ミニレビュー

ハンズフリーが新常識? パワフルで使いやすい「Fire TV Cube」

Amazonは「Fire TV Cube」(第2世代)を11月5日より出荷開始した。「Fire TVシリーズ史上最もパワフル」という新モデルで、特徴は、高速でレスポンスのよい動作と、Amazon Alexaを使った音声だけの「ハンズフリー操作」だ。価格は14,980円(税込)。

Fire TVは、テレビと接続してAmazon Prime VideoやYouTube、Netflix、Hulu、DAZN、AbemaTV、TVerなどの動画配信サービスやPrime Musicなどの音楽配信など、テレビで様々なエンターテインメントを楽しむためのデバイス。その最上位モデルがFire TV Cubeだ。米国では2018年に初代モデルが出ていたが、日本では今回の第2世代モデルが初投入となる。このFire TV Cubeを短時間ながらテスト、その特徴を紹介する。

もっともパワフルなFire TV。設置場所に注意

Fire TV Cubeの外形寸法は86.1×86.1×76.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は465g。従来のFire TVのようなスティック状ではなく、キューブ型となったことで設置性も異なってくる。

Fire TV Cube
パッケージ

テレビのHDMI端子につなぐという点は共通だが、Fire TV Stickのようにテレビの裏側に“隠す”のではなく、Fire TV Cubeはボディをテレビの側面や前面に設置する。Amazonによればテレビより30cm~60cmほど離して設置することを推奨している。

電源用のmicroUSBや赤外線IRポート、HDMI端子などを装備
30cm以上テレビから離す

なぜ、テレビから離すのか?

それは、Alexaによる音声操作のためだ。Fire TV Cubeには8つのマイクを内蔵しており、Amazon EchoのようにAlexaによる音声操作が可能。ただし、設置場所がテレビの目の前だとテレビの音と干渉し、Alexaの音声が聞き取りにくくなってしまう。そのため、テレビから離してFire TV Cubeを設置する必要がある。

天板に操作ボタンと8つのマイク

もう一つの注意点は、HDMIケーブルが「付属しない」ということ。Fire TVやFire TV Stickの場合、本体にHDMI端子を備えていたので、HDMIケーブルを別途用意する必要がなかった。しかし、Fire TV Cubeはテレビから離して設置する必要があるため、HDMIケーブルが必要なのだ。購入時にも“合わせ買い”を促す表示もでるし、HDMIケーブルが余っているという人は問題ないが、「買ってすぐ使う」ためにはHDMIケーブルの準備が必要だ。

また、本体とリモコンのほか、赤外線延長ケーブルとイーサネットアダプタを同梱。無線LANだけでなく、有線LANで安定して使いたい人は標準で有線LANが使えるようになっている。

同梱品
イーサーネットアダプタ

便利なハンズフリー。Cubeだけの特徴

Fire TVの基本機能は、従来のFire TV Stick 4Kなどとほとんど共通だ。Amazon Prime Video、YouTube、Netflix、Hulu、DAZN、AbemaTV、TVerなどの動画配信がテレビで楽しめ、最高画質は4K/60p。Dolby VisionやHDR 10+などのHDRコンテンツや、Dolby Atmos音声などに対応する。

ただし、Fire TV Cubeではヘキサコアプロセッサを搭載(Fire TV Stick 4Kはクアッドコア1.7GHz)。起動速度や操作レスポンスが大幅に向上している。Fire TV Stick 4Kと比較すると、Prime Videoの操作も気持ち早くなっており、コンテンツ選択後の再生開始も少し速く感じる。もっともStick 4Kでも不満はなかったので、この点は驚くほど違うという印象もない。

一方Netflixの起動は、Fire TV Cubeが7秒強に対し、Stick 4Kは15秒弱とかなり速度差が出た。「Fire TVシリーズ史上最もパワフル」という謳い文句は間違いなさそうだ。

とはいえ、最新の最上位モデルが最も高性能なのはデジタルデバイスの常。Fire TV Cubeの最も大きな新機能といえるのが「ハンズフリー」操作だ。

Fire TV Cubeには、Alexaによる音声アシスタントと音声操作機能を内蔵。Fire TVに話しかけて、操作が可能になった。

実は従来のFire TVでもリモコンのマイクボタンを押して、話しかければAlexaによる音声操作は可能だ。しかし、Fire TV Cubeではハンズフリー、つまり、リモコンを手に取ること無く「声だけ」で操作ができる。

Cubeの天板には、8つのマイクアレイを搭載し、ビームフォーミング技術を使い、遠隔音声認識が可能。残響音や再生しているコンテンツの音、他の話し声などを聞き分け、雑音の中でも呼びかけにAlexaが応答する。

例えば、「アレクサ、ジャック・ライアンを再生して」と言えば、Prime Videoからジャック・ライアンを再生してくれるし、「アレクサ、5分早送りして」といった特殊な操作も可能。このハンズフリー操作はかなり便利で、再生時に「リモコン以上」に活躍してくれる。

音声で操作できるのは基本的にはPrime VideoなどのAmazonのサービス。およびYouTubeの番組検索も行なえるが、早送りなどの操作はできない。個人的には、DAZNが「〇〇分早送りして」に対応してくれると助かるのだが……。

Fire TV Cubeの「ハンズフリー」対応は、Alexaが使えるというだけでない。メニュー画面を見ると、コンテンツに、[1][2]などの数字が振ってあり、「1番を再生」と指示をして、コンテンツを選択・再生できる。これにより、完全にリモコンいらずで基本操作が行なえるのだ。

コンテンツに[1]などの番号。これを指定するだけで操作可能

これは、Fire TV Cubeだけの機能で、確かに何かをするときに「リモコンを探さなくて良い」のが便利だ。「3を再生」と話しかけると、なぜかSpotifyから[3]にまつわる楽曲を再生開始してしまうこともあるが、“3番”と話しかけると問題なく操作できるようだ。

一番スマートで使いやすいFire TV

Alexaだけでなく、スピーカーも内蔵しているため、Fire TV Cubeだけでスマートスピーカーとしても動作。radikoでラジオを聞いたり、天気予報をAlexaに教えてもらうことも可能だ。

また、赤外線やHDMI CEC、クラウド経由での機器制御にも対応。Alexaを通じて、対応するテレビやサウンドバー、AVアンプ、スマートホームデバイスなどのコントロールも行なえる。Fire TV Cubeに「アレクサ、〇〇を再生して」と名無しかけるだけで、HDMI接続したテレビが起動し、番組の再生が行なえる。

セットアップ画面では赤外線でのサウンドバー連携設定なども可能

Echoシリーズとの違いは外部サービスに対応するための「スキル」に、Fire TV Cubeでは対応していないこと。また、Echoシリーズでは、複数のEchoと連携し、「アレクサ」というウェイクワードに対して、一番近いEchoが反応する「遠隔音声認識」に対応しているが、Fire TV Cubeは非対応。そのためEchoとFire TV Cubeが混在した環境では、双方が反応してしまう。実際、自宅のリビングではEchoも併用しており、たしかにFire TV CubeとEchoが同時に反応してしまう。ウェイクワードを変えるなどで対応するしかなさそうだ。

短時間使っただけでも、ハンズフリーによる操作性の向上は確認できた。いままでのFire TVより、さらに幅広い人に使いやすくなったと感じる。パワフルだけでない使いやすさも魅力の新しいFire TVの登場だ。

臼田勤哉