ニュース

JR東日本、羽田空港アクセス線の計画変更で「高輪築堤」を現状保存

確認箇所写真(田町駅ホームから東京方を望む)

JR東日本は、「羽田空港アクセス線(仮称)」の工事着手前の試掘調査で発見された、「高輪築堤」についての調査・保存方針を発表した。

高輪築堤とは明治初期に鉄道を敷設するため海上に構築された構造物。2022年7月~2023年6月に実施した羽田空港アクセス線(仮称)の工事着手前の試掘調査で発見された。

確認箇所の状況(上面からの撮影)

JR東日本は、高輪築堤調査・保存等検討委員会の示した方針に従い、羽田空港アクセス線(仮称)の計画を変更。羽田空港アクセス線(仮称)の下り勾配の開始地点を当初計画より約100m品川方に変更することで、東海道線の線路下に存在すると想定される高輪築堤の一部を現状のままで保存する。高輪築堤への支障範囲は延長約160mだったが、計画の変更により、延長約100mを現状のままで保存できるようになる。

また、一連の文献調査と現地調査の結果、雑魚場架道橋の橋台には、鉄道開業時の第5橋梁(鉄道開業時、新橋駅から数えて5番目の橋梁)の橋台が残存している可能性があること、田町駅付近は、江戸時代後期に構築された薩摩台場の上に位置している可能性があることが明らかになった。薩摩台場は、薩摩藩蔵屋敷の東側(海側)に築造された砲台のこと。

こうした調査結果を踏まえ、2024年3月の委員会では、羽田空港アクセス線(仮称)に支障する範囲の遺構(高輪築堤、第5橋梁の橋台、薩摩台場)については記録保存とする方針が示された。支障する遺構については、工事を進めながら、港区教育委員会と連携して、考古学・鉄道史・土木史などの諸分野の知見に基づき、慎重かつ丁寧な記録保存調査を進める。

羽田空港アクセス線(仮称)は、既存の鉄道ネットワークを活用し、多方面からの羽田空港へのダイレクトアクセスを実現する計画。「東山手ルート」および「アクセス新線」を2031年度に開業する予定。

「東山手ルート」と「アクセス新線」は、現在休止している大汐線の橋りょうや高架橋などの既存ストックを有効活用し、東京駅と羽田空港の直結、宇都宮線・高崎線・常磐線方面からの所要時間短縮や乗換解消・低減など広範なエリアからの空港アクセスを改善予定。東京駅から羽田空港へは、現在、鉄道を利用した場合30分程度かかるが、乗り換えなく約18分で到着できるようになる。