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「制約と誓約」で原稿が捗る。「原稿執筆カフェ」でひと仕事終えてきた

原稿執筆カフェ

リモートワークの普及により、自宅やカフェなどオフィスではない場所で仕事する、という働き方が一般化しつつあります。生活スタイルにあわせて働ける自由度の高さは快適な一方、仕事の進捗も自分で管理しなければいけないのがリモートワークの課題。自宅やカフェだとつい怠けてしまって仕事が捗らない……、という人も少なくないのではないでしょうか。

そんな人にとって救世主となるかもしれない場所が、高円寺にある「原稿執筆カフェ」。その名の通り原稿執筆に特化したカフェで、入店したが最後、原稿を書き終えるまで退店できないという厳しいルールが課せられています。

店の名前は「原稿執筆」ですが、テキストの執筆だけでなく、動画の編集や写真の加工といった作業も利用に含むので対象は広め。プレゼンで使う資料の作成など、パソコンに向かって黙々と作業できる内容であれば利用できます。

原稿執筆カフェの利用は公式サイトからオンライン予約が可能です。各種メディアで話題になったことに加えて、席数も合計9席と限りがあるため、利用の際は事前のオンライン予約がお勧めです。予約は30日前から可能で、キャンセルは利用開始の1時間前までであれば無料です。

料金はカウンター席が30分240円、2人分の面積となるテーブル席は30分360円で利用可能。延長も閉店時間前かつ他に利用者がいなければ同額で延長できます。なお、閉店時間を過ぎての延長料金は1時間3,000円となるほか、店内がイベントなどで利用中の場合は屋外のテラス席で作業することになります。

作業開始前に時間や文字数などの目標を設定

入店するとカードを渡され、「原稿執筆のための利用であること」「目標を達成しないと精算できないこと」「閉店時間を過ぎると料金が上がること」「精算に現金は使えないこと」という利用規約に加えて、作業の目標や進捗チェックを記入します。目標は時間と文字数やページ数など、具体的な数字を記入します。

入店時に渡されるカード。内容はWebサイトでも確認できる

利用規約だけを見るととても厳しそうに思えますが、目標は自分で設定できますし、達成したかどうかも店員さんがチェックするわけではなく自己判断になるので、目標達成をしたかどうかは自分の判断に委ねられます。無理のない範囲で自分のやりたい目標を素直に記入するといいでしょう。

進捗チェックは店員からの声がけ頻度で、「マイルド」は終了時のみ、「ノーマル」は1時間に1回程度の頻度、「ハード」はより高い頻度で店員が進捗を確認してくれます。このときも内容を確認されるわけではないので、定期的に声をかけて欲しいのか、それとも作業に集中したいかで選びましょう。

ひたすら作業に没頭。気分転換にドリンクやガジェット鑑賞も

カードに記入して提出したらいよいよ作業開始。作業エリアはノートPC1台分程度のスペースで、電源や充電用のUSBケーブルなども利用可能。Wi-Fiはもちろん、窓際の席では空冷のノートPC冷却スタンドを利用することもできます。

窓際の作業エリア。ノートPC1台にマウスや飲み物が置ける程度の広さ
パソコンを置いてみたところ
足下に電源
バーカウンター側の席

あとはただ原稿に向き合い、目標に向けて執筆するだけ。椅子は座ると床に足がつかないくらいの高さで、テーブルの面積もさほど広くはないため、快適とは言いがたいもののの、ノートPCでひたすらテキストを入力するのであれば十分な作業環境。それ以上に、周囲で原稿に向き合っている同志がいるという空気感が集中力を高めさせます。

店内にはミネラルウォーターと電気ポットが用意されており、コーヒーや紅茶、お茶などは料金内で自由に飲むことができます。コールドドリンクはありませんが入退店は自由で、カフェの目の前にはコンビニもあるので、自分のペースで外出して気分転換を図ることもできます。

店内は会話禁止ですが、店の外にあるテラス席であれば会話や喫煙も可能なので、急なビデオ会議の連絡が来ても対応できます。

店内に用意されたホットドリンク
会話もできるテラス席

店内のトイレも隠れたオススメポイント。有志から寄贈を受けた懐かしの携帯電話がトイレの壁中に所狭しと飾られています。自分が使っていた端末や、実物を見たことがない過去の端末を眺めながらちょっとした気分転換を図ることができます。

トイレに飾られた懐かしのガジェットたち

無事に目標を達成したら店員にその旨を伝えて精算します。

支払いは「現金」が利用できません。

キャッシュレス決済はクレジットカードやSuicaなどの交通系IC、iD/QUICPayなどの電子マネー、PayPayやd払いなどのコード決済と充実しています。キャッシュレス決済を利用したことがある人であれば困ることはなさそうです。

制約と誓約が作業の集中力を高める

筆者も何度か原稿執筆カフェを利用して原稿を執筆したことがあります。普段から締め切りが近づいて追い込まれないとなかなか集中して原稿に取り組めない性格なのですが、原稿執筆カフェでは、自宅やカフェなどで書くよりも圧倒的に集中でき、普段原稿を書くのに見込んでいる時間よりも圧倒的に短い時間で原稿を完成して、無事に目標時間内で退店することができました。

実際に体験して感じたのは、「必ず時間内に書き終える」という宣言の力と、店員が見守ってくれる監視の力、そして同じように締め切りに追われた同志が集う場所の力は、作業に集中するために効果的だということです。

もちろん、狭い場所より広い場所のほうが集中できる人もいるでしょうし、そもそも自分でスケジュール管理できる強い精神力の人もいるでしょう。しかし、執筆作業しかできない制約と、必ず書き上げるという誓約という、制約と誓約で力を高めてくれる原稿執筆カフェは、筆者にとってはとても魅力的な場所でした。

ついつい締め切りから目を背けて先に延ばしてしまう、夏休みの宿題を8月末になってから取りかかるタイプの人は、原稿執筆カフェを一度体験してみてはいかがでしょうか。