2001年12月
『スナッチ』

『ターミネーター』

『グリンチ』

2001年11月
『キャスト・アウェイ』

『スター・ウォーズ エピソードI ファントム・メナス』

『ショコラ』

『ゴッドファーザー』

スタンド・バイ・ミー』
2001年10月
『明日に向かって撃て!』

『羊たちの沈黙』

『バトル・ロワイアル』

アンブレイカブル』
2001年9月
『アラビアのロレンス』

『初恋のきた道』

『ペイ・フォワード』

クリムゾン・リバー』
2001年8月
『コヨーテ・アグリー』

『リトル・ダンサー 』

『ザ・セル 特別プレミアム版』

『火垂るの墓 -ほたるのはか-』

『17歳のカルテ コレクターズ・エディション』

2001年7月
『ダイナソー』

『宮廷料理人ヴァテール』

『グリーン・デスティニー』

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』


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原題:『BILLY ELLIOT』
監督:スティーヴン・ダルドリー
製作:グレッグ・ブレンマン/ジョン・フィン
脚本:リー・ホール
撮影監督:ブライアン・トゥファーノ,BSC
編集:ジョン・ウィルソン
出演:ジェイミー・ベル/ジュリー・ウォルターズ/ゲアリー・ルイス ほか

発売メーカー名:日本ヘラルド映画株式会社
定価:4,700円(税別)
■イギリス映画の底力

 今さら改めて言うまでもないのだが、ここ何年間かのイギリス映画は本当に元気がいい。英国映画ブームに火を付けたダニー・ボイルの『トレインスポッティング』しかり、英国映画の人気を不動のものにした『フル・モンティ』しかり、ガイ・リッチーの『ロック・ストック・アンド・トゥースモーキング・バレルズ』そして『スナッチ』しかり。英国映画といえば豪華絢爛な王朝もの、歴史ものが評価を受けていた頃もあったが、今や庶民の日常、夢や希望を喜怒哀楽を交えて描くのが十八番となってしまったかのようだ。

 数々の親しみやすく、かつ秀逸なイギリス作品が世界中で支持され、着実に地位を築いてきた中で、この『リトル・ダンサー』は誕生した。そして瞬時に多くの観客の心を捉えた。「ある少年の葛藤を描いたシンプルな物語」。DVDに収録されたメイキング映像の中で監督がこう評する本作は確かにシンプルだ。そして庶民の力強さと哀しみと喜びに満ち溢れた、極めてイギリスらしい作品と呼べるだろう。アメリカのギラギラしたスポ根ものとも、爽やかすぎる青春ストーリーとも違う、素朴で純粋でとても個人的な感情が凝縮された物語なのである。

 甘くない現実に直面し半ばあきらめモードに入った大人たちと、甘くない現実の中でも夢を見ずにはいられない少年の対比が、きれいごとでは通用しない人生の厳しさを映し出す。だが、あえてそんなリアリティを写すことで人生の素晴らしさを浮き彫りにするイギリス映画の底力が、最近の映画シーンを変えているのである。何もかもがハリウッド映画化してしまった近年、希薄になっていた地域の特異性や文化性などが丁寧に描かれることも魅力のひとつ。大ヒットを放ち続けるイギリス映画成功の鍵はどうやらこの辺に潜んでいるようだ。DVDにはメイキング映像が収録されている。製作の裏話などが監督、俳優たちの言葉から魅力の秘密を探ってみるのもいいかもしれない。

■夢を信じるすべての人へ、そしてかつて夢を抱いていた大人たちへ

 1984年、イギリス。炭鉱の町ダーラムでは、今日も炭鉱夫たちのストライキが行われていた。ビリーの父親と兄もストに参加しており、行く末を案じて苛立ちを隠せない。母親が亡くなってから殺伐としている家庭は、ストライキの激化によってますます閉塞感が増している。そんな暗く閉ざされた世界の中で、ビリーは自己表現の手段としてバレエに魅了されてゆく。だが、炭鉱労働者で「男は強くあるべきだ」という固定観念に縛られた父親はビリーの夢、才能、可能性に理解を示すことができない。それでもビリーは自分を解き放つかのように踊り続け、バレエ・ダンサーになる日を夢見るようになるのだった。

 大きな夢を持つほどに、人は多くの障害に直面する。家庭環境、経済的問題、無理解、偏見。きっとその他にも多くの事柄が状況によって障害になりうるのだろう。この作品の主人公が立ち向かわなければならなかった最大の壁は、炭鉱労働者である父親の「男は強くあるべきだ。バレエをやるなんてとんでもない!」という偏見だった。20年前の古い考えに囚われた世界に限らず、21世紀の現代でも、同じような障壁によって可能性を広げられずに、チャンスすら与えられずにいる少年少女が大勢いるはずである。自由の国として知られるアメリカでさえも状況は似たようなものなのだから。少し前に女子高生ボクサーの青春を描いた『ガールファイト』というアメリカ映画が公開された。現代のアメリカを舞台にした物語であるにもかかわらず、ここでも同様のテーマが扱われていた。女がボクシングをするなんて、と周囲から理解されぬままひたすら突っ走る主人公の姿が印象的だった。『リトル・ダンサー』とは趣も作風も全く異なる作品でありながら2作の共通点は多い。「男だから」「女だから」という偏見がどれだけ無意味なことか、どれだけ人間の可能性を潰してしまうかを思い知らされる点もそのひとつだ。だが彼らは潰されはしない。どんな成功の裏にも努力と強い意志が不可欠であることを力強く教えてくれるのだ。

 「あきらめず前に進もう。希望を捨てなければ必ず夢は叶うのだから」。そんなメッセージを運んでくれる本作が、これから夢を求めようとする少年少女や、今まさに夢に向かって突き進んでいる若者たちにとって大きな支えとなることは間違いない。だが、こうも考える。もしかすると『リトル・ダンサー』という作品は、かつて夢をあきらめた経験のある者にこそ捧げられた映画なのかもしれないと。



■片面2層
■画面サイズ
 :ヴィスタサイズ(16:9)
■収録時間:本編約111分
■音声仕様
 :1,英語 5.1chサラウンド
  2,英語 ドルビーサラウンド
  3,日本語 ドルビーサラウンド
 
映像特典
■ オリジナル予告篇
■メイキング(21分)


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