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“お釣り”がある電子通貨。「サクラタウンコイン」が狙う地域振興

サクラタウンコイン。9種類の額面のコインが発行され、それぞれに「ケロロ軍曹」などのキャラクターがあしらわれている

埼玉りそな銀行、富士通、KADOKAWAの3社は、埼玉県所沢市の大型文化複合施設「ところざわサクラタウン」において、キャラクターイラストをデザインした電子コイン「サクラタウンコイン」による電子通貨決済の実証実験を、11月1日から2022年4月10日(予定)の期間で実施する。

新型コロナウイルスの感染拡大により、クレジットカードや電子マネーに加えて、地域限定の電子通貨、商品券といったキャッシュレス決済が急速に普及している。同時に、娯楽施設や商業施設の集客減少も大きな課題となっている。そこで、デザイン性を持たせた電子通貨を利用することで、地域の町おこしや集客、話題作りに効果があるのか、また地域限定の電子通貨という仕組みがビジネスモデルとして成り立つのか、といったことを検証する目的で、ところざわサクラタウンにおける実証実験を行なうこととなった。

ところざわサクラタウン

今回発行される電子通貨は「サクラタウンコイン」と呼ばれるもので、発行は埼玉りそな銀行。1,000円単位で上限50,000円まで購入でき、対応店舗での支払いに利用できる。サクラタウンコインの購入および利用は、まずはところざわサクラタウン内の書店「ダ・ヴィンチストア」でのみ行なわれ、今後ところざわサクラタウン内の他店舗や周辺店舗などに対応店舗を広げていく計画。なお、サクラタウンコイン購入後の現金化はできず、利用期限は実証実験終了となる4月10日まで。期限を過ぎると電子通貨としての機能は失効し、未使用分が払い戻されることもない。

ところざわサクラタウン内の書店「ダ・ヴィンチストア」

サクラタウンコインの大きな特徴となるのが、発行されるコインに様々なキャラクターをあしらっている点。漫画「ケロロ軍曹」や、埼玉りそな銀行のマスコット「りそにゃ」、埼玉県のマスコット「コバトン」「さいたまっち」、所沢市のマスコット「トコろん」といったキャラクターが採用され、1円、5円、10円、50円、100円、500円、1,000円、5,000円、10,000円と9種類の額面のコインに、それぞれのキャラクターを採用した異なるデザインが施される。

ケロロ軍曹など、5種類のキャラクターがあしらわれた全45種類のコインが用意され、期間中に新デザイン追加も予定されている
サクラタウンコインを購入すると、ランダムで選ばれたデザインコインが発行される

支払時の手順も、一般的なコード決済と大きく異なっている。

サクラタウンコイン利用時には、レジ横に設置されているQRコードをスマートフォンで読み取り、支払金額を入力して決済を行なう点は、一般的なコード決済と同じだが、同時に利用するサクラタウンコインを、9種類の額面のコインから選んで支払う必要がある。これにより、一般的な電子マネーにはない釣銭の概念が取り入れられており、購入金額よりも大きな額面のサクラタウンコインを利用した場合、差額分が釣銭としてサクラタウンコインで払い戻される。

店頭で利用する場合には、レジ横などに設置されているQRコードをスマートフォンで読み取って決済を行なうことになる
購入商品の金額を入力し、使用するコインを選択
決済が完了すると、差額分のコインが釣銭として発行される

サクラタウンコイン購入時や、対応店舗での支払後の釣銭支払時に払い出されるサクラタウンコインのデザインは、利用者が選択することはできず、全てランダムとなる。合わせて、実証実験期間中に新たなデザインが追加される予定。

すでに秋草学園短期大学の学生がデザインしたコインの追加が決まっており、それ以外にも埼玉県内の大学や高校などと新デザインについて話を進めているという。

こういった仕様によって、異なるデザインのサクラタウンコインを集めたり、どれを使い、どれを使わずに取っておくか考えるといった、楽しめる要素がある点が他の電子マネーにはない大きな特徴となっている。

購入時には、代金の入力とともに、支払いに利用するコインを自由に選択して利用
購入金額よりも多い額面のコインを利用すると、決済終了後に釣銭のコインが発行され
釣銭のコインのデザインもランダムで発行。こういった使い方によって、コインを集めたり、どれを使い、どれを使わずに取っておくか考えるといった、楽しめる要素を実現している

今回のサクラタウンコインの実証実験では、埼玉りそな銀行は地域振興策としての可能性を模索するとともに、現状紙での発行が大半に地域振興券に応用することで効率化やコストダウンが図れるかを検証。富士通は、本スキームのビジネスモデル化や他事業への展開可能性を検討するとともに、利用者の声をもとに機能改善や実用性向上を図る。またKADOKAWAは、ところざわサクラタウンの話題作りや集客の向上を狙うとともに、取扱店の売上げに寄与したり、非接触決済による感染症対策の一環となることを期待しているという。

あわせて、利用者数や販売金額、デザイン別のコインの使われ方などを分析しつつ、地域おこしのスキームとして成り立つか検証。SNSでの話題などをチェックしつつシステムや仕組みに潜在的なリスクがないかモニタリングを行ない、利用者および取扱店のアンケートと合わせて機能改善につなげたいという。

そして将来は、デザインを採用できる特徴を活かしてアニメの聖地と言われる地域やアニメを切り口に町おこしを検討している地域に新たな振興策として提案したり、地域振興策のビジネスモデルとして成立することが確認できれば、恒久的な取り組みとして展開することを検討していくとした。