レビュー

空中に浮かぶ大画面が楽しい。スマートグラス「Nreal Air」

スマートグラス「Nreal Air」

KDDIとNTTドコモが販売を開始したスマートグラス「Nreal Air」。久々に物欲が働いて購入しました。

気になった理由の1つはその見た目。これまでスマートグラスと呼ばれる眼鏡型のディスプレイは本体サイズが大きく、いかにも「ガジェットを装着している」感が強かったのですが、Nreal Airはサングラスに近い見た目で、これまでのスマートグラスと比べて物々しさが低めです。

金額も39,800円と4万円を切る価格。もちろん安いというほど気軽な価格ではないのですが、新製品を試すのが業務の一環でもあるライターとしては手を出せないこともない絶妙な価格でした。

製品はKDDIまたはNTTドコモの販売店とオンラインショップで購入できます。筆者は仮予約ができるとのことで、販売店とオンラインの両方で予約しましたが、オンラインの発送が遅かったため、NTTドコモの販売店で予約して購入しました。

初期設定は対応端末が必須

製品のセットアップで最初に躓いたのが対応端末。あまり条件を調べずに購入した自分が悪いのですが、Nreal Airは動作確認端末と組み合わせないと初期設定することができません。

サイトに対応端末は明記されているのですが、対応端末でないと動作しないとまでは書かれておらず、さらに動作確認済みであっても「すべての機能を保証するものではない」と書かれているので油断していました。購入を検討している人は、端末の対応状況を忘れずにチェックしましょう。

Nreal Air対応スマホリスト

初期設定自体はとてもシンプルで、付属のUSB Type-CケーブルでスマートフォンとNreal Airを接続し、対応アプリをインストールするだけ。また、初期設定後は、USB Type-C経由で映像を出力できる「Display Port(Alternate mode)」に対応した端末であれば動作確認機種以外でもNreal Airを利用できます。筆者が愛用している2画面スマホのSurface Duo 2のほか、後述しますが一部機能はWindows PCでもNreal Airを利用できました。

スマートフォンと接続したところ
耳にかける部分の片側にUSB Type-Cポート
付属のUSB Type-Cケーブル

ケーブルでスマホとつなぐだけの簡単接続

製品の構造は、サングラスの内側に斜めになった透明のグラスがあり、グラスの上部にあるディスプレイの映像が透明のグラスに反射して見えるという仕組み。

映像がオフの時は向こうが見えるサングラスとしても利用でき、映像がオンになった時も映像の背景が透けて見えます。利用イメージとしては空中にプロジェクターの映像が浮かんでいるような感覚です。

正面から見たところ。サングラスの向こうに透明なグラスが見える
内側からみたところ。透明のグラスの奥にディスプレイが搭載されている

使い方もシンプルで、初期設定と同様にスマートフォンとUSB Type-Cケーブルで接続し、専用アプリを起動するだけ。起動時にはユーザー登録が必要と表示されますが、実際にはユーザー登録せずほとんどの機能が利用できます。

空中に大画面が浮かぶ不思議な体験

準備を済ませて装着すると、サングラスで暗くなった視界の前に大画面が表示されます。まるで空中に大画面ディスプレイが浮かんでいるような感覚は未来感あって楽しい気分。耳の部分にはスピーカーが搭載されているので、装着するだけで映像と音を楽しめるという手軽さも魅力です。

映像は非常に綺麗で明るく、明るい部屋で見ていても映像にしっかり集中できます。自分の目の前に映像が広がるので、寝っ転がって映画を見たりするのにも便利。重さも約79gと非常に軽く、長時間付けていてもあまり疲れは感じません。

ただし、本体スピーカーの音は外に漏れてしまうため、公共交通機関などで使うのには不向き。また、ディスプレイに投影している内容は外側からも見えてしまう点も注意が必要です。

本体ボタンはディスプレイのオンオフと輝度調整のみで、電源ボタンや音量ボタンなども搭載されていません。スマートフォンと接続してアプリを起動し、音はスマートフォン側で操作、というデバイスとしてのシンプルさはNreal Airの魅力の1つでしょう。

本体操作はディスプレイオンオフと輝度調整のみ

なお、Nreal Airは本体にバッテリーを搭載しておらず、利用時はスマートフォンのバッテリーを消費することになるため、スマホを充電しながらは利用できません。スマホのバッテリーが残り少ないと、映画を見ている間にバッテリーが切れてしまう、ということにもなりかねないため、バッテリーをしっかり充電してから使うようにしましょう。

独自アプリは機能に難あり。スマホの画面表示が便利

Nreal Airで利用できる機能は「MRモード」と「Air Castingモード」の2つです。

MRモード
Air Castingモード

「Air Casting」はスマートフォンの画面をそのまま投影するだけというシンプルな機能で、スマートフォンで使えるアプリはほぼ利用できます。一方で画面の大きさは固定されているほか、画面が視点に合わせて追従する「0DoF」しか利用できません。

Air Castingモードで、スマホの動画を見ているところ

一方のMRモードは画面の大きさを自由に変更できるほか、視点を動かしても画面は常に固定されている「3DoF」モードを利用できます。一方、利用できるコンテンツはスマートフォンのブラウザベースのため、使用できるアプリがかなり限られます。

MRモードの画面。画面に表示される線をスマートフォンを動かして操作する

MRモードでは韓国アーティストのYouTube動画がプリセットされていたり、サイクリングを擬似的に体験できるコンテンツが用意されてはいるものの、YouTubeはブラウザベースで動作が若干不安定なほか、Googleアカウントでログインできないなど、コンテンツを楽しむのにいくつか制約があります。

サイクリングコンテンツ。基本的にはただ動画が流れるだけ

3DoFや画面サイズを変更できるMRモードは、Nreal Airの真価を発揮する面白い機能なのですが、肝心の中身がブラウザベースのため実用度は低め。スマートフォンのディスプレイを自分だけの大画面で楽しむAir Castingモードのほうが実用度は高いと感じました。

なお、Air CastingモードはUSB接続した画面を投影するだけの機能なため、前述の通りパソコンなどの画面も映し出すことができます。スマートフォンの場合、USB接続する関係上充電しながらの利用が難しく、利用時間がスマートフォンのバッテリーに準じるのですが、別途電源が確保できるパソコンなら、時間を気にせずNreal Airを楽しむことができます。

Air Castingモードはパソコンからディスプレイとして認識されるため、パソコンのサブディスプレイとして活用することも可能。ただし、Air Castingモードは画面が視点に追従して動く0DoFモードのみのため、ほんの少し頭を動かしただけでも画面が動いてしまい、人によっては画面酔いが発生してしまうかもしれません。

また、Air Catingモードは画面を左半分にして表示するサイドスクリーンというモードも用意されています。画面が目の前ではなく視界の横に表示されるため、何か他の作業をしながら動画を楽しむといった「ながら作業」に向いたモードです。画面と実際の視界の両方が見えるARを楽しむにはこのモードが一番向いているかもしれません。

付属シェードも。オプション活用で充実した映像体験

Nreal Airのオプションや利用スタイルについてもう少し紹介します。

気になる人も多いと思われる眼鏡との併用ですが、筆者の場合は眼鏡の上にNreal Airを装着した状態で違和感なく映像を楽しめました。ただ、装着の状態が悪いとセンサーが自動で働いて画面が自動でオフになってしまうこともありました。また、眼鏡の形状によってはうまく装着できない、眼鏡が破損してしまうという場合もあるかもしれません。

眼鏡と組み合わせる正攻法の使い方は、付属のアダプターを使って度入りの専用レンズを作ること。Nreal Air公認の眼鏡店「JUN GINZA」なら度入りのレンズを作ることができます。値段は7,480円となかなかのお値段なので、まずはNreal Airを装着してみて気に入ってから購入を検討するといいでしょう。

Nreal AirはARグラスという位置付けのため、映像の周りや奥の背景も視界に入り込んでしまい、映像以外の部分が気になってしまうこともあります。そのときはオプションの「ライトシールド」というシェードを付けることで映像以外の部分を遮断して映像に集中できます。ARグラスという特徴が台無しになってしまうようなオプションですが、映像をしっかり楽しみたいという人には嬉しいオプションでしょう。

付属のライトシールド
装着すると背景が真っ黒になり製造に集中できる
付属のケース
本体やケーブル、ライトシールドなど一式を収納できる

着けるだけで大画面を堪能できる魅力

見た目に惹かれて購入したNreal Airでしたが、使いやすさ重視でシンプルな機能、装着していても疲れない本体の軽さ、そして手軽にもかかわらず臨場感ある映像と音が非常に魅力的な製品です。自分だけで楽しめるプライベート映画館としてとても楽しい製品です。

現在は人気のためか製品の在庫がない状態が続いているようですが、スマートフォンのコンテンツをもっと大画面で楽しみたい、という人はお勧めの製品です。

甲斐祐樹

Impress Watch記者から現在はフリーライターに。Watch時代にネットワーク関連を担当していたこともあり、動画配信サービスやスマートスピーカーなどが興味分野。個人ブログは「カイ士伝