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日本郵政とJR東日本が連携強化 Suica×ゆうちょ銀や駅・郵便局一体運営

日本郵政取締役 兼 代表執行役社長 増田寛也氏(左)と東日本旅客鉄道 代表取締役社長 深澤祐二氏

日本郵政グループとJR東日本グループは21日、社会課題の解決に向けた連携強化を目的とした協定を締結した。日本郵政、日本郵便、JR東日本の各社が連携し、郵便局・駅の地域コミュニティ拠点化のほか、ゆうちょ銀行とモバイルSuicaの連携など、“5本柱”で連携を進める。

5本柱の概要は以下の通り。

  • 郵便局・駅の地域コミュニティ拠点化
  • 持続可能な物流の実現
  • アセット活用による共創型まちづくり
  • 地域産業振興と新たな地域事業創造
  • デジタル化による地域の暮らし支援

郵便局・駅の地域コミュニティ拠点化

郵便局・駅の拠点性を高め、地域のニーズに応じた機能も付加することで、地域のコミュニティ拠点を目指す。2024年度には、内房線安房勝山駅と、宇都宮線蒲須坂駅、2025年度には外房線鵜原駅で新たに一体運営を開始する。

外房線 鵜原駅では、郵便局窓口業務と駅窓口業務の一体的運営を行なう。業務内容は、精算業務、列車の発車時刻・運賃の案内業務、Suicaチャージなど。2025年夏の開始を予定している。

鵜原駅/鵜原駅郵便局(仮称)イメージ

今後、郵便局・駅で、両社グループ商材の取り扱いや地域住民が集えるラウンジ、行政窓口機能の導入など、それぞれの地域のニーズに応じた機能を付加していく。

持続可能な物流の実現

物流業界における2024年問題や環境問題への対応を目指す取り組み。2024年度中を目途に、駅の多機能ロッカー「マルチエキューブ」に、ゆうパックの受け取りサービスを導入。再配達負荷を低減する。

また、両社グループで、鉄道車両と郵便車両を組み合わせるなど、輸送の省力化や環境負荷の低減を目指した「物流のリ・デザイン」に関する検討を行なう。将来的にはJR東日本路線における貨客混載なども検討していく。

アセット活用による共創型まちづくり

両社グループが所有するアセットや事業運営ノウハウの活用により、都市の魅力や国際競争力を高めるまちづくりを目指す。

最初の取り組みとして、JR秋葉原駅~御徒町間の高架下施設「SEEKBASE AKI-OKA MANUFACTURE」に日本郵政グループの「みらいの郵便局」プロジェクトとして「SOZO BOX」を2月29日に開業。郵便局の枠にとらわれずに、新しい価値を提供する。

第1弾は、バリューブックスとコラボレーションし、「想いを本と一緒に贈る」をテーマに展開。想いを届ける贈り本「SOZO BOOKS」として、贈る・贈られたエピソード等とともに選書した約150冊を用意し、贈る本に迷う人には本選びをサポートする「選書AI」を設置する。

地域産業振興と新たな地域事業創造

地域と連携し、新たな産業創出や既存産業の活性化に取り組み、地域における雇用の創出や関係人口の拡大を目指す。

2024年夏頃に東京中央郵便局と東京駅の「のもの東京駅グランスタ丸の内店」における山形県の特産品のコーナー展開を皮切りに、郵便局やエキナカなどで、地域の魅力的な商材を取り扱うコーナー展開や催事展開を実施していく。

また、空き家などを活用した古民家再生を起点とした宿泊事業の展開など新たな地域事業創造などの検討も進める。

デジタル化による地域の暮らし支援

両社の強みである「リアルな顧客接点」を活かし、誰もがデジタル技術を活用できる「誰一人として取り残されない」社会の実現を目指す。

まずは、駅でのオンライン診療サービスの拡大や、オンライン診療サービスに伴う処方薬の集荷・配送などの分野で協力する。

さらに、ゆうちょ銀行とモバイルSuicaの連携や両社グループ共同での加盟店開拓も進める。これにより、地域の暮らしに便利なキャッシュレスサービスの提供を検討していく。

JR各社の連携見据える ゆうちょ×Suicaで利便性向上

21日に開催された記者会見の質疑応答では、他のJRとの取り組みや、ゆうちょ銀行とSuicaの連携についての質問などがされた。

他のJRとの取り組みについて日本郵政取締役 兼 代表執行役社長の増田寛也氏は、「既に都市開発などでは協力しているが、協力の幅はもっと広げたい。それにはまず、JR東日本との取り組みで成果を出していきたい」とした。

日本郵政取締役 兼 代表執行役社長 増田寛也氏

JR東日本 代表取締役社長の深澤祐二氏は、「すでに新幹線での物流の取り組みは始まっているが、これから北陸新幹線が延伸することで、JR西日本とも連携しながら展開していく。また、現在は大量の荷物を輸送するためのオペレーションについて実験中で、車両基地から車両基地へ荷物を載せ替えたり、JR大宮駅のあまり使用されていないホームを活用する取り組みなども検討している。来年度以降にそうした取り組みも広げていく」とした。

JR東日本 代表取締役社長 深澤祐二氏

ゆうちょ銀行とモバイルSuicaの連携について、日本郵政の増田氏は、「3~5年程度を目処に何らかの連携を実現したい。今の段階で具体的な内容は提示できないが、社内でこれから検討して決めていきたい」とした。

JR東日本の深澤氏は、「ゆうちょ銀行は約1億2,000万口座、モバイルSuicaの連携は2,500万口座がある。例えば、何らかのかたちでゆうちょ銀行からモバイルSuicaへチャージができるようにするなど、利便性を向上する連携をしたい」などと語った。