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「日本ファクトチェックセンター」設立。Googleが150万ドル

セーファーインターネット協会(SIA)は、偽情報・誤情報対策を行なうファクトチェック機関「日本ファクトチェックセンター」(Japan Fact-check Center:JFC)を10月1日に設立する。

インターネット上での虚偽情報・誤情報の流通防止や、リテラシーの向上、人材育成など、総合的な偽情報・誤情報対策を行なう機関。新型コロナウイルス感染症に関する偽情報など、誤った情報による社会の混乱を未然に防ぐ試みで、有識者などを交えて情報を収集し、その真贋をWebサイト上で公開する。

SIAは、2020年6月に偽情報対策の産学官民連携した取り組み「Disinformation対策フォーラム」を設立し有識者による議論を進め、2021年7月に「ワクチンデマ対策シンポジウム」を開催するなど、偽情報・誤情報対策に取り組んできた。

日本ファクトチェックセンターは、Disinformation対策フォーラムの報告書を受け、「情報空間の健全性向上」「人材の育成」「情報リテラシーの向上」を柱として偽情報・誤情報対策を総合的に実施していく。

運営資金は当面、Googleの慈善事業部門「Google.org」が2年間で最大150万ドル(約2億1,700万円)、ヤフーが1年で2,000万円を提供。今後もプラットフォーマーや情報通信業界などからの資金提供や募金によって運営を行ない、広告収入や有料化は考えていない。

主な活動内容の1つは、ファクトチェック記事の伝播とし、日本ファクトチェックセンターのWebサイト「Facts matter.」で月10本のファクトチェック記事を配信する。主にSNSなどで配信されている真贋不明の情報について有識者やファクトチェッカーなどによって情報を精査し、事実か否かをチェックして記事化していく。

例えば、台風15号で被害を受けた静岡県の画像としてドローンで撮影された画像がTwitterで物議を醸していたが、この画像はAIによる偽画像である、とするファクトチェック記事を公開。画像の詳細な検証や静岡県の見解などを交えて偽画像であるという結論を出している。

ファクトチェック対象は基本的にはSNSなどで配信されている情報とし、「正確で厳格な報道機関は対象外」としている。その理由について運営委員会事務局長を務める吉田奨氏は、「報道機関はそもそも自身で事実を確認して報道することが使命であり、そこは報道機関自身に委ねる」という。また、人員リソースの問題もあり、全ての記事のファクトチェックは行なえないことも理由にあげた。

ファクトチェックを行なう体制は、「監査委員会」「運営委員会」「編集部」からなる。

監査委員会は、東京大学大学院法学政治学研究科教授の宍戸常寿氏が委員長を務め、ガバナンス全体の適正性確認や協業企業等との利益相反チェックなどを実施。

運営委員会は、京都大学大学院法学研究科教授の曽我部真裕氏が委員長を務め、監査委員会の監修の元、運営ガイドラインの制定や運用状況の監督、ファクトチェック効果の評価、案件や分野選定の評価などを行なう。これら運営ガイドラインなどを元に編集部がファクトチェック記事を執筆する体制。

編集長を務めるのは、元朝日新聞記者でBuzzFeed Japan創刊編集長も務めた古田大輔氏。その下に、同じく朝日新聞出身の2人のエディターが付き、さらに4名のインターン、3名のリサーチチームがファクトチェックを行なう。

常勤は古田氏のみで、当初は月に10本ほどのファクトチェック記事を掲載することをめざす。会見に参加した記者からは、「編集部の主要人員が元朝日新聞記者だけで構成されているのは偏りがないか?」という指摘もあったが、運営委員会の吉田氏は、「経験と能力をみて人材の選定を行なった。偏りについては厳正なガイドラインを制定することで公正性を失わないようにする」としている。また、将来的には記事の掲載本数を増やし、それにともなって多様な人材を迎えることで体制を強化していく方針。

編集長の古田氏は、「ファクトチェックは最新技術を使って協力しながらやっていくしか対応策が無い」とし、情報提供を呼びかけるコーナーも設置。読者が疑問に思っている情報などを投稿できるようにする。