レビュー

スマートホームデバイスが40個以上ある自宅に「Echo Hub」を導入した

Amazonのスマートホームコントロールパネル「Echo Hub」(25,980円)が2月21日に発売された。スマートディスプレイのEcho Showシリーズに似た雰囲気ではあるが、宅内のスマートホームデバイスの管理がメインになるという点でコンセプトの異なる製品だ。

2023年9月に発売がアナウンスされてからの半年、筆者はEcho Hubの登場が待ち遠しかった。なぜなら、自宅で稼働中のスマートホームデバイスが計40個以上もあり、一元管理が困難になっていたから。

そんな我が家に“スマートホームハブ”となる「Echo Hub」を実際に導入してみてどうだったのか、お伝えしていきたい。

Echo Hub

Echo Hubってどんなもの?

これまでAmazonはスマートディスプレイ製品としてEcho Showシリーズを展開してきた。画面サイズによって多少の使い方の差はあれど、音声認識による情報収集や音楽・動画の再生がどちらかというとメイン用途で、サブ的にスマートホームデバイスのコントロール機能があったのではないかと思う。

Echo Show 5とEcho Show 15

それに対して新たに登場したEcho Hubは、同じようにディスプレイ付きではあるものの、メインはスマートホームデバイスのコントロールで、他はサブ的な機能となる。Echo Showとは位置付けが異なり、この時点で利用しているスマートホームデバイスの数がさほど多くないユーザーにとっては選択肢から外れるだろう。数個のデバイスしか設置していないのであれば、スマホ(アプリ)や既存のスマートスピーカー・ディスプレイで十分にカバーできるからだ。

デバイス数個ならスマートスピーカーからの音声指示でも十分だったりする

というわけで、そんなEcho Hubについて、ハードウェア面でどういった製品になっているのかを簡単に説明すると、8型(1,280×800ドット)の液晶タッチディスプレイを搭載し、基本的に壁掛けスタイルで利用するデバイス。ということもあり、Echo Showよりはずっと薄型のタブレット風のボディだ。

付属品は壁掛け用アタッチメントとACアダプタ
コンパクトな8型液晶
従来のEcho Showシリーズより薄型のボディ
右側面にボリューム調整ボタンとマイクミュートボタン

付属のType-CケーブルとACアダプターで電源供給し、壁掛けしたときにケーブルが邪魔になりにくいよう、本体背面側にはケーブルを巻き付けて長さ調整できるスペースが設けられている。米国などではアクセサリーとしてスタンドも用意されているようだが、日本国内では未発売。といっても、タブレット用のスタンドを使ってもいいし、壁掛け用のアタッチメントと何らかの板を組み合わせればスタンドをDIYするのも難しくはなさそうだ。

背面側には電源供給用のType-Cポートと、ケーブルを巻き付けられるスペースがある
壁掛け用アタッチメントは壁にねじ留めして使う
そこに本体を掛けるだけ

カメラは搭載せず、代わりに近接センサーで人の接近を感知する。近づくと、通常は待機状態のフォトフレーム(時計表示)画面がすぐにホーム画面(スマートホームデバイスの操作画面)へと切り替わる仕組みになっている。

宅内ネットワークやインターネットにはWi-Fiで接続でき、内蔵のBluetooth機能で外部スピーカーから音声出力したり、外部マイクで音声入力したりもできる。

上部に設けられた近接センサー

ちなみに仕様上はPoE+またはPoE++にも対応するとしている。PoE(Power over Ethernet)とは、LANケーブル経由でデータ通信と電源供給を実現する仕組みで、業務用のネットワーク機器や監視カメラなどで採用されていることが多い規格だ。

ただし、Echo HubにはLANポートがないので、LANからType-Cに変換するPoE対応アダプター(一般的なType-C接続のLANアダプターは使えない)を別途用意する必要がある。この記事の執筆時点でその対応アダプターは明らかにされておらず、もしそれを準備できたとしてもネットワークスイッチからデバイスまで、通信と電源を1本のケーブルでシンプルに実現するというPoEの利点が活かせないため、メリットはあまりなさそうだ(ということで、日本の販売ページにはこの仕様は記載されていないものと思われる)。

これはPoE対応のネットワーク機器。LANケーブル1本で通信と電源供給を実現するが、間に変換アダプターが必要となるとPoEの利点は活きないように思える

機能面についてはこの後詳しく紹介するが、スマートホームデバイスの管理がメインではあるものの、Echo Showシリーズと同じように音楽再生(Amazon Musicなど)と動画視聴(Prime Videoや、内蔵Webブラウザー上でのYouTubeなど)も可能ではある。Amazon Musicで再生している音楽を他のEchoデバイスにキャストできる点も、Echo Showシリーズと同じだ。

音楽・動画コンテンツの視聴も一応可能

Echo Hubで何ができる?

Echo Hubにおいて最も特徴的で、Echo Showシリーズとも大きく異なるところは、「ホーム画面の使い勝手」。待機状態のときはフォトフレーム状態(設定によっては消灯状態)になっているが、Echo Hubに近づくとすぐさまホーム画面に切り替わり、スマホのAlexaアプリで設定済のスマートホームデバイスの操作が可能になる。

離れているときは待機状態でフォトフレームとして機能している
近づくと即座にホーム画面に切り替わる

Echo Showではスマートディスプレイの使い方のヒント、おすすめコンテンツ、ニュースなんかがスライド表示されるが、そういったある意味「余計な」情報はEcho Hubの待機画面には出てこない。

ホーム画面にウィジェットとして音楽コンテンツのランキングやメモ、スケジュールなどを配置しておくこともできるとはいえ、やはりメインはスマートホームデバイスのコントロールだ。

Echo Showではこういった情報がいつも表示され「大きなお世話」と感じることもたびたび……
Echo Hubでもウィジェットとして音楽ランキング、メモ、スケジュールなどが用意されてはいる

ところで筆者の自宅には、現在稼働しているものだけでも計40個以上のスマートホームデバイスがある(当初使ってはいたが、淘汰されていったものも数十ある)。代表的なものをピックアップすると、カメラ3個、照明20個、温湿度計3個、玄関ロック2個、ドアベル、(スマート機能付き)エアコン、電力モニタリング機器などだ。

一戸建てでそれなりにスマートなホームにしようと思うと40個程度はすぐに達してしまうので、極端に多いとは言えない数かもしれないけれど。

筆者宅で稼働中のスマートホームデバイスの一部

しかし、それらを手元で素早くコントロールしようと思うと、スマホや通常のタブレットでは難しい。いや、照明のオンオフとかカメラ映像のチェックくらいなら、最近はスマホのロック画面などから(AndroidやiOSの「ホーム」機能を使って)すぐに呼び出せるので「難しい」というほどではなくなっている。それこそ今回のEcho Hubの大元の設定アプリとなるAlexaアプリもそうだ。

ただいずれにしても、「スマホの画面オン」→「機能呼び出し」→「デバイスが表示されるまで待つ」→「デバイスの状況確認・操作」という手順はかったるい。もっとパパッと、壁にある物理照明スイッチを操作するくらいの気安さでスマートホームデバイスをコントロールできるようにしたいし、40個以上あるデバイスをもっと有効活用したい。そんな希望をある程度現実にしてくれるのが、このEcho Hubなのだ。

最近のAndroidやiOSでは「ホーム」機能でデバイスを一元管理できるようになってきているが、操作できるようになるまでのステップはまだ多い

スマホやEcho ShowにはないEcho Hubの強み

Echo Hubのホーム画面には、Alexaアプリで設定した「お気に入り」のデバイスやカメラ映像のサムネイルなどがウィジェットとして配置されており、画面下部にはロック、照明、エアコンなど他のデバイスのボタンが並ぶ。このうち照明については点灯中の数、エアコンについてはセンサーで計測した室温がそれぞれ表示され、現在の宅内状況がひと目で把握可能だ。

Echo Hubのホーム画面に並ぶウィジェットやボタン類
点灯している照明の数とエアコンのセンサーによる室温がわかる

そんななかでもカメラ絡みの機能は特に便利だ。複数台のサムネイル(カメラが動作検知した時のスナップショット)をホーム画面に並べておけるうえ、タップすれば個別にライブ映像を見ることも、複数カメラのライブ映像を同時表示するのもOK。

筆者宅ではAmazon傘下のRingのドアベル(カメラ内蔵)1台とカメラ2台、Google Nest Camを1台設置しているが、Ringは当然として、Googleのカメラもしっかり並列でライブ表示できている(Nest Camはサムネイル表示には対応していない)。

カメラ(うち1台はドアベル)の映像サムネイルが表示。今のところはRingのカメラで、かつ「Ringプロテクトプラン」(現在無料提供中)加入者のみ表示される
1台のカメラ映像はもちろん、同時に4台のライブ映像を同時に表示することも可能

また、画面左側にリスト表示されているグループ(Alexaアプリで設定したデバイスのうち、Echo Hubで扱えるものが含まれるグループのみが表示される)を選ぶことで、それぞれのグループに属しているデバイスのサムネイル(ウィジェット)表示に切り替わる。その後はホーム画面と同じようにグループごとの各デバイスの状況確認やコントロールが可能だ。

左側のリストからグループを選ぶと、そのグループごとのデバイスのウィジェットが表示

つまり、「Echo Hubに近づく」→「即座に画面オン」→「デバイスの状況確認」というような流れになり、画面タッチすらなしに部屋の状況がある程度つかめてしまう。詳細確認やデバイスの操作が必要な場合も、そこからワンタッチするだけ。最終的にできることはAlexaアプリやスマホのホーム機能とほとんど同じではあるが、それらよりも少なくとも2、3ステップは省略できるので、デバイスへのアクセス性が飛躍的に向上する。

個別の照明やエアコンの操作もワンタップかせいぜいツータップ

ちなみにAlexaアプリで管理できるデバイスでも、その対応状況によってはEcho Hubのホーム画面にボタンなどの形で表示できなかったりするが、そういった非表示デバイスでも音声による呼び出しに対応するものがある。たとえばSwitchBotの温湿度計や電力モニタリングのNature Remo Eシリーズなどだ。これらはEcho Hubに呼びかけることで音声で温度などを教えてくれたり、消費電力の推移を表示してくれたりする(Echo Showシリーズの場合と同じ)。

Nature Remo Eシリーズを音声で呼び出すと電力消費や料金の目安をグラフ表示できる

そしてもう1つ、筆者としてはかなり大きなポイントだと思っているのが、Ringのドアベルからの呼び出しと映像表示が「ちゃんと機能する」こと。

というのも、もともとRingのドアベルはEcho Showシリーズと連携してドアベルからの呼び出しを音で通知し、自動でドアベルのカメラ映像を表示するようになっているのだが、最初の数回もしくは数日間は問題なく機能するものの、その後は一切反応しなくなる問題があるのだ。なので、Echo Showとの連携は実質使い物になっていない。

ところが、Echo Hubではこれまでのところそうした問題は皆無。2週間ほど電源を入れっぱなしにしているが、ドアベルが押されるとすぐに音声通知があり、だいたい2秒くらいでカメラ映像に切り替わる。「相手が誰かを確認してから玄関先に出る」という言ってみれば当たり前のことが、当たり前のようにできるようになり、ちょっと感動した(でもEcho Showでの不具合は早く直してほしい)。

ドアベルの呼び出し時には、ちゃんとすぐに通知してレスポンス良く映像表示もしてくれる

ちょうどいいサイズ感だが設置方法はバリエーションがほしい

「近づくだけで使える」ということもあり、Echo Hubの使い勝手をいかに高めるかは「設置場所をどこにするか」にかかっているところもある。Echo ShowシリーズはAmazon MusicやPrime Videoの再生のことも考えて、自宅のなかでも長い時間を過ごす場所に置きたいが、スマートホームデバイスの確認や操作が中心のEcho Hubはもっと違うところに置いたほうが良さそう。

たとえば玄関、キッチンの冷蔵庫、ドアホンの室内機を置くべき場所など。その意味でも8型というサイズは設置しやすさの面で都合がいいが、標準の取り付け方法が「壁掛けのみ」となっている現状はもったいない。

首振も可能なスタンドや、マグネットで貼り付けられるアタッチメントなど、バリエーションをいくつか用意してもらいたいなあ。

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。