レビュー
カメラが拡げるスマートホームの可能性。「Google Nest Hub Max」
2019年12月5日 10:40
11月に発売されたスマートスピーカーの最新モデル「Google Nest Hub Max」。Maxという名前の通りシリーズ最大の画面サイズである10型ディスプレイを搭載したスマートディスプレイだが、初のカメラ搭載モデルという点も注目の端末だ。価格は28,050円(税込)。
すでにファーストインプレッション記事は紹介済みだが、本稿では導入から実際の使用感、カメラ搭載モデルならではの機能を中心にレビューする。
初期設定はカメラ周りの設定が追加
初期設定は今までのGoogle Home/Nestシリーズと基本的には変わらない。電源を入れるとアプリで設定するようガイダンスが流れ、画面の指示に従って設定を進めていくだけなのだが、大きな違いはカメラ関連の設定だ。
具体的にはユーザーごとに顔を認識する「Face Match」機能のための顔登録、チャット機能「Duo」でビデオ通話を使うための設定、カメラの映像を遠隔からモニタリングできる「ライブビュー」の利用有無を画面の指示に従って設定する。
使い勝手はNest Hubとほぼ同じ。ディスプレイが使いやすい
独自要素であるカメラ周り以外の機能は、すでに販売されているディスプレイ搭載モデル「Google Nest Hub」と大きくは変わらない。動画配信サービスのキャスト再生、天気予報やタイマーの画面表示など、ディスプレイ搭載モデルならではの機能が利用できる。
これらディスプレイ搭載モデルならではの機能については前モデルの「Google Nest Hub」レビューを参照して欲しい。
「Google Nest Hub」が凄くイイ。画面があるから音声操作が活きる
なお、画面サイズはNest Hubの7型に対してNest Hub Maxは10型と倍近い大きさだが、解像度で比べるとNest Hubの1,024×768ドットに対してNest Hub Maxは1,280×800ドットとさほど違いはなく、画素密度では、Nest Hubの183ppiに対してNest Hub Maxは151ppiと数値では下がっている。
そのためタイマーやレシピ表示などの画面レイアウトはNest HubもNest Hub Maxもほとんど変わらない。画面が大きいからタイマーの同時表示数が多くなる、ということはない。画面が大きいので視認性は高いのだが、Nest Hubと同じ画面がそのまま映し出されるため、やや間延びした印象も受ける。
Face Matchはプライバシーに注意。ジェスチャーは拡張に期待
Nest Hub Maxの特徴であるカメラを使った機能はいくつも用意されている。その1つが初期設定で行なったFace Matchだ。事前に登録しておいた顔をカメラが認識すると、その人に紐付いたスケジュールやリマインダー、勤務地への交通情報を自動で表示するという流れだ。
認識の精度は非常に高い。カメラの正面ではなく45度近い角度からでも本人を確認して予定やリマインダーを表示してくれる。
一方、認識精度が高く画面も大きく見やすいことで、家庭内のプライバシーという点では使いにくさもある。
例えばリビングにNest Hub Maxを設置している場合、家族が食事しているリビングに自分が入っていくと、家族全員が見ているところで自分のスケジュールがNest Hub Maxの大画面で自動的に表示される。本機能は家族に最適な情報を優先的に表示するためのもの。家族に見せたくないスケジュールやリマインダーがある人にはあまり相性が良くないかもしれない。スケジュールやリマインダーの使い方には注意が必要になる。
なお、Face Matchによる自動表示は、アプリの設定からオフにできる。家族にも見せたくない予定やリマインドがある場合は、この設定を行なうとよい。
カメラを使ったジェスチャー機能も搭載。音楽や動画再生中に手をかざすだけで再生や一時停止が可能なほか、アラームを止めることもできる。
来客や電話などで音楽を止めたい時など、声を出すよりも簡単に止められるのは嬉しい。現状はジェスチャーで操作できる機能が少ないが、今後音楽のスキップやレシピの操作などにも使えると面白そうだ。
遠隔から自宅の様子をモニタリングできる「ライブビュー」
Nest Hub Maxならではの機能がカメラを使ったコミュニケーション機能。カメラの映像をモニタリングできる「ライブビュー」、Duoを使ったビデオチャット機能が用意されている。
ライブビューはGoogle Homeアプリの「カメラ」機能から「カメラをオンにする」を選択すると、アプリからGoogle Home Maxのカメラ映像を確認できる。モニタリングを開始した瞬間は「Nest Camをモニタリングしています」とのメッセージが画面に表示されるほか、カメラ横のLEDが常時緑に点灯することで、映像をモニタリングしていることがわかるようになっている。
ライブビューしているアプリには映像と音が聞こえるが、Nest Hub Max側にはモニタリングされていること以外は伝わらない一方通行。アプリ側からマイクボタンを押すとボイスチャットが可能になり、リアルタイムに相手と話せるが、Nest Hub Maxには相手の映像は表示されない。また、アプリの設定から音声のオフにして映像のみとすることもできる。
モニタリングという画面表示の通り、自宅の様子を一方的に見るための機能だが、子供やペットの様子を確認したり、家に誰がいるかを確認した上で伝言を残すという使い方も可能だ。
ただし、スマートフォン側の映像は表示されずに音だけのやりとりになるため、コミュニケーションを取るという点ではビデオチャットと比べるとやや使いにくい。また、暗視撮影には対応していないため、夜間など部屋が暗い状態ではモニタリングできない。
なお、ライブビューの終了はアプリのメニューから「カメラをオフにする」を選ぶ必要があり、Google Homeアプリを終了してもモニタリングは継続される。モニタリングが続いているかどうかをアプリ側からは確認できず、アプリを終了してモニタリングも止めたつもりが、Nest Hub Max側からは「まだモニタリングが続いている」と思われてしまうことになる。
ライブビューを切り忘れてそのままにしてしまうことも多く、アプリ画面にカメラをオフにするボタンを用意するなど、終了をわかりやすくして欲しい。
Duoのビデオ通話に対応。自動追従が便利
Duoのビデオ通話は、Google Homeアプリの「家に発信」から端末を選択する。以前までNest HubへDuoで通話するには連絡先に自分の電話番号を登録するという作業が必要だったが、「家に発信」機能の搭載により、アプリとNest HubでDuo設定済みのGoogle アカウントを連携しておけば、簡単に端末へ通話できるようになった。
「家に発信」を選択すると、アカウント連携済みのGoogle Home/Nestシリーズがすべて受信し、任意の端末を選んで応答する。応答は画面をタッチするか「OK Google、電話に出て」と発声して応答することも可能。また、相手の応答がない場合、動画メッセージを録画してNest Hub Maxへ送ることもできる。
ビデオ通話そのものはスマートフォン同士での通話と体験として変わらないのだが、面白いのはオートフレーミングだ。カメラ自体が127度と広角なことに加え、映像内の人間が動くと常に画面の中心になるよう自動で追尾してくれる。
スマートフォンのビデオ通話の場合、自分が映るようにカメラの向きを調整したりと工夫が必要なことがある。Nest Hub Maxなら「相手が何しているのか」がわかり会話もしやすい。リビングで家事をしながら会話するという「ながら電話」にも便利だ。
自動追尾のビデオ通話が楽しい。ジェスチャーやFace Matchは今後に期待
ディスプレイに加えてカメラも搭載され、「全部入り」の最上位モデルであるNest Hub Max。前回のレビューの通り音質もよく、映像や音楽を楽しむという使い方に加え、カメラ搭載でコミュニケーション面も大幅に強化された。
オートフレーミング対応のビデオ通話は非常に便利。今までもEcho Show 5のビデオ通話などは体験していたが、話している相手を自動的に追いかけるだけでコミュニケーションがとてもわかりやすくなる。
画角が広く、部屋の隅まで映ってしまうため、家族以外とのやりとりでは使いにくいこともあるかもしれないが、外出先から家族とビデオ通話するにはとても魅力的だ。
一方、Face Matchやジェスチャーは始まったばかりで今後の機能強化や改善に期待したいところ。Face Matchはプライバシーに配慮しているものの、リビングなどでは複数ユーザーの利用が想定される場所での扱いにくさはある。ジェスチャーも今のところ使える機能が少ないため、今後の対応拡大が望まれる。
また、10型という大画面は映像を楽しむにはよいが、スマートスピーカーとしては少々大きすぎるという印象も受けた。画面サイズが小さく、デスクなど個人ユースが想定された端末であればFace Matchもより扱いやすくなりそうだ。Nest Hub Maxの機能拡張はもちろんだが、Nest Hubのカメラ搭載モデルの登場にも期待したい。