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日本マンガの多言語化を促進。Renta!とめちゃコミの運営会社が共同出資

「Renta!」を運営するパピレスと、「めちゃコミック」を運営するアムタスは29日、日本の電子コミックの海外市場への取次販売や翻訳サポートなどを行なう共同出資会社「アルド・エージェンシー・グローバル(AAG)」の設立に同意したことを発表した。

アムタス代表取締役社長 黒田淳氏(左)、パピレス代表取締役社長 松井康子氏(右)

2018年3月にアムタスの親会社であるインフォコムがパピレスの株式を取得し、両社の協業を検討していた。今回、両社は共同出資会社として、電子コミックの海外市場への取次販売や翻訳サポートなどを行なうAAGを7月に設立する。出資比率はパピレスが66.6%、アムタスが33.4%。代表取締役社長にはパピレス代表取締役社長の松井康子氏が就任する。

すでに海外に子会社を持ち、電子書籍を配信しているパピレスのノウハウと、国内で築いたアムタスのブランド力を組み合わせ、配信先の国や地域の文化や習慣に合わせた作品のローカライズや翻訳、海外配信先の確保、支払いシステムの提供など、出版社が海外にコンテンツ配信する際に必要な業務を代行する。

日本の電子コミックの規模が約30万冊であることに対し、多言語化されているのは約2万冊程度という。AAGではとくに、正確な翻訳、文化に合わせて表現の修正や差し替えを行なうローカライズに注力。個人の翻訳による海賊版サイトが出回っているのは正規翻訳版がないためとし、精度の高い正規本を提供することで、これをを抑制していくと松井氏は述べた。

また、翻訳データがない状態での発注から配信されるまで数カ月かかる従来の状況に対し、AIを活用した翻訳技術の開発などにより効率化、市場に出るまでの期間短縮を目指すとしている。

多言語化に対応していない出版社をサポートし、海外ユーザーに正確な翻訳、ローカライズされた正規版を流通させることで、海賊版の横行を抑制。日本の作家にも活躍の場を広げるチャンスが提供できると強調した。

設立直後は、パピレスの台湾、香港、アメリカの子会社へ取次業務を行なうと同時に、配信先となる電子書籍事業者の開拓を行なう。

ネットを活用する20代から40代をターゲットに、まずは女性向けジャンルをメインに海外配信。めちゃコミック、Renta!の国内ユーザーが女性中心ということから、これらのサービスに対して最初に興味を示す層が女性であると判断したという。

配信の形式については、スマホで読むことを想定してRenta!でも採用しているページが縦スクロールで進む「縦読み」を推進。配信ジャンルとともに国や地域のニーズに合わせて調整するとしている。

将来的にはヨーロッパ、その他アジア地域での展開を計画。すでに漫画の知名度が高い台湾やアメリカなどと異なり、日本の漫画の周知から始める必要があるが、若年層を中心にアニメなどの日本の文化に注目が集まっていることから、積極的に展開していくという。