レビュー

新MacBook Airレビュー。すべてが変わったM2搭載「新世代Air」

新MacBook Air。色は「ミッドナイト」

アップルが7月15日に発売する新しい「MacBook Air」のレビューをお届けする。

新MacBook Airはデザインもプロセッサーも刷新し、2008年の初代モデル登場以来、最も大きな変化を遂げたモデルとなっている。

6月24日に発売されている「MacBook Pro 13インチモデル」(M2搭載版)、2021年発売の「MacBook Pro 14インチモデル」(M1 Pro搭載版)、2020年発売の「MacBook Pro 13インチモデル」(M1搭載版)と比較しながら、その性能や機能を確認していきたい。

M1/M1 Pro/M2のモデルを並べてテスト

新MacBook AirはM2搭載で、4つのカラーバリエーションを持つ。M2については、CPUなどは同じであるものの、GPUコアが8つのモデルと10のモデルがある。

今回テストしたのは、以下のモデル。

・M2(CPU8コア、GPU10コア)
・メインメモリー16GB
・ストレージ1TB
・カラーはミッドナイト

店頭販売モデルではなく、若干のカスタマイズが行なわれたものだ。

筆者の手元には「13インチ MacBook Pro(2020年モデル、M1搭載)」「14インチ MacBook Pro(2021年モデル、M1 Pro搭載)」があり、先日まで「13インチ MacBook Pro(2022年モデル、M2搭載)」の貸し出しを受けていた。返却期間の関係もあり手元にはないのだが、写真とベンチマークテストの値はあるし、デザインはほぼ2020年モデルと同じなので、参考として考えていただくには十分な情報が手元にある。

M2搭載の13インチMacBook Pro。カラーはシルバー

これはたまたまなのだが、手元にある機材も、貸し出しを受けた機材も、メモリーは全て「16GB」であり、この点でも公平なテストする上ではプラスだ。

パッケージを開封。同梱ACアダプターは「2口」のものも

さて、まずはパッケージを開けてみよう。

写真などは変わっているが、箱のサイズなどは、これまでのMacBook Airと変わらない。開けてみると、内容物はいつも通りシンプルだ。

パッケージは写真こそ変わったが、いつもと同じような内容

紙のカバーに包まれた本体と、ちょっとした説明書き、そして、電源用のケーブルとACアダプターが付属する。

パッケージの内容物。ケーブルやACアダプターが変更されているが、入っているもの自体は同じ
MacBook Airのカバーは紙に。アップルマークの部分は保護するためか、仕上げが違う

M2版MacBook Airは、電源専用の「MagSafe 3」を搭載しているので、電源ケーブルも専用のものが付属する。色まで本体にあわせているあたり、芸が細かい。

新しいケーブルとACアダプター。ケーブルはMagSafe3対応で、色は本体に合わせたもの。付属ACアダプターは、2口のデュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ」

今回試用したモデルには、新しい「デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ」が付属していた。これは新MacBook Airとともに発表されたもので、2つのUSB-Cポートを持つのが特徴である。

「でも、ケーブルのUSB-C側は白で中途半端」との声もあるが、これはどうやら、ACアダプターに刺した時の見栄えを考え、あえて白にしているようである。

USB-C側は白なのだが、これはACアダプターに刺した時の見栄えを重視したものらしい

Macに接続して出力を確認したところ、1つのコネクターにだけつないだ場合には35W、それぞれのコネクターに1つずつの機器をつないだ場合には、片方17Wずつの出力になった。出力対象はiPhoneでもAndroidでも変わりない。切り替えも自動で行なわれ、どちらかの出力が高い、というわけでもない。かなりシンプルでわかりやすいACアダプターだ。

このアダプターは、店頭モデルだとGPUコアが10ある上位モデルに付属するほか、アップルからの直販でカスタマイズした場合に選べる。なお、単体で購入する場合には「7,500円」となる。

コンパクトで良い製品だが、MacBook Airを高速充電する場合には使えない。その場合には、アップルの純正ACアダプターの場合、67Wもしくは96Wのものが必要になる。

ミッドナイトは好感触、ただし「指のあと」はつきやすい

ではMacBook Airの実機をチェックしてみよう。

今回テストしているのは「ミッドナイト」。黒に見えるくらい濃い青で、かなり雰囲気がいい。キーボードも黒、タッチパッドも黒なので、開いた時の色合いもマッチしている。

ミッドナイトはキーボードやタッチパッドまで色の統一感があり、かなり気に入った

過去にも黒いMacBookはあった。今も「スペースグレイ」モデルはかなり黒に近い。だが、ミッドナイトはそれらとも違う、「黒に近いが黒くない」色合いで、Macとしては初めての感触だ。

個人的にはかなり好みのデザインだし、好ましく思う人は多そうだ。ただ、色合いとの関係からか、指の脂などの跡が目立ちやすい。拭けばすぐに消えるものだが、めんどくさいと思うなら、別の色を選んだほうがいいだろう。

指の脂の跡が残りやすく、ちょっと気になる。簡単に拭き取れるが

ちなみに、先月の発表の際、アメリカのハンズオンイベントに参加しているので、そこで撮影した「シルバー」「スターライト」「スペースグレイ」の写真も掲載しておく。

シルバー
スターライト
スペースグレイ

フラットな「最新のMac」。デザインは14インチMacBook Proに近い

MacBookシリーズのデザインは、2008年にMacBook AirとMacBook Proが採用した「ユニボディ」デザインを長く継承してきた。キーボードの変更やカラバリの追加はあったものの、「角がゆるやかに絞られて、中央が厚くなっている」形状が続いてきた。

左がMacBook Pro(2020年モデル)、右が新MacBook Air。わかりやすくするために上下逆に撮影しているが、カーブの違いがわかるだろうか
14インチMacBook Pro(左)と、新MacBook Air。厚みは違うがデザインテイストは似ている
13インチMacBook Pro(2020年モデル、左)と新MacBook Airを並べた。周辺部の仕上げの違いがよくわかる

だが、2021年のiMacと14インチ/16インチMacBook Proからは、丸みを減らしたスクエアな形状になった。今回のMacBook Airも、デザインテイストは14インチMacBook Proに近い。今後しばらく、アップルはこの形態を続けるのだろう。

参考までに、14インチMacBook Pro(左)と、13インチMacBook Pro(右、M2搭載版)。M2搭載だが、13インチMacBook Proは「2020年までのデザイン」だ

フラットな形状になったので、単純に並べると「厚くなった」ように思うかもしれない。だが、数値上は、これまでのMacBook AirやMacBook Proより、若干だが薄くなっている(ちなみに、最薄部はともかく、最厚部ではこれまでも、デザインの関係から、MacBook AirよりProのほうが薄かった)。

13インチMacBook Pro(左)と新MacBook Airでは、厚みが少しだけ新モデルの方が薄い

ただ、薄さも軽さも数値的には小さな変化で、そこまで違うとは感じられないだろう。フラットな形状になったことによる感触の変化の方が大きい。

サイズが変わっていないので、ディスプレイも極端に大きくなったわけではない。13.3インチから13.6インチ、という変化なのだが、「メニューバーの分画面が縦に伸びて、ほんの少し広く使えるようになった」というのが正しい。ドット数にすると64ドットだけだ。

13インチMacBook Pro(左)と新MacBook Air。メニューバーの分だけ縦が伸びている、というのがわかる

その結果として、カメラ部には「ノッチ」ができた。これは画面が欠けたというより、「ノッチの部分だけメニューが表示されない」という感じである。この辺は、14/16インチMacBook Proと同じだ。

カメラは従来の720p対応から1080p対応になり、解像度も暗所性能も上がった。スマホのカメラほど画質が良いわけではないが、PC内蔵のウェブカメラとしては画質が良い方だと感じる。性能的には、14インチMacBook Proとほぼ同じだと感じる。

なお、14インチMacBook Proは厚みもディスプレイサイズも大きく、重量的にも「ワンランク上」というところだ。

14インチMacBook Pro(左)と新MacBook Air。14インチはやはり一回り大きい。

キーボードは、14インチMacBook Proと同じものになった。タイプ感も同様である。

14インチMacBook Pro(左)と新MacBook Air。キーボードは全く同じだ。
参考までに、14インチMacBook Pro(左)と13インチMacBook Pro。14インチからデザインが変わり、TouchBarもなくなった
さらに参考に、13インチMacBook Proの2020年モデル(左)と2022年・M2搭載モデル。デザインは全く同じで、キーボードも同じ

インターフェイスは従来のMacBook Airと同じように「USB-Cが2つにヘッドホン端子」と変わっていない。だが、電源専用の「MagSafe 3」が搭載されたため、充電時に使えるUSB-C端子が空く。だから実質的に、インターフェイスが増えたことになる。

新MacBook Airの左側。MagSafe 3が増えている。
右側は全く同じで、ヘッドホン端子のみ

M1からM2への性能向上は「GPUとMedia Engine」に

では、肝心の性能を確認しておこう。

冒頭で述べたように、今回テストしているのはGPUを10コア搭載したM2。13インチ MacBook ProのM2モデルが採用しているものと同じである。

MacBook AirにはGPUが8コアのものもあるが、CPU性能はどれも同じ。今回のテスト結果のうち、GPUが絡むものに関して0.8をかけてあげれば、大体のイメージが掴めると思う。

まずは、Macのベンチマークテストの定番である「GeekBench 5」から。

GeekBench 5のCPUテスト。赤枠内がM2搭載モデル

シングルコアの性能は、世代が上がったためか、M2の方が高い。しかしトータル性能ではM1 Proを搭載した14インチMacBook Proが優っている。この後のテストもそうだが、M2になったとはいえ、あくまで「普及型Mac向けのAppleシリコン」として作られているので、「プロ製品向けのAppleシリコン」であるM1 ProやMax、Ultimateにはかなわない。

実践的なCPUを使ったCGベンチマークである「Cinebench R23」を見ると、M1とM2の差は縮まる。CPUの設計は改善しているものの、CPU自体の性能が劇的に上がったわけではない、ということが見えてくる。

Cinebench R23でのベンチマーク。主にCPU性能に依存している

ではGPUはどうだろう?

「GeekBench 5」のGPUテストでは、CPUよりも顕著な性能アップが見える。ただ、計算して見ると、8コアのM1(MacBook Pro)と8コアのM2とでは、少ししか性能差がない。すなわち、「10コアのM2」だから性能向上が顕著なのであり、8コアのモデルだと差は小さいだろう……、と予測できる。

GeekBench 5のGPUテスト。10コアになっているのでその分高速化している

「3D Mark Wildlife Extreme」のテスト結果も、やはり10コアである分性能向上が大きい。M1 ProはGPUが16コアなのでその分速い。

3D Mark Wildlife Extremeの値。傾向はGeekBench 5の場合と同じだ

この辺りを考えると、M1とM2の差は「GPUコアの増加」が最も効果的で、それに各コアの効率アップが付け加わって全体の性能が上がっている……と見て良さそうだ。M1からM2への性能アップはM1からM1 Proほどは劇的ではない。

ただ、ビデオ関係の処理をすると話が変わってくる。

iMovieを使い、4K ProRes形式の動画(7分強)を書き出す時間を計測すると、M1がかなり遅く、M2は大幅な性能アップを果たしていることがわかる。M1 Proに比べると遅いのだが、ここまで差があるのは大きい。M1 Pro/Max/Ultimateには「Media Engine」という動画圧縮を補助するコアが組み込まれた。M2にもMedia Engineがあるので、M1との間で差が生まれたのだ。

iMovieを使い、4K ProRes形式の動画(7分強)を書き出す時間を計測。短い方が高性能。M1だけが遅いのがよくわかる

結論として、M1からM2へ買い替えるのは「ビデオ編集をする人」以外にはおすすめしにくいが、まだ新しくMacを買う人やこれからAppleシリコンへ移行する人には、M2を搭載したMacBook Airは確実におすすめできる、ということになるだろうか。

同じM2を搭載したMacBook AirとMacBook Proの場合、スピードはほぼ同じ。ベンチマーク上多少の差はあるが、これはテスト上の誤差のようなものだ。M1の時も、MacBook AirとMacBook Proの速度差はほとんどなく、ファンのあるMacBook Proの方が「高い負荷をずっとかけ続ける作業では有利」というところだった。

今回の場合デザインも変わっているので、多くの場合にはMacBook Airが選ばれるだろう。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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