ミニレビュー

アメリカで「Pixel 4」が本領発揮。手かざし操作「Motion Sense」解放

Google Pixel 4/XLはとてもいいスマホだ。ただ残念なことに、Pixel 4のウリとなっている機能のいくつかが「アメリカでは使えるのに日本では使えない」状態になっている。

そのひとつが、「Soliレーダー」を使った「Motion Sense」という機能だ。「画面に触れずに操作」を可能とするものだが、日本ではSoliレーダーが使う90GHz帯の電波の利用ルール上の問題から、少なくとも来年春まで機能がオフになっている。

今のPixel 4では、日本ではMotion Senseをオンにすることができない。

だが、端末から機能が削除されているわけではなく、一定の条件下では使えるようになっている。その条件のひとつが、「90GHz帯の利用がルール化され、使えるようになっているアメリカで端末を使う」ことだ。

11月初週、アメリカ出張の際にMotion Senseをオンにして使ってみたので、そのレポートをお伝えしたい。

手をかざすだけで曲送りなどが可能

すでに述べたように、日本ではMotion Senseは使えない。そのため、設定メニューから機能をオンに変更できないようになっている。

しかし、日本版のPixel 4であっても、アメリカに移動すれば話は別だ。位置情報を読みとったのか、設定が変更可能になる。

アメリカでは自動的にMotion Senseをオンにすることが可能になる

設定さえオンになってしまえば、難しいことはなにもない。

まずは音楽プレーヤーの操作。スマホの上で手を左右に振ることで曲を送り、前に押し出すことで曲を止める。

音楽を手でコントロール。動かすと曲送りが行なわれる

それから、アラームの停止とスヌーズ。アラームが鳴りだしたら、手をスマホの上で動かすと、触ることなくスヌーズなどができる。

……実はできることはこのくらいだ。

現状のMotion Senseは、非常に大ざっぱな手の動きしか認識していないようで、できることは非常に限られている。これと同じ事は、カメラを使った画像認識や赤外線センサーなどでも不可能ではなく、あんまり驚きはない。

「ロック中」「画面オフ」でも動作する秘密は?

あんまり驚きはないのだが、冷静に考えるとすごいことをやっているのが、Motion Senseだ。

先ほどの動画では、動きだけでわかりやすいように、音楽プレーヤーを表示したまま操作していた。だがMotion Senseは、実際には、アプリを起動しなくても操作できる。それどころか、Pixel 4の画面がついておらず、ロックされている状態でも動く。音楽が再生されているスマホの画面がついていない状態で、スマホの方に目をやることなく、手を振るだけで曲送りなどができるのだ。

アラームの件も同様だ。こちらも、アラームがなったらスマホの上に手を持っていって振るだけでいい。まだ使い慣れていないため、「スヌーズするには右に手を振るべきか左に振るべきか」を迷ってしまう、という点はご愛敬だが、これはこれで便利だ。

また、顔認識によるロック解除の高速化にも、Motion Senseは使われているという。ただ、Pixel 4はそもそも顔認識の速度が速く、Motion Senseがない状態でも不満がなかったため、体感上は「ちょっと速くなった……かも」という印象だ。

なぜロックが入っていない段階で、すぐに使えるのか? これこそ、Googleが画像認識でなくSoliレーダーを使った理由である。

画像認識の場合には、画像認識は消費電力が大きいので、常時オンにするわけにはいかない。だから「近接センサー」で顔や腕の位置を把握してから動き出す。なので、反応はどうしても少し遅れる。ロックを無視してまで動かし続けるのは厳しい。

しかしSoliレーダーは違う。スマホのごく近くまで届けば十分なので、その出力はとても弱い。出力が弱いということは、それだけ消費電力が小さいということでもある。

消費電力が小さいものは、常にオンにしておけて、反応が素早くなる。事実、Pixel 4にはSoliレーダーを「有効にするか無効にするか」の設定しかなく、有効にしたらずっと電波を発し続けるようになっている。それでも、バッテリー動作時間に明確な差が出た印象はない。

Motion Senseは「オンオフ」くらいしか設定がなく、条件に応じて使えるようにする、といった機能はない。オンにすればずっと電波は出続ける

一方で、センサーから得られるデータはイメージセンサーほどリッチではない。機械学習を使い、その波形がどういう意味をもっているのかを解析して初めて成り立つ。精度が上がるにはそれなりの時間が必要だ。今のPixel 4でシンプルなことしかできないのはそのためではないか。

日本で使えるようになるまでに進化していてくれるとうれしいのだけれど。

ちなみに、帰国時、Motion Senseをオンにしたまま帰ってきた。単純に忘れていたのだが、そこで電波が出っぱなしだと、厳密には電波法違反になる。

しかしPixel 4は賢かった。日本の位置情報を掴むと、自動的にオフにしてくれたのだ。なかなか細かいことをやっているな、と妙に感心してしまった。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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