ニュース

空飛ぶクルマ実現へ福島と三重が協力。地方公共団体が構想発表

経済産業省、国土交通省を中心に官民一体で「空飛ぶクルマ」などによる、空の移動を身近にすることを目指す「空の移動革命に向けた官民協議会」は、8月2日に「福島県と三重県の空飛ぶクルマ開発、実用化に向けた協力協定締結式」と「空の移動革命に向けた構想発表会」を実施。福島県、三重県、東京都、愛知県、大阪府が空飛ぶクルマに対する今後の取り組みや構想について発表した。

鈴木英敬三重県知事(左)、内堀雅雄福島県知事(右)

空飛ぶクルマは、離島・山間部での物流や人の移動、都市の渋滞緩和や移動時間の短縮、災害時の輸送などを目的に、短中距離を自動で飛行し、安全かつ安価に物や人が移動できる機体として考案。2023年からモノの移動、地方での人の移動、2030年頃には都市での人の移動といった実用化を目指したロードマップが掲げられている。

現在行なれているドローンの実証実験などから、将来的に人にとっても身近で手軽な移動手段として、空を利用できることを目指し、経済産業省や国土交通省などの省庁、各地方公共団体、民間事業が一体となって実用化を目指し、取り組んでいる。

今回、福島県と三重県は空飛ぶクルマの開発、実用化に向けた協力協定を締結。発表会では福島県、三重県、東京都、愛知県、大阪府が各地方公共団体の取り組みや、地域の強み、今後の構想などを発表した。

福島県では13kmの長距離飛行実験拠点を設置

福島県は、震災による被害が大きかった双葉郡に「福島ロボットテストフィールド」を整備。震災復興としての観点も含めて研究施設の充実を図る。ヘリポートや滑走路から緩衝ネット付き飛行場、模擬市街地、模擬災害地などを備えているほか、研究棟も設置。ドローンや空飛ぶクルマなどの飛行実験が安全に行なえる拠点を目指す。

ロボットテストフィールドの拠点は南相馬市と浪江町の2カ所に設置。2拠点間の約13kmの長距離飛行実験が可能としている。また、実証実験の準備仲介も含めた支援を展開。飛行ルート付近の地区長への説明まで取り組み、これまで220社以上を試験誘致した実績を活かすという。

三重県の活用テーマは生活・観光・防災

三重県は、課題となっている離島や過疎地域への生活支援、観光地への移動手段、防災対策や産業の効率化の3つをテーマとして提示。鈴木英敬三重県知事は、とくに陸路が不便な観光地や、主要道路が1つしかなく、災害発生時に崩落が発生すると陸の孤島となってしまう地域での活用を強調した。

2023年の空飛ぶクルマ実用化後の可能性として、2025年から開始する神宮式年遷宮を活かした取り組みや、2037年のリニア中央新幹線名古屋大阪間開通による連携など、さまざまな展開を望めるとしている。

鳥羽市での空飛ぶクルマ イメージイラスト

愛知県は次世代自動車・航空・ロボット技術を融合

愛知県は、3つの戦略的成長産業分野として、「次世代自動車」「航空宇宙産業」「ロボット産業」を挙げている。愛知県は、自動車・航空宇宙産業が全国シェア1位、ロボット産業が2位であることを説明。その上で、空飛ぶクルマは、この3つをまたぐ分野として、従来の産業のノウハウとデータが蓄積されている愛知県には、それらと最新技術が融合することで新たな技術革新を起こすポテンシャルがあると主張。

すでに空飛ぶクルマの開発を目指す有志団体「CATIVATOR」とそのメンバーで設立した「SkyDrive」と連携協定を結んでおり、廃校となった小学校や市有地を活かし、活動場所、試験場を提供。今後も研究開発をサポートし、空飛ぶクルマの開発・生産拠点を目指す。

東京都は都心の混雑解消や西多摩の交通不便解消を目指す

東京都は、空飛ぶクルマの社会実装に必要な要点として「気運醸成」「実証実験」「特区による規制緩和」の3点を挙げた。その例として自動運転車両やドローン、ロボットの研究を対象に行なってきた、ユーザーの理解促進などを目指したイベント、行動や鉄道駅で実施された実証実験、特区によるセグウェイやドローン利用の規制緩和を推進していることを説明。

すでにスタートアップ等の支援事業に空飛ぶクルマを採択。都心部の混雑解消、臨海部の交通の結節点での活用、島しょ部の輸送手段、西多摩地域の交通不便地域の移動など、地域ごとに異なる課題がある東京は、課題解決に向けた空飛ぶクルマの事業展開を見込んでいるという。また、東京2020大会で注目が集まっている環境や企業が集積していることから、連携して多様な事業展開が期待できると主張した。

大阪府は「社会課題の解決」「バッテリー関連産業」で支援

大阪府は、「実証事業都市・大阪」を推進スキームを説明。事業を視野に入れていることを強調し、事業者のニーズに応じた実験地などの場所を提供する。地勢として伊丹空港、八尾空港、神戸空港、関西国際空港に囲まれた舞洲、咲洲、大阪万博会場の夢洲のベイエリアを紹介。夢洲は万博終了後、統合型リゾートを予定しており、誘致として空飛ぶクルマを展開できるとしている。

また、バッテリーやセンサー等、構成部材の供給メーカといった関連企業が立地していることから活動拠点としてのポテンシャルを持っているほか、大阪府の社会課題の解決に繋がるビジネスを支援する「産業化戦略センター」とバッテリー関連産業の大阪府進出を支援する「バッテリー戦略推進センター」の2つ掛け合わせた支援が可能としている。