお取引を手元でいつでもかんたん管理」というのが宣伝文句だが、申し込んですぐ過去10年分の取り引きが見られるようになるわけではない。注として「みずほダイレクト通帳をお申込みされた月の前々月よりお取引明細を最大10年間分ご確認いただけます。」とあるように、オンラインで10年ぶんを見られるようになるのは、9年10カ月後だ。
切り替えると紙の通帳はつかえなくなる
みずほe-口座・みずほダイレクト通帳に申し込むと、紙の通帳は使えなくなる。e-口座に切り替えると、紙の通帳をATMで記帳しようとしても、画面には窓口に行くように表示されてしまう。
正直、筆者は申し込む際に甘く考えていた。
きちんと読めば事前に分かることばかりで、以下に記すことは言い訳めいているのだが、同様に困る人が出ないよう恥を晒すことにしたい。
ポイントになるのは
・今後見られるのは申し込んだ前々月からのぶん
・切り替えると紙の通帳は使えなくなる
の2点だ。
きちんと記帳している人であれば、もちろん問題ないだろう。しかし、みずほe-口座・みずほダイレクト通帳にすると、3カ月より前の記帳していない部分については、見られなくなってしまう。
このポイントとなる2つの、どちらか一方だけだったら、問題はなかっただろう。みずほダイレクト通帳で見られるのが前々月からぶんだけでも、それまでのぶんを紙の通帳に記帳できれば問題なかった。また、紙の通帳が使えなくなるにしても前々月より前のぶんも見られれば、どちらかの手段を使えば済んだ。しかし、実際には共に叶わない。
筆者がみずほe-口座・みずほダイレクト通帳へ申し込んだのは、2月初旬のこと。「最大10年分のお取引を手元でいつでも」といったうたい文句につられ、ロクに説明を読まずに申し込んでしまった。しかし、申し込んだ時点で見られるデータはなにもない。10年ぶん見られるのは約10年後。申し込んだ前々月ぶんから記録されていくわけだが、前々月までは入出金明細で見ることになっている。
3月現在、みずほe-口座・みずほダイレクト通帳で見られるのは、昨年12月の取り引きだけだ。
申し込んだ後、数年前の取り引きが見られないことが分かった段階になって、ようやく「お申込みされた月の前々月よりお取引明細を最大10年間分」という文字に気づく。正直それなら「10年間分」をアピールしないで欲しいのだが、きちんと読まなかった自分が悪いと思うことにした。
それならばと、ATMで記帳しようとしたのだが、前述のように窓口に行くように表示されるだけ。
まだ、このときはみずほe-口座・みずほダイレクト通帳に切り替えると、紙の通帳が使えなくなることを分かっておらず、窓口に行けばなんとかなると思っていたのだからおめでたい。
そのまま、支店の窓口へ向かう。そこで、押し問答になる。「記帳したい」「できません」「e-口座では未記帳の部分は見られない」「その通り」「では、記帳できるように戻してくれ」「一度申し込んだらできません」といった具合だ。Webの説明では、e-口座でも紙の通帳の発行ができるように読めるのだが、筆者の場合はできないようだ。
別の人に代わり、改めて説明を受けたが、話す内容に変わりはない。切り替わるのはいいが、「今まで出来たことが出来なくなるのはおかしいのではないか?」と伝えれば、おっしゃる通りです、お気持ちは分かりますと言う。しかし、ここでこの人たちに文句を言ったところで何か事態が変わるわけではない。
必要もあったので、過去の1年ぶんの取引明細を有償で取り寄せることにした。その場で発行されるわけではなく、10日ほどして郵送で届く。1カ月あたり330円で、12カ月ぶんで3,960円が口座から引き落とされる。これまでであれば、記帳すればすぐに済んだことが、手数料がかかり、しかも10日後である。
なお、取り寄せられるのは、過去7年ぶんだそうだ。であるならば、みずほe-口座・みずほダイレクト通帳に切り替えたときに、それも引き継いでくれればいいのにと言わずにはいられなかったが、やはり「おっしゃる通りです」と返ってくるだけだった。
このとき、問い合わせ先の電話番号を聞き、後日電話もした。「ご意見・苦情専用窓口」だ。自分の確認不足だというのは分かっているし、なにか事情もあるのだろうが、今までできたことができなくなるというのはおかしいと思えたし、「10年分」とアピールすることへの不信感は否めなかったからだ。そこでも、やはり「お気持ちわかります、おっしゃる通りです」と言われる。決定権のある人に伝わればいいなと思うが、どうだっただろうか。
この経緯をSNSで書いたところ、同様に有償で過去のぶんを取り寄せることになった人からコメントがついた。多くはないにしても、3カ月より前を記帳せずにみずほe-口座・みずほダイレクト通帳に切り替えることが、それほどイレギュラーとは思えない。同様に困る人はいるのではないだろうか。
また、(障害により)停止されているとはいえ、1年以上記帳していない人が自動で切り替わり、いざ記帳しようとしたときに気づくこともありそうだ。窓口で対応する行員の手間を増やす変更というのは間違いない。
10年分という過剰なうたい文句でも、申し込んだ前々月からでも、ネットを使って取り引きが見られるのは悪いことではない。紙の通帳が使えなくなるのも仕方ないことなのだろう。記帳してからみずほe-口座・ダイレクト通帳へ切り替えれば、何の問題もない。たしかに筆者の確認不足に尽きるのだろう。それでも、これまでであれば1年ぶんの入出金明細を取り寄せる手間も、手数料の3,960円も不要だったのだ。
これからみずほ銀行でみずほe-口座・みずほダイレクト通帳にしようとという人は筆者のようにならないよう注意して欲しい。