レビュー

スマートリング「Oura Ring Gen3」を1カ月使ってわかったこと

「Oura Ring Gen3 Horizon」をじっくり使ってみた

日常の身体活動をトラッキングするスマートな活動量計は、手首に巻いて使う腕時計型やバンド型ばかりかと思いきや、最近は指にはめて使う指輪型のデバイスも続々と登場している。今回はそのうちの1つ、「Oura Ring Gen3 Horizon」(以降、Oura Ring)を1カ月間使ってみた。何ができ、どんな風に役立つのか、1カ月でわかってきたこととは……。

Oura Ringとは?

Oura Ringは、健康状態のトラッキングに特化した指輪型スマートデバイスだ。日本国内では最新の第3世代が2022年後半に発売され、主にソフトバンクショップやオンラインストアの「SoftBank SELECTION」が取り扱っている。

Oura Ringのパッケージ

チタン素材のリングに各種センサーとバッテリーを内蔵し、心拍や心拍変動(HRV)、SpO2(血中酸素飽和度)、体表温、呼吸数などを常時計測できるほか、ウォーキングやランニングなどのアクティビティも自動検知する。専用スマートフォンアプリと連携することでそれらのデータを記録し、日中や睡眠時の身体活動を数値やグラフで見える化できる、というのが特徴。水深100mまでの防水に対応し、スイミングや入浴も含め、丸1日装着したまま過ごせる耐久性ももつ。

本体価格は65,800円から。アプリのフル機能を使い続けるには月額6.99ドル(約1,000円)のサブスクリプション登録が必要となるが、ソフトバンクショップショップやSoftBank SELECTIONで購入する場合、特典として1年分のサブスクが付帯する。

通常の指輪と同じで購入後は自分でサイズ調整が不可能な性質上、事前に自分の指にどのサイズのOura Ringがフィットするのか確認しておかなければならない(通常の指輪の号数とはサイズ感が異なる可能性がある)。そのため、専用の「サイジングキット」が用意されており、これを初めに購入して自分の指サイズを確認してから本注文することが可能だ。

Oura Ringのサイジングキット

なお、サイジングキットの価格は2,000円だが、購入時には同額のクーポンがもらえるので、そのクーポンをOura Ring本体の購入に充てれば実質無料でサイズ確認できることになる。

Oura Ringは人差し指に装着することが推奨されている。なので、筆者は利き腕ではない左手の人差し指にはめて使うことにした。充電でたびたび脱着を繰り返すことも考慮して、きつすぎないサイズをサイジングキットで確かめておくと良さそうだ。

左右両手の人差し指でサイズチェック。筆者の指には10号がフィットした

データの意味がわからなくても健康の把握・改善に取り組める

届いたOura Ring。内周に複数のセンサーがあることがわかる

Oura Ringが目的としているのは、心拍などを計測することによる身体活動や健康状態の監視と、それらをもとにした健康・身体パフォーマンス改善だが、そのなかでできることは多岐に渡る。冒頭で紹介したように、心拍数はもちろんのこと、心拍リズムのゆらぎを表すHRV、コロナで一躍知られるようになったSpO2なども24時間計測する。体表温も測定可能だが、ヘルスケア観点では主に月経周期などを把握したい女性向けに用いられるデータとなる。

凹み部分(センサーがある側)を手のひら側に向けておくのがベター

こうした計測データをもとにしたさまざまな身体情報は、連携する専用アプリ上で「コンディション」「睡眠」「アクティビティ」という3つのカテゴリーに分類され、数値やグラフによって表現される。日々の身体情報を記録し続けることで、本人でも自覚しにくい体調の変化、あるいは変化の予兆などに気付けるようになるわけだ。

Oura Ringの専用アプリでは、最初に自身のプロフィールや目標、課題などを設定することで、これに沿ったアドバイスがもらえるように
セットアップ直後の初期画面。下部の「コンディション」「睡眠」「アクティビティ」の各カテゴリーでそれぞれの詳細なデータを閲覧できる

ただ、いくら詳しいデータが計測されたとしても、それを正しく読み取れなければ活用もできない。心拍数やHRVの値の大小がどんな意味をもつのか、正確に理解できるユーザーは多くはないだろう。Oura Ringのアプリは、まさにその部分をカバーしてくれる、ユーザーに優しいツールになっているのが最大のポイントと言える。

たとえば「コンディション」では、各種データの毎日の推移を表示するだけでなく、データから判定されたその日の体調に関わる情報をわかりやすい表現で示してくれる。HRVのゆらぎのバランスや、体力の回復具合、睡眠の状態、アクティビティ(運動)の負荷など、それぞれを「最適・良好・注意」といったワードと色分けされたゲージで教えてくれる。数値の意味を細かく理解していなくても、自分の身体がどういう状態なのかを簡単に把握できるのだ。

「コンディション」画面では体調に関わる情報が得られる
問題のない項目は「最適」や「良好」、気を付けるべき項目は赤く「注意」と表示される

「睡眠」のカテゴリーも同様に、睡眠のトータル時間はもとより、レム睡眠や深い睡眠の時間、それらを総合した安眠度、睡眠のタイミング(の良さ)を「最適・良好・注意」のワードおよび指数などで表す。注意すべき状態の項目は赤く表示され、睡眠の質がどうだったのかをひと目で把握できるし、各項目をタップすれば詳しい解説も読めるので、その数値や判定内容をもとにどう行動すればいいのか、という理解も進むだろう。

「睡眠」画面では睡眠中の状態変化などを確認可能
詳しく知りたい項目をタップすると解説が表示される
就寝時間が近づくとプッシュ通知してくれたりも

「アクティビティ」については後述するが、これら3つのカテゴリーのデータから導き出された評価点となる「スコア」は、アプリのホーム画面でも確認できる。状態が良いほど高いスコアで表され、それに付随してどう行動すべきかのアドバイスも得られるので、とりあえずホーム画面だけ見て自分の体調に問題がなさそうかチェックする、というお手軽な使い方もできる。

ホーム画面では各カテゴリーにおけるスコアや、それに応じたアドバイスを表示
定期的にレポートとしてまとめられ、アドバイスしてくれる
要素ごとの推移をチェックすることも可能

日常の移動、アクティビティを自動検知してくれる

Oura Ringはあくまでも健康状態を確かめるのにフォーカスしたデバイスだが、簡易的ながらワークアウトなどの「アクティビティ」を記録する機能もある。ここで面白いのは、徒歩移動やランニング、サイクリングなどをしたときに、自動でそれを検知する機能があること。通勤時の移動はもちろん、日課にしている運動なんかも勝手に記録してくれるのだ。

「アクティビティ」画面では日々のカロリー消費や運動強度などがわかる

すべての移動や運動を常に完璧に認識してくれる、というほどの正確さではないけれど、たとえば移動の開始・終了時間、距離、消費カロリーや運動強度といったようなデータが自動記録され、追加の設定をすればスマートフォンの位置情報をもとにした移動経路も地図にプロット表示する。Oura Ringを使い始めた初日、日課の室内サイクリング後にアプリを開くと、正しく「サイクリング」として自動記録されていたのにはかなり驚いた。

アクティビティを自動で検知すると、アプリ上に候補として出現する
検知された中身を「確認」することでアクティビティとして登録される
(室内)サイクリングとして自動検知されたアクティビティ
「Ouraの位置情報機能」をオンにすると……
アクティビティの詳細情報に、移動経路をプロットした地図も追加される

ただし、室内ワークアウトのようにはっきりとした移動が伴わないアクティビティが自動で正しく検知されることはあまり多くない。なので、検知されなかったアクティビティがあるときは手動で後から追加することになる。検知内容に誤りがあるときも、手動でアクティビティの種類や時間、運動強度などを修正できるようになっている。

また、明示的にワークアウトとして認識させたいときは、アプリを手動操作して記録を始めることも可能だ。この方法では、詳細な心拍数の推移や、より細かい時間単位での運動強度が記録されるという利点もある。できるだけ詳しいデータを残したいときは、少し面倒ではあるけれど、手動操作するのがおすすめだ。

ホーム画面で「今日」のタブを選択した状態で、画面右下の「+」ボタンから「ワークアウトの心拍数を記録」をタップ
アクティビティの種類を選択
「記録」ボタンをタップすれば計測が開始する
心拍数の推移とともに、運動強度がより細かく記録されていることがわかる

ちなみに屋外ランニングではスマートフォンを携帯したくない、という人もいるかもしれない。この場合は、スタート前にアプリで記録を始め、その後はスマートフォンを自宅に置いたまま走る形でも問題ない。ランニング中のデータはOura Ring内に蓄積されるため、走り終えて自宅に戻ってからアプリ側で記録を終了すれば、きちんとアプリにデータが反映される(スマートフォンを携帯していないと移動経路がプロットされないところだけ注意)。

1カ月間使ってみてわかったメリットとデメリット

そんなこんなで1カ月間使ってみたわけだけれど、健康やアクティビティのトラッキングデバイスとしては、大きなメリットもあれば、万能ではないと感じるところもある、というのが正直なところだ。

指輪型のOura Ringを初めて装着したときには、「このサイズにセンサーやバッテリーが入る時代になったか~」という感慨が押し寄せてきた。が、それでも一般的な指輪と比べればやはり3~4回りは大きい。指に大きなアクセサリーを身に付ける習慣がない筆者のような人には不安になりそうなサイズだ。

普通の指輪と比べればやはり大きく感じる

実際、たしかに最初の2、3日は違和感があった。けれど、その後はほとんど気にならなくなった。キッチンで料理や洗い物をするとき、洗顔するときなんかには意識することがあるものの、それも2週間もすれば慣れた。Oura Ringが手に持つものなどにぶつからないよう、自然と振る舞えるようになる(ぶつかったとしても戸惑うようなことはなくなる)。

ただ、スマートウォッチなどの腕時計型の活動量と比べたとき、日中の普段の生活における「気にならなさ」という意味では、どちらかというとスマートウォッチの方にまだ軍配が上がるだろう。Oura Ringはどうしても自分の視界に入りやすいし、いくら慣れても手で物を持ったりするときに「コツン」とぶつかって人差し指を浮かす、みたいな行動をとることになってしまうからだ。

とはいえ、睡眠トラッカーとして考えたときには、圧倒的にOura Ringが楽。スマートウォッチをベッドに入ってまで使い続けるのは煩わしいと感じる人は多いはずだ。どうしても圧迫感があるので外したくなったり、バンドを緩めたくなったりするもの。でもOura Ringなら通常の指輪と変わらない装着感で、ストレスを感じにくく、より正確にデータ計測されそうにも思える。

慣れた後でも注意したいのはアクティビティ時だ。充電をする際には指から外すことになるので、苦労せずに脱着できるようなサイズを最初に選んでおくわけだが、そうすると、場合によっては指から勝手に外れてしまうくらいの緩さになりかねない。たとえば寒く乾燥した場所に長くいると、どうしても外れやすくなる。屋外でのアクティビティ中に不意に外れてしまえば紛失する恐れもあるだろう。

特に外れやすい気がする冬場のランニングでは、手袋をしておくといいかも

なので、冬場のランニングなど外れやすいタイミングでは手袋をしておくと安心だ。また、チタンという頑丈な素材でできているとはいえ、精密機器が内蔵されていることや傷つくことを考えると、Oura Ringに負荷がかかりそうな器具を用いた筋トレなどをするときは外しておいたほうが無難(製品の注意事項にも記載されている)。

一方で、スマートウォッチなどの使用が禁止されているような屋内プールでも、指輪であるOura Ringなら問題なく使えるというメリットもある(運用ルールは施設次第だが)。スイミング時の活動量を計測したい人には特に便利なデバイスとも言えそうだ。

ところで、バッテリーがどれくらいもつかは、24時間計測し続けるこういった活動量計においては重要なポイントだろう。頻繁に充電が必要になってしまうようだと、その間は計測できないためにデータが虫食いになってしまい、活動量計としての役割を十分に果たせないからだ。

Oura Ringの場合、アクティビティの計測回数やアプリとの(手動)同期をどれくらいの頻度で行なうか、というのも関係してきそうだが、筆者の使い方では6日間にはギリギリ届かず、5日間は余裕でもつ、といった感じ。これほどバッテリーがもつのであれば不満はない。0%近くからの満充電時間は1時間半くらい、という点も頭に入れつつ運用したいところ。

付属の専用充電器とケーブル
充電器の突起にはめるだけで充電が始まる

ただし、バッテリーが切れる直前まで使い続けるのはおすすめしない。なぜなら、バッテリー残量が少なくなってくると一部の計測が自動でオフになることがあるからだ。ある日、就寝前に残量が15%ほどあったため、一晩くらいなら大丈夫だろうと思い装着したまま眠ったら、翌朝、睡眠データが全く記録されていなかった。バッテリーが減ってくると、アプリから「寝る前に充電するのを忘れずに」といったプッシュ通知が届くので、そのタイミングで早めに充電しておいた方が安全だろう。

充電を催促する通知が表示されたときは、早めに充電した方が良さげ

スマートウォッチにはない利点はある。サブスク料金をどう捉えるか

活動量計にスマートウォッチを使う場合、(一般的な腕時計に比べれば)数少ないメーカー・ブランドのなかから選ばざるを得ない、というのがネックでもあった。腕時計はスマートウォッチではない自分の好きなブランドのものを使いたい、でも活動量計の機能はほしい……。そんな人に、指輪型のOura Ringは合理的な選択肢ではないかと思う(同時に2本の腕時計をしても気にならない、という人は別として)。

が、最初の1年間は特典でサブスク料金はかからないにしろ、2年目以降も継続利用するには追加の料金(月額約1,000円)が必要になってしまうのは悩ましいところかもしれない。スマートウォッチであれば、Oura Ringほどのきめ細かなアドバイスはないにしろ、同等の計測機能をもちながらサービス料金が不要なものもある。「本格的な活動量計を使いながらも好きな腕時計を身に付けられる」、もしくは「腕時計を身に付けなくていい」、「睡眠時も邪魔になりにくい」といった利点が、料金と見合うか思えるかどうかが決め手になりそうだ。

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。