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日本郵便と西濃が共同輸送 24年問題解決で協力

日本郵便グループとセイノーグループは、長距離輸送における共同運行を目的とした業務提携に関する基本合意書を締結した。2024年問題などの物流課題の解決に向けて協力することで、持続可能な物流サービス提供を図る。

日本郵便、日本郵便輸送、JPロジスティクスと、セイノーホールディングス、西濃運輸、セイノーの輸送ネットワークを担うグループ会社による提携。顧客から荷物を預かる集荷側の拠点から配達側の拠点への長距離輸送である幹線輸送において、共同運行を行なう。

両グループは今回の提携に先駆け、2月から共同運行トライアルを実施。トライアルの内容は、隣接する拠点を活用した荷物の積み合わせ、自社内で積載調整を行なっていた荷物の融通、積載率の下がる土日の荷物の集約など。トライアルの区間は、2月から3月にかけて東京~大阪・滋賀、東京~名古屋、神奈川~栃木、埼玉~福島・宮城、大阪~徳島、4月には東京~青森など3路線を追加して実施している。

このトライアルを通じて、既存の配送日数を変更することなく、トラック台数を削減するなどの効果が期待できることを確認できたという。また、使用するパレットなど異なる部分があり、トライアル開始前は無理なのではないかという考えもあったが、工夫を施すことによりクリアしている。

一方で荷物の受け渡しの方法や発着拠点の使い方など共同運行で課題となる点も見えてきており、両者合同の推進チームを立ち上げ、ルールや仕組みづくりに着手する。今後もトライアルを続けながら課題となる部分を洗い出し、1年後を目途に共同便を定常的に運行できるようにすることを目標に、取り組みを推進する。

誰でも参加できるプラットフォームに

物流業界ではトラック運転手の時間外労働の是正に伴い輸送力が不足する2024年問題や、少子高齢化による一層の人手不足など、共通の課題に直面している。そういった中で、一社だけの力では課題解決は難しく、「競争」をしながら「共創」をしていく必要があるとの考えから、共同運行を行なう。

日本郵便 代表取締役社長兼執行役員社長 千田哲也氏は、共同運行には物流課題解決のほか、輸送効率向上、環境負荷の低減、顧客の利便性維持につなげられると説明。まずは幹線輸送における仕組みづくりからとなるが、幹線輸送に留まらない共同化や協業の可能性についても検討する。

また、誰でも参加可能なプラットフォームの役割を担い、業界連携の輪を拡大させることも視野に入れており、その点では各社の協調領域と考えられる幹線輸送から始めることにメリットがある。

西濃運輸 取締役社長 髙橋智氏は、日本郵便グループはB to C、セイノーグループはB to Bが中心となっていることから、共創によってそれぞれの強みを活かせると説明。運んでいる物も、日本郵便グループは1~2個口、セイノーグループは5個口や10個口などが中心になっているなど、違いがあるという。この両者が共同運行の仕組みづくりを行なうことにより、より多くの物流業者が参加しやすい環境にもつなげられるという考えがある。

両社とも他の物流業者との協業も進めているが、全国での共同運行に向けた取り組みは初めて。それを定常的に運行し、かつ他社の参加を受け入れるためにはルールや仕組みを整えることが重要との考えから、1年という長い期間をかけて検証を行なう。

また共同運行以外にも課題解決に向けた協業を行なえる領域として、拠点・輸送の自動化や物流DXの実装・活用、ドライバーの人材育成などがある。将来的にはこういった部分での協業も検討する。

西濃運輸 髙橋智氏(左)と日本郵便 千田哲也氏(右)