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「フォレストゲート代官山」を見てきた 駅前に誕生する新複合施設

フォレストゲート代官山 MAIN棟。八幡通り・代官山駅入口交差点付近から

東急不動産は、10月19日に開業する複合施設「Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)」の内覧会を実施した。代官山から八幡通りに抜ける小径や、建築家・隈研吾氏など3人がプロデュースする住戸、東急不動産が新たに取り組む「食のプラットフォーム」の拠点などを見ることができた。

駅前から洞窟のような小径を抜けると街へ出る

フォレストゲート代官山は、賃貸住宅・シェアオフィス・商業施設のMAIN棟(渋谷区代官山町20番23号)と、サステナブルな生活体験を提供するTENOHA棟(渋谷区代官山町20番12号)の2棟からなる複合施設。代官山駅中央口改札を出てすぐの場所に立地する。

日本初の外国人向け高級賃貸住宅「旧代官山東急アパート」が生まれた地。八幡通りと代官山通りにも面しており、敷地内には代官山駅側から八幡通りへと抜けられる、誰でも通行できる小径を設けている。

代官山駅中央口改札を出てすぐ
施設内の小径
小径を抜けると八幡通り(写真奥)に出る

MAIN棟の規模は地上10階・地下2階、敷地面積約4,000m2、延床面積約22,000m2。デザイン設計は隈研吾氏が担当しており、木箱を積み上げた形状と豊かな植栽「垂直の森」を特徴としている。

代官山駅側から見たMAIN棟

デザインのポイントについて隈研吾氏は「駅の方から穴を抜けて街に出るような洞窟空間のような場所」と説明。洞窟を抜けると別の世界に入るようなイメージで、建物の中に洞窟を作ったという。

デザインについて説明する隈研吾氏

MAIN棟の住宅エントランスのデザイン設計も隈研吾氏で、東急不動産ホールディングス「緑をつなぐプロジェクト」の保全森林(岡山県西粟倉村)のヒノキ間伐材をルーバーとして使用。屋外の緑との相乗効果で森の中にいるような空間を演出している。

ヒノキ間伐材を住宅エントランスのルーバーに使用

商業施設はMAIN棟の低層部で展開。10月19日にグリーンショップ「SOLSO HOME」、アパレル「Ameri VINTAGE」、アイウェア「金子眼鏡店」、12月にスーパーマーケット「ザ・ガーデン」、カフェ「Blue Bottle Coffee」、物販「Jo Malone London」がオープン。その後、カフェ&レストランバーやショコラトリーなどが順次オープンする。

小径内に店を構える「SOLSO HOME」

賃貸住宅にはライフスタイル提案型の特別な部屋

賃貸住宅では、隈研吾氏、同施設のグリーンデザインとTENOHA棟の企画・運営に関わる造園家・グリーンディレクターの齊藤太一氏、フードエッセイスト・フードディレクターの平野紗季子氏がプロデュースする「ライフスタイル提案住戸」を用意する。

左から、隈研吾氏、齊藤太一氏、平野紗季子氏

隈研吾氏は「半分くつろぎ半分整う家」をプロデュース。「こころ」をテーマに、オンとオフの境界があいまいな時代に対して、究極のオフ空間となる、贅沢な時間が流れる住戸を提案する。部屋全体が同じ1つの布で囲まれており、隈研吾氏は「身体全体が布に包まれてリラックスして癒されるような空間」と説明した。

半分くつろぎ半分整う家

齊藤太一氏は「森のすみか」をプロデュース。「緑」をテーマに、森の中の静かで豊かな暮らしをイメージしている。齊藤太一氏は「壁はないんだけれども、5つのコンセプトが点在している」とし、様々な植物とアートを施している。「植物の成長などを都心にいながら感じてもらう生活を実現できれば」と説明した。

森のすみか

平野紗季子氏は、「Allday Dining House」をプロデュース。「食」をテーマに、食へのこだわりや魅力を住空間の中で実践・発信できる機能を備えた住戸を提案する。「代官山の抜けのいい空が見える広いベランダで、大きなプランターでハーブを育て、楽しみながら循環させていく暮らしができる」と説明した。大きなダイニングテーブルが置かれ、食を最大限に味わえる場所になることも期待しているという。

Allday Dining House

住戸は1LDK~3LDKおよびメゾネットタイプの57戸を用意する。メゾネットタイプは、専有部に設置された階段を利用して9-10階を行き来できる住戸として用意する。

10階の部屋のベランダからの眺望

食文化づくりに挑戦するプラットフォーム始動

東急不動産はイートクリエーター社とともに、次世代に向けた新しい食文化づくりに挑戦するプラットフォームを始動し、新会社「日本食品総合研究所」を設立した。フォレストゲート代官山のMAIN棟がその活動拠点となる。

この事業では「シェフの活動サポート」「企業の新規事業プロデュース」「行政の地域ブランディングの企画」を行なう。

フォレストゲート代官山はこれらの活動の中で、企画、開発・製造、テスト販売やマーケティングの場となる。そのための施設として、3階のコワーキングスペース「ビジネスエアポート代官山」、2階の研究所「ODMファクトリー」、調理室「テストキッチン」、1階の店舗「食品庫」「喫茶室」がある。

コワーキングスペースで新ビジネスやサービスを企画。2階でオリジナル商品を開発・製造し、1階で独自のサービスと体験の提供を行なう。

テストキッチンは居住者をはじめ、個人や企業に様々な使い方ができる場としても提供し、シェフ同士、シェフとファン、ファン同士の交流の場として活用されることを想定する。

テストキッチン

食品庫は八幡通りに面した場所に出店。チーズ、シャルキュトリー、ワインなども取り扱う。また、インショップ、イベント開催、試食・試飲や角打ちも計画している。

食品庫

喫茶室はフォレストゲート代官山の小径に出店する、日中はカフェ利用、夜はワインバーとして営業する飲食店。商品のテストマーケティングの場とするほか、ブランドタイアップイベントの企画・開催を計画している。なお、開業時点では夜の営業は行なわない。

喫茶室

TENOHA棟でサーキュラーコミュニティ始動

TENOHA棟は木造2階建て、延床面積200m2。ここではRGBが企画・運営するサーキュラーコミュニティ活動「CIRTY PROJECT」に取り組む。

TENOHA棟
TENOHA棟の説明会が行なわれた1階の様子

CIRTY(サーティー)は、「サーキュラー」や「サスティナブル」を日常生活に落とし込んでいくきっかけをつくるための情報発信と場づくりを軸とした活動体。「買う」「食べる」「愉しむ」「贈る」などの日常の中でできるサーキュラーコミュニティを育てることを目的とする。

TENOHA棟では、「循環型のオールデイカフェ&フラワーショップ」、「施設内緑化・都市型の屋上菜園」、「サーキュラーコミュニティイベント」、「ギャラリー・ワークショップ」を展開。あわせて、CIRTYの公式Webメディアで情報発信を行なう。

カフェ&フラワーショップでは、「地産地消・店産店消・循環」といったサーキュラーを体現できるプラントベースのメニューを提供。食品廃棄物をバイオマス処理した結果生まれた残渣を堆肥化した土を利用して近隣の提携農家が育てた野菜や、規格外野菜、店内の植物工場や屋上菜園で育ったハーブなどを使用する。

カフェメニュー
店内の植物工場

施設内緑化・都市型の屋上菜園では、代官山という街の中心地から緑化推進を図る。イベントやワークショップは定期的に開催し、また2階のライブラリースペースではサーキュラーやサスティナブルに関連する書籍、サーキュラーコミュニティメンバーの推薦図書を設置する。

2階の様子

TENOHA棟の建設には建築家ユニットのSUEP.(スープ)が携わっており、「循環する建築」をコンセプトとしている。

木材は、岡山県西粟倉村にて森林の過密状態を回避するために間引いた間伐材を使用。また、移築・再利用可能な建築で、解体時にも廃材やCO2を排出することなく、繰り返し使える仕組みを採用している。

なお東急不動産は再⽣可能エネルギー事業「ReENE(リエネ)」、交流スペースなどの「TENOHA」を展開しており、地方と都市双方の強みを連携させ、環境課題に取り組むとしている。