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Jリーグ試合のコロナ対策をCO2濃度等で評価。観客席は低リスクもトイレに課題

産業技術総合研究所は、JリーグとFC今治、モンテディオ山形、北海道コンサドーレ札幌、川崎フロンターレ、FC東京、柏レイソルと連携し、Jリーグの試合やルヴァンカップ決勝戦をはじめとした5つのスタジアムで、様々な状況におけるCO2濃度と混雑具合を計測することで、3密状態の調査を行なった。

調査では、試合時やクラブハウスなどでの観客・選手やスタッフの新型コロナウイルス感染リスクを評価。換気状態(密閉)の指標としてCO2計測器や、人の密集・密接状態や観客の行動を調査するためのレーザーレーダー、画像や音響センサーなどを活用することで3密状態を調査した。CO2濃度は3密を避けるための「重要な基準」としており、これまでプロ野球スタジアムでのCO2濃度計測などの調査事例はあるが、レーザーレーダーなどを使った観客の密集・密接状況の調査と組み合わせて分析したのは初めて。

調査の対象となったスタジアムは、FC今治「ありがとうサービス. 夢スタジアム」、モンテディオ山形「NDソフトスタジアム」、北海道コンサドーレ札幌「札幌ドーム」、川崎フロンターレ「等々力陸上競技場」、ルヴァンカップ決勝「国立競技場」の5つ。実際に行なわれた7試合(観客収容率9%~46%)を対象とした。

調査を実施した試合と観客数、観客収容率
各スタジアムやクラブハウスでの設置状況

実際に観客が入ったスタジアムの観客席、トイレ、コンコースゲート付近のCO2濃度を計測。今回計測した収容率では、観客が多くの時間を過ごすスタジアムの観客席29カ所で測定したCO2濃度は、400ppm~700ppm程度となり、十分換気されていることが確認された。一方で、国立競技場のトイレやゲートでは、時間や場所による違いはあるものの、一時的に濃度が1,000ppmを超える時間があった。この場所での観客の滞在時間は短いが、人の流れを分散させる必要性があるとしている。

スタジアムのスタンド観客席のCO2濃度の変化(線の色はデータ採取地点の違いを示す)
国立競技場のトイレ、ゲート、コンコースでのCO2濃度の変化(線の色はデータ採取地点の違いを示す)

ルヴァンカップの決勝戦が行なわれた国立競技場コンコースでは、レーザーレーダーによる観客の行動様式を調査。試合終了後の帰宅時以外では、両チームとも試合開始1時間前が最も混雑していた。また、優勝チームの帰宅時のコンコースは負けたチームに比べて30分遅い時間に混雑が発生するという。これらのレーザーレーダーで得られた結果は、ゲート付近に設置したCO2濃度の変化と同期している。

レーザーレーダーによるコンコースでの人の抽出結果(左:試合開始前、右:試合終了後、線は認識された人の軌跡を示す。右下に柱や中央上に壁が三次元復元できていることが分かる)
各チーム側のコンコースで各観客の半径2m内にいる平均人数の推移

今後は、CO2計測やレーザーレーダー、画像センサーや音響センサーといった複数の計測結果を統合した分析を行なう。また、スタジアムの客席やコンコースだけではなく、スタジアム内の選手控室やクラブハウスなど選手・スタッフの活動エリアでの評価も実施。スタジアムやクラブハウスでの新型コロナ感染リスク対策に役立てる。