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「サイゼリヤ」がついにキャッシュレス決済。一部店舗で実証実験中

利用者の利便性向上からはじまり、○○Payの決済サービス各社のキャンペーンや政府のポイント還元施策の活用、あるいは増え続けるインバウンド需要対策まで、さまざまな理由で過去何年にもわたって小売店のキャッシュレス決済対応は進展してきた。一方で、頑なにクレジットカードや電子マネーを導入しない小売店舗も少なからず存在する。「(薄利なので)手数料を取られるのが痛い」「新しい決済方式に対応する障壁が高い」「そもそも客層からニーズが低い」などさまざま理由は考えられるが、イタリアンレストランを展開する「サイゼリヤ」もキャッシュレス非対応チェーンの1つとして知られている。

大手チェーンでは頑なに現金主義を貫くことで知られる「サイゼリヤ

サイゼリヤは商品単価が低く、ランチで500円、通常メニューでも1,000-2,000円程度の範囲でさまざまな単品メニューを組み合わせて楽しめるお手軽さが人気の理由であり、家の近所のレストランがサイゼリヤしかない筆者も、現金しか使えないという不本意な状況ながらよく同店で食事を楽しんでいる。

「現金のみ」というのはサイゼリヤ全店の基本方針だが、まれにクレジットカードや電子マネーに対応した店舗が存在する。これはテナントとして入っているモールやビルの出店規約に準ずるもので、一般にサイゼリヤといえば「現金のみ」という認識だ。

だがここ最近になり、このサイゼリヤの一部店舗で突然クレジットカードと交通系電子マネーが利用可能になったと報告するTwitterの投稿が話題になった。「キャッシュレス化の布石で、今後他の店舗にも展開される」という分析も行なわれていたりしたが、今回実際にキャッシュレス決済に対応したとみられる店舗を訪問し、その是非を確かめてみることにした。

ランチメニューはシーズンごとに変化して選べる9種類。これにスープが付いて500円

東京都心のターミナル駅に近いサイゼリヤの当該店舗は巨大なオフィスビル群に挟まれ、一般的なロードサイド店舗などと比較しても電子マネーやクレジットカード利用率が高そうな立地という印象を受けた。店舗入り口にはUCカードのロゴとともに、Mastercard、Visa、交通系電子マネーのアクセプタンスマークが確認できる。

アクワイアリングをUCが行なっていることを示しており、実際に店舗内に設置された決済ターミナルもCardnet経由で処理する東芝テック製CCT併設のデンソーウェーブ製のものであることが確認できた。

クレジットカードはICにも対応しており、PIN入力で認証を行なう形となる。なお店舗によれば、この機材が導入されたのは10月15日のことで、18日の取材時点でまだ運用開始から4日目ということになる。

東京都南部のオフィス街に近い立地にあるサイゼリヤ店舗の入り口には、UCブランドのマークとともにMastercard、Visa、交通系電子マネーが利用できる旨を示すアクセプタンスマークが表示されていた
レジの様子。お馴染みの「Cash only」の表示はない。決済処理はCardnetで、東芝テックとデンソーウェーブ製の端末が並ぶ。IC利用の場合はPINパッド背面のスロットに挿入する
モバイルSuicaで決済している様子。ICにも対応しており、PIN入力で認証する

同件について、ある関係者の話によれば、サイゼリヤは店舗のキャッシュレス対応による効果を測定するため、特定店舗での実証実験を行なっている段階だという。そのため、今回の当該店舗でのキャッシュレス決済対応が即サイゼリヤ全国店舗での広域展開につながるわけではないものの、同社としてキャッシュレス対応に向けた動きを見せつつあることは間違いないようだ。

なお前述の関係者の話によれば、アクワイアラと利用可能なカードブランド(電子マネー)の組み合わせは暫定的なもので、今後展開が本格化した際に変更される可能性があるという。当初はオペレーションの簡略化に重点を置いたため、シンプルな構成になったようだ。

サイゼリヤの会社概要ページによれば、2018年8月期時点で同社は国内1,085店舗、海外384店舗を展開中という。つまり本格導入となれば1,100店近い大型案件が動き出すわけで、カード各社や決済事業者による売り込みが始まる可能性がある。筆者が訪問したときはまだ認知が進んでいないのか、現金決済を行なう人しか見かけなかったが、今後認知が広まるにつれ利用も増加し、展開店舗が拡大するかもしれない。

10月19日のタイミングでサイゼリヤ広報より返答があり、次のような形で計画を進めているという。

「キャッシュレス対応について、検討を進めています。検討中ではありますが、来年のオリンピックの時期に首都圏などでの展開を考えております」(サイゼリヤ広報)。