レビュー

子供の見守りに必携のGPSトラッカー。どこかなGPSとGPS BoTを試す

「どこかなGPS」と「GPS BoT」の2種のGPSトラッカーを試してみた

新型コロナウイルスの影響で学校が休校になっていたところも、6月からは徐々に授業を再開し始めていることと思う。2人の子をもつ筆者としては、家事や仕事のかたわら子供を世話したり、勉強の面倒を見たりする生活からようやく解放されるのをありがたく思う。しかしその一方で、上の子は新1年生ということもあって、道に迷わず学校にたどり着けているのか、学校が終わった後に寄り道していたりしないか、心配になる気持ちもある。

そこで筆者が子供の4月の小学校入学タイミングに合わせて入手していたのが、GPSトラッカー。携帯している子供の位置情報を親のスマートフォンで逐一知ることができるデバイスだ。最近では、小型で持ち運びの負担が少なく、通信機能を搭載しながら比較的低料金で利用できるGPSトラッカーも増えてきた。

そのなかでも人気が高いと思われる2つの製品、+Styleの「どこかなGPS」と、ビーサイズというメーカーが展開する「GPS BoT」の2機種を試してみた。いずれも子供の見守りを主眼にしたGPSトラッカーだ。本当なら4月までに試すはずだったのだが、学校が休校になり、外出もままならなかったため、このタイミングでのレビューとなった。どんな風に使えるのか、2つを比較しながら紹介してみたい。

2年間13,200円ぽっきりの「どこかなGPS」

+Styleの「どこかなGPS」

どこかなGPSでポイントとなるのは、機能の多さと、トータルコストの安さと言える。先にコストの話をすると、通信費を含めた2年間にかかる費用は、最初の購入費用である13,200円のみ。3年目以降も継続して使用したい場合は月額440円で契約することになる。短期間だけ使いたいユーザーにはあまり向いていないが、子供が就学中の数年間ずっと使い続けるなら、結果的には安上がりになるだろう。

充電端子はマイクロUSB
ストラップホールを備える

機能としては、デバイスの現在位置と過去の位置を専用アプリの地図上でチェックできる、というのが基本的なところ。設定により3分・5分・10分・30分の間隔で現在位置を取得し、ソフトバンクの4G LTE(LTE-M)回線を通じてクラウドに情報送信する。当然、位置取得の間隔が長いほど電池もちは良くなり、目安としては5分間隔で4日間稼働するとしている。

どこかなGPSの専用アプリの画面。地図上に表示したアイコンで現在の位置がわかる
過去の位置の履歴がプロットされ、移動経路を確認できる
更新間隔は3・5・10・30分のいずれかに設定可能

地図上で指定した範囲を出入りしたときや、指定のWi-Fiネットワークの圏内に入ったときにメールで通知する機能を備えているほか、本体のボタンを押したときにメール通知する「いまここ連絡」という機能もある。何かトラブルなどがあって、子供が自ら気付いてほしいと思ったときに能動的に親に知らせることができるわけだ。

多彩な通知機能の設定
特定のWi-Fiネットワーク圏内に入ったときにメール「ただいま通知」
指定エリアの出入りのタイミングでメール通知「ついたよ通知」
エリアの大きさは100m~1kmの範囲で調整できる
本体中央のボタンを押すとメール通知する「いまここ連絡」

また、専用アプリで操作したときに音を鳴らしたり、スマートフォンから離れたときにプッシュ通知することも可能。どこかなGPSの置き場所を探すのに使えるし、子供が迷子になったときの助けにもなる。あるいは、どこかなGPSを大事なアイテムに取り付けておけば、置き忘れたときの保険にもなるだろう。

さらには、1つのどこかなGPSの位置を他の人のスマートフォンでも知ることができる共有機能も用意している。自分たち両親だけでなく祖父母や信頼できる友人に見守ってもらいたいときにも便利なGPSトラッカーだ。

スマートフォンと離れたときにプッシュ通知してくれる「はなれたアラート」

行動範囲をAIで判断し防犯に活かせる「GPS BoT」

ビーサイズの「GPS BoT」

GPS BoTが初めてリリースされたのは2017年。現在販売しているのは初代モデルに改善を施した第2世代モデルだ。2020年6月末日までは、小・中学生の子供がいる家庭に初代モデルを無償提供するキャンペーンが実施中で、気軽に試しやすい(送料、月額料金は別途)。けれども、性能面ではやはり新しい製品の方がメリットが多いので、ここでは第2世代を中心に解説する。

充電端子はUSB Type-C
ストラップホールもある

専用アプリを使い、デバイスの現在位置と過去の位置を調べることができるのは「どこかなGPS」と同じだ。最短1~2分間隔(頻度優先モード)、もしくは最長3分間隔(バッテリー優先モード)で現在位置を取得し、モバイルネットワーク(LTE-M)を通じてクラウドに情報送信してくれる。

GPS BoTの専用アプリの画面
青い円で移動履歴をプロットする
更新頻度は2段階

GPS BoTの一番の特徴は、AIを活用することによる「行動範囲」の自動判断機能だ。1週間から1カ月ほどかけてユーザーの使用状況(子供の移動など)を分析し、行動範囲が確定した後は、その範囲から外れた場所に移動したときにスマートフォンにプッシュ通知を送る仕組みになっている。

使用状況を分析して行動範囲を判断。そのエリアから出たときに通知するよう設定でき
特定されたエリアを広げて閾値に余裕をもたせることも可能

これにより、もし子供が普段の行動範囲から外れた場所に行ったとき、つまり寄り道していたり、何らかのトラブルに巻き込まれた可能性がありそうなときに、いち早く気付ける。しかもこの行動範囲は1つのエリアに限ったものではなく、分析が進むことで複数エリアを記憶できるようにもなる。たとえば自宅から学校周辺と、そこから少し離れたところにある塾や習い事の場所周辺なんかも普段の行動範囲として登録しておけるのだ。

あわせて、どこかなGPSと同様に、地図上で指定した場所(範囲)の出入りを知らせる「通知スポット」機能もあり、自宅や学校の到着・出発タイミングで通知を受け取ることができる。AIを使った機能と通知スポット機能の両方を組み合わせることで、安心感をより高められそうだ。

「通知スポット」の登録。地図上に円で範囲指定すると、そのエリアの出入りの際に通知してくれる

GPS BoTは、初期に購入費用5,280円(+送料356円)がかかり、契約後(アプリでデバイス登録した後)は528円が毎月かかるという料金体系になっている。「どこかなGPS」と同じ2年間の費用に換算すると17,952円(購入時の送料除く)で、トータルではGPS BoTの方が4,752円高くなる。ただ、いつでも手数料なしで契約を解除できるため、「これから数カ月、または1年間だけ使いたい」といったように短期の使用を考えているのであればリーズナブルな選択肢になるだろう。

GPS BoTの購入・利用料金

両機種の移動履歴の表示とその精度をチェックしてみる

GPSトラッカーを使う目的の1つは、いつ、どこを、どう移動したのか、その履歴を確認するというもの。どこかなGPSもGPS BoTも、プロットされた過去の移動履歴を1つ1つ追っていくことができる点では同じだが、どこかなGPSは当日を含め過去3日間分、GPS BoTは同8日間分と参照できる期間は大きく異なる。

通常の用途では当日の移動履歴を確認するのがほとんどだろうから、1週間以上前の履歴が必要になるときがあるかどうかは、いざという時になってみないとわからない。けれども、どこかなGPSの3日間分はやや心もとない感じはある。

どこかなGPSは、当日と過去2日間(計3日間)の移動履歴を参照可能
GPS BoTの過去の移動履歴は、スクリーンショット上では3日間分しか見えないが、当日と過去7日間分(計8日間)を残せる

こうしたデバイスで一番肝になる位置の正確さについては、それぞれ若干の誤差はあり、通常使用であれば大きな違いはなさそう。以下の画像は2機種を同時に携帯した状態でビル街を歩いたときの記録だが、歩いたルートに概ね沿ってはいるものの、ビルなどに電波が遮られたこともあってか、一部は立ち入っていない建物にプロットされていたりする。

どこかなGPSの移動履歴(ビル街)
どこかなGPSの移動履歴(ビル街、拡大)
GPS BoTの移動履歴(ビル街)
GPS BoTの移動履歴(ビル街、拡大)

しかし、以下の画像にある通り、高層ビルのない場所ではかなり正確に記録されているので、子供の移動経路がどのような環境にあるかが精度に影響しそうだ。どこかなGPSは最短でも約3分間隔での更新となり、同1~2分間隔のGPS BoTと比べるとややプロットが粗く見えるものの、「子供が今(または過去の特定の時間に)どこにいて、どう移動したか」を知るための見守り用途としては、どちらも十分な精度があると言える。

どこかなGPSの移動履歴(高層ビルのない住宅街)
GPS BoTの移動履歴(高層ビルのない住宅街)

GPSで位置特定が難しい地下鉄で移動したときのデータもとってみた。2機種とも衛星による位置取得の他に、Wi-FiやA-GPSなどによる位置推定にも対応しており、駅に設置されている基地局・アクセスポイントから情報を取得して、可能な限り位置がわかるようにしている。ここでは京王井の頭線明大前駅から渋谷に向かい、渋谷からは東京メトロ半蔵門線で九段下へ、そこから都営地下鉄新宿線で明大前駅方面に戻る、というルートで検証してみた。

地下鉄で移動したときのどこかなGPSの移動履歴
地下鉄で移動したときのGPS BoTの移動履歴

これを見ると、どこかなGPSはほぼルート通りきれいに移動履歴がプロットされている。駅間の移動中は情報が残らなかったり、少しずれた場所にプロットされたりしているところもあるが、この精度であれば電車で通う子供の見守りにも対応できそうだ。

GPS BoTの方は、渋谷駅で半蔵門線に乗り換えた後で、なぜか出発地点の明大前駅に近い場所にプロットされてしまい、その後新宿線に乗り換え、曙橋駅を通過するまで位置情報が取得できない状態が続いた。これに限らず、GPS BoTではこのように大幅に外れた場所にプロットされてしまう現象がまれに見られ、GPSが取得できない場所では(どこかなGPSと比較すると)やや動作が安定していない印象だ。

このように、両者ともにGPS取得時の誤差が多少あるとはいえ、子供がいつどこにいて、どこへ向かっているかは明確にわかることから、両者とも実用性の面では問題ないと感じる。むしろこれを見ると1~2分間隔の更新は少し細かすぎるので、GPS BoTはバッテリー持ち優先で3分間隔に設定しておいてもいいかもしれない。

その他の使い勝手としては、プッシュ通知ですぐに知らせてくれる機能がある分、子供の見守り用途に限って言えば、GPS BoTの方が便利に思える場面が多い。子供が学校に到着した(近づいた)とき、そこから出発して学童保育に到着したとき、さらに夕方になって自宅に到着したときに、逐次スマートフォンの画面に通知があるので安心感がある。

GPS BoTは、プッシュ通知ですぐに把握できる

対してどこかなGPSはプッシュ通知の機能は(「はなれたアラート」以外には)なく、登録したメールアドレス宛の通知になるため、確認にどうしてもタイムラグができやすい。もしタイムラグをできるだけなくしたいなら、少し手間ではあるけれど、該当の通知メールがあったときはメールアプリ側の機能でプッシュ通知されるように設定しておきたい。

どこかなGPSは、指定したエリアの出入りなどはメールでの通知になる

バッテリー持ちについてもかなり違いがある。どこかなGPSを3分間隔で更新する設定で使用したところでは、およそ2.5日間ほど動作した。屋内にあるか、屋外で移動しているかに関わらず、常にGPS電波(もしくはWi-Fiや基地局の情報など)を受信しようとしているようだ。スペック上は5分間隔の場合に4日間もつとなっているが、バッテリー(397mAh)のもちはそれほどいいとは言えないので、早めの充電を心がけたほうが良さそうだ。

一方、GPS BoTはバッテリー容量が大きく(1,400mAh)、1~2分間隔の更新でも1週間以上動作した。ただ、これは週の半分以上が屋内に置きっぱなし(子供の通学が1日おきだったため)なのも影響したかもしれない。GPS BoTの場合、一定時間以上移動を検出できない場合は移動履歴を残さない(情報取得しない)仕様になっていると思われるため、その分動作時間も長くなるようだ。いずれにしろ、毎週末にランドセルから回収して充電する、というようなルーチンで十分間に合うのではないだろうか。

大きさの比較。左がGPS BoT、右がどこかなGPS
厚み、縦横サイズともにGPS BoTがひと回り大きい。その分バッテリー容量も大きく、充電頻度を減らすことができる

通学時以外にも活躍する、家庭の必携アイテム

どちらの機種も子供の見守りに役立ってくれることは間違いなく、機能・性能を比較してもそれぞれに一長一短があって優劣つけがたい。

どこかなGPSは、バッテリー容量が少なく、充電の手間が増える点がネックではあるけれど、その分(GPS BoTとの差はわずかだが)コンパクトで、子供の負担を最小限にできる。子供が自らSOSを発信できる機能や、子供が親元を離れたタイミングで通知してくれる機能があり、しかも忘れ物・落とし物防止など子供の見守り以外の用途に使えるのもうれしい。少なくともこれから1年以上使い続けたい人には、2年間追加料金を支払わなくて済むどこかなGPSのメリットは大きい。

対してGPS BoTは、短期間だけ使いたい人にもおすすめできる製品だ。2年以上の長期間に渡って使う場合は最終的なコストがやや高くなるものの、バッテリー持ちの良さや行動範囲の自動認識機能、子供の行動を即座に把握できるプッシュ通知機能は魅力的。子供の見守りに特化している分、機能としては比較的シンプルで、わかりやすさを求める人にも向いているだろう。

どこかなGPSをランドセルに取り付けてみたところ。ストラップで取り付けてもいいが、子供がランドセルを手荒に扱うと考えると、ランドセルのポケットに入れておいた方が安全だ
GPS BoT

なお、こうしたGPSトラッカーはランドセルやバッグに装着して(もしくはその中に入れて)持ち運ぶのが基本で、ランドセル・バッグが置き去りになっている場合は子供の正確な居場所を知ることはできない。なので、持ち運び方によっては常に完全に見守れるわけではない、ということは頭に入れておく必要がある。

それでも、GPSトラッカーがあるのとないのとでは気持ちの上では大きく違うことも確か。毎日離れたところで仕事をしながら、子供が学校でいつも通り過ごしているか、迷わず自宅に帰ることができたかが心配なときも、通知やアプリで見れば一発で不安が解消する。おそらくほとんどが無事を確認するだけの作業になるだろう(そうあってほしい)が、もし何か子供の身によくないことが起こったとしても、それに対処するきっかけがいち早く得られるとわかっているだけでも心強いはずだ。

両機種とも、休日にどこかへ出かけたときの迷子防止に活用することもできる。通学時に限らず役立ってくれる機会が多くあることを考えると、GPSトラッカーは子供をもつ家庭にとって必携のアイテムと言ってもいいのではないだろうか。

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。