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マイナンバーカードのAndroidスマホ搭載は'23年4月以降に。iOSは遅れ

デジタル庁の国民向けサービスグループ長・デジタル統括官の村上敬亮氏

政府が計画するスマートフォンへのマイナンバーカード機能内蔵について、デジタル庁のデジタル統括官である村上敬亮氏は「システムは(2022)年度末にできあがる方向で作業を進めている。年度が明けてそう遠からずにサービスインできる進捗」と話した。2023年4月以降、早い段階でAndroidスマートフォンへの内蔵が実現しそうだ。

村上氏は、契約で詳細は話せないとしてそれ以上の説明はなかったが、OSレベルでの改修が必要とされている中、実際の導入に向けて確実に進捗していることが明らかにされた。

iOSに関してはAppleとの協業が必要で、これも契約に基づいて詳細は話せないとしつつ、「遅れている」(村上氏)という状況だという。そのため、2023年4月以降のAndroidよりは遅れる見込みだ。

マイナンバーカード機能のスマートフォン搭載で期待されている利用の想定

マイナンバーカードは、7月末時点で5,800万枚以上が交付され、人口の45.9%まで普及した。政府は「国民のほぼ全て」に普及させることを目指しており、マイナポイント第2弾でも交付が拡大している。それでもこのままでは難しいという意識は政府側にもあり、様々な手段を講じようとしている。

そもそもマイナンバーは2015年10月から運用を開始しており、日本国民全員に個別の12ケタの番号が割り当てられている。社会保障、税、災害対策分野で活用されており、地方自治体などの各行政機関などが保有している個人情報を、それぞれが必要に応じて照会をかけて、それに応じて情報を保有する機関が提供をする、という形で活用するための制度だ。

例えば年金給付、高校などの就学支援金支給、健康保険、地方税の課税情報などで活用され、2017年7月18日以降、4億3,939万回の情報照会・提供が行なわれている。

マイナンバーの情報連携の件数

金融“以外”もマイナンバーカード活用拡大へ

マイナンバーはこうして活用されているが、「マイナンバーとマイナンバーカードは別物」(村上氏)。マイナンバーカードは国民の申し込みに応じて交付され、本人確認などの用途での活用が想定されている。

マイナンバーカードは市区町村窓口において対面で発行される写真付き公的身分証明書で、券面には基本4情報(氏名、性別、生年月日、住所)とマイナンバーが記載されているが、特に重要な位置づけとなっているのがICチップ。ここに2つの電子証明書が保管されており、オンラインでの本人確認に利用できる。

マイナンバーカードの特徴。券面記載のマイナンバーは法令で定められた限定的な用途での利用。電子証明書による本人確認とICチップの空き領域は民間事業者でも利用できる

村上氏は、「この本人確認機能をどう使うかをもっと考えなければならない」と指摘する。現状はまだ用途が少ないという課題があり、オンラインの本人確認が有効に活用されるようになれば普及が進むという判断だ。

現在、マイナンバーカードを活用している民間事業者は140を超えているが、「多くは金融事業者」(村上氏)。金融事業者は住所などの変更確認に使っているそうで、口座の登録住所が変わっていないかなどを確認し、使われていない口座や架空口座の発見に役立っているという。

他の用途として村上氏は、群馬県前橋市が実証実験中の「MaeMaaS」を紹介する。「マイナンバーの数字を使って新しい数字を作るのは、解釈が難しいのでできれば勘弁して欲しい」(村上氏)ということで、MaeMaaSで利用される「まえばしID」では、本人確認にマイナンバーカードを使った上でIDを発行する。

これによってIDの発行に窓口に行く必要がなく、強力な本人確認を使ったIDが発行できる。このまえばしIDとマイナンバーの紐付きを確認することもできるので、本人同意を元に住基システムにある本人情報も活用できる。

MaeMaaSにはJR東日本も参画。マイナンバーカードとSuicaの紐付けを行なうことで、例えば改札でタッチしたSuicaの持ち主が高齢者だと判断できて、前橋市の高齢者向け割引制度を自動適用できる。障害者などの福祉制度を活用した割引なども可能で、地方自治体が助成する支援制度を、自動適用して交通機関を利用できるわけだ。

今後、Androidスマートフォンにマイナンバーカード機能が搭載されれば、決済サービスと連携させることで、タクシーやバス、電車などでスマートフォンのタッチだけで割引運賃を自動適用できる。個人に紐付くため、「かなりきめ細かく割引が設定できる」とメリットを村上氏は紹介する。

他にも例えばコンサートチケットの申し込みでも、マイナンバーカード機能内蔵のスマートフォンで申し込めば、本人確認ができているため、申し込みにIDやパスワードも不要。入場時にはスマートフォンで認証をして購入時に配布されたQRコードをかざせば安全に入場できる。

さらに、関連する事業者同士が連携すれば、グッズ売り場で入場回数が多い人は別の売り場を案内するとか、最寄り駅から会場までAR道案内機能を提供し、途中にある商店街と連携して関連グッズを売るといった消費行動の拡大にも繋げられる、と村上氏は話す。

デジタル田園都市でマイナカードプロジェクト“大優遇”

こうしたことができるのは、マイナンバーカードが対面交付で本人確認強度が高いからだ。世界的に見ても、「ここまでバカ正直に対面交付にこだわって国のカードを交付してきたのなら、やめない方がいい」と言われているそうだ。こうした強度の高い本人確認ができるツールを、民間事業者も活用できるというのが、マイナンバーカードのメリットだとしている。

「市民活動の中でも本人確認が使えるシーンはまだまだたくさんある」と村上氏。そのため、来年のデジタル田園都市国家構想推進交付金では、「マイナンバーカードを使うプロジェクトを絶賛大優遇する」と言う。

「国が、オンラインで本人確認できる最強ツールを国民に提供する。国家のサービスだと思っている」と村上氏は話して、様々な用途に使ってほしいとアピールする。

マイナンバーカードの本人確認の活用では、J-LIS(地方公共団体情報システム機構)に署名検証の問い合わせを行なうが、1件の問い合わせあたり、利用者証明用電子証明書で2円、署名用電子証明書で20円のコストが発生する。この負担が重いという事業者の声は根強い。村上氏は「秘策を検討中」と述べて、対応していく考えを示した。

デジタル庁は、省庁の中では復興庁と並んで総合調整機能を備えている。これは他の省庁に対して企画、調整をすることができる。マイナンバーカードの普及に関して企画を立てて各省庁に実際の施策を促すことができる立場にあると村上氏。

「あとはいかに図々しくこの権限を使えるか」(村上氏)。それには大臣のキャラクターも影響するそうで、「そのため、河野(太郎デジタル)大臣が頑張ります」と村上氏。新大臣がリーダーシップを発揮することで、マイナンバーカードの普及促進施策が加速するとの考えを示した。