トピック

ヨドバシで買える「EVトゥクトゥク」に乗ってみた

東南アジアを中心に普及している「トゥクトゥク」。日本ではあまり見かけませんが、バイクのようなクルマのような、不思議な乗り物です。筆者は現地で実際に乗ったことはありませんが、ネットやテレビでよく見かけ、「面白そうな乗り物だなあ」と思っていました。

そんな中、今年1月にヨドバシカメラが「EV-トゥクトゥク」の販売を開始しました。EV-トゥクトゥクは、ビークルファンが取り扱う電機自動車版のトゥクトゥクで、本家トゥクトゥク同様、3輪を備えた小型の車両です。今回はヨドバシカメラとビークルファンの協力により、EV-トゥクトゥクに試乗することができましたので、その様子をレポートします。ちなみに元祖トゥクトゥクの名前の由来は、エンジン音から来ているそうです。

見かけは3輪バイクでもクルマのような操作感

トゥクトゥクは日本では「側車付軽二輪」という扱いになります。側車とは、バイクのサイドカーの事です。トゥクトゥクにサイドカーが付いているわけではありませんが、それと同等、という扱いになっています。つまり、車両としては完全にオートバイ扱いです。しかし、実際に乗ってみるとオートバイという感覚は全くない、クルマに近い乗り物であることがわかりました。

外見的には配達などによく使われる、フード付きの3輪バイクに似ているのですが、全く別の乗り物です。運転はバイクのようなハンドルで行なうのですが、左右に進路を変えたい場合、バイクのように車体を倒す必要が全くありません。ハンドルはバイクそのものに見えますが、ハンドルを左右に操作するだけで車体が進路を変えるので、クルマのステアリング操作に近いです。そのため乗っていて不安定な感じが全くせず、停車中、道路に足を着いて車体を支える必要もありません。

アクセルは右のハンドルのグリップをひねることで加速するのは、スクーターなどと同じです。シフト操作もありません。しかし、クルマのようにサイドブレーキも備えていて、停車時はよりしっかりと止まることができます。また、ハンドルの左右には車輪前後に搭載されているディスクブレーキのレバーもあります。ブレーキレバーのロック機構も搭載されていて、手を離してもブレーキを維持できるようになっています。ブレーキは右側が前輪、左側が後輪で、自転車と同じです。

コクピット周り
中央の液晶ディスプレイが速度などを表示します
ハンドルの右グリップ。グリップはアクセルになっています。上部のトグルスイッチはドライブ、ニュートラル、リバースを切替えます
ハンドルの左グリップ。左右の矢印があるスライドスイッチはウインカー。クラクションはハザードボタンもあります。普通自動車免許を持っていれば特に違和感なく操作できるでしょう
ディスクブレーキを搭載
後輪のホイール

基本的に停車時はブレーキレバーをロックし、サイドブレーキをかけておきます。発車時はキーを回して電源を入れ、ブレーキレバーのロックを確認して、サイドブレーキを下ろし、ブレーキレバーのロックを解除して走る、という流れです。

ハンドルのブレーキはロックできます
サイドブレーキは座席の右側にあります。右ハンドルになれた日本人としては最初だけ少し戸惑うかもしれません

車検や車庫証明が不要

側車付軽二輪ということですが、運転には「普通自動車免許」が必要です。逆に言えば、別途二輪免許をとる必要はありません。普段自動車を運転している人であれば、すぐに乗ることができます。

EVなので当たり前ですが、ガソリンスタンドに行く必要がなく、家庭用100V電源から充電するだけで乗ることができます。充電は車体に直接、専用充電器を接続するか、バッテリーを取り出して専用充電器で充電するか、2つの方法があります。ただ、バッテリー自体はかなり重いので、雨が降っても濡れない場所で、車体に直接充電器を接続できる環境があれば、そちらのほうが楽そうです。

バッテリーはシートの下に内蔵されています

バイク扱いですので、駐車場はバイクの駐車場で大丈夫です。車体としてはかなり大型のバイク扱いとなりますが、有料のバイク駐車場なら普通自動車よりもかなり割安に駐車できるでしょう。もちろん普通自動車の駐車場でも駐車可能ですので、スーパーの無料駐車場などには気兼ねなく駐車できます。駐車時の選択肢は普通自動車よりも多く、クルマとバイクのいいとこ取りができます。ただし、自転車の駐車場には止められませんのでご注意を。

車検や車庫証明も不要ですので、面倒な手続がいりません。公道を走りますのでナンバープレートの申請等は必要になりますが、購入時に各種手続を一括して行なってくれる「納車パック」も用意されています。

本体サイズは、995×1,020×2,010mm(幅×高さ×長さ)で、重量は212kgです。

バイクのようなクルマのような

乗車人数は運転手を含めて3人まで。最高速度は時速40kmで原付より少し速い速度がだせます。アクセルを開くとEVらしくシームレスにグイグイ加速するのが印象的でした。乗車姿勢はスクーターのように足を揃えて座り、背もたれに寄りかかる姿勢になるので、クルマのような感覚です。

最高速度的には近所への買い物などに最適だと思うのですが、航続距離は1回の充電で80km(±10km)あります。遠出しようと思えば意外と遠くにまでいけます。そうはいっても、乗車人数が多いと航続距離は相当減るのでは? と思ったのですが、実際、ビークルファンの社員の方が3人乗車して試したところ、その状態でもほぼ80kmに近い距離まで走れたそうです。3人乗ったからといって、航続距離がいきなり半分以下になる、ということはなさそうで、なかなか頼りになります。ただ、坂道が多いとやはり航続距離的には不利になるのでそのあたりは注意が必要とのこと。

後部座席には可動式のアームレストも装備しています

バイクと違ってしっかりと屋根があり、雨風をある程度防げるのはありがたいです。横風の大雨だとすこし厳しいですが、多少の雨なら雨具を着ることなく走れます。試乗した日もあいにくの小雨だったのですが、全く濡れることはありませんでした。両サイドが完全にオープンなので眺めがとてもよく、運転していて楽しい乗り物です。普通のクルマではなかなか味わえない感覚で、思わず遠出をしたくなります。なお、雨を完全に防ぎたい場合には、雨除けサイドカバーも別売で用意されています。

ワイパーも装備

また、ハンドルにあるボタンを操作することで「リバース(後進)」ができるのもバイクとは異なるところです。しかし、運転席の背後はパネルで覆われているため、後進時に真後ろがあまり見えません。後進で駐車する場合大変なのでは、と思ってしまうのですが、なんとEV-トゥクトゥクにはバックモニタが標準で搭載されていて、リバーススイッチを押した瞬間、前面の液晶パネルに後進方向の映像が表示されます。これはかなり助かります。

サイドミラー

なお、車内にはステレオスピーカーが搭載されていて、Bluetoothでスマホを接続すれば、音楽を楽しむこともできます。ハンドル中央部には音楽操作用のボタンも備えています。

ステレオスピーカーを内蔵しています。
ハンドルの中央部に音楽操作用のボタンが用意されています

EV-トゥクトゥクは「家電」

ヨドバシカメラがEV-トゥクトゥクの取り扱いを始めたきっかけは、車両というよりも「家電」だから、ということだそうです。確かに、ガソリンは要らず、車検もなく、自宅で充電をすればすぐ使えるというのは、まさに「家電」のような気軽さです。

今回試乗に協力いただいた、ビークルファン 事業推進本部の森川博之氏

維持費の面ではどうでしょうか。EV-トゥクトゥクは税制上、軽二輪(総排気量125cc超 250cc以下)の扱いとなり、軽自動車税は3,600円で毎年必要ですが、車検が無く重量税(4,900円)は納車時の一度だけです。

本体価格は66万円ですが、ナンバープレート取得代行や自賠責保険の加入手続などがセットになった「納車パック」が必要です。納車パックは基本となる115,000円にエリア料金が加算されます。東京のエリア料金は30,000円で、合計145,000円です。基本的に東京から遠方になるほど料金がかかります。納車パックには3年分の自賠責保険(11,960円)も含まれています。

初年度はそれなりに費用がかかりますが、毎年の維持費は軽自動車税の3,600円と、別途、自分で加入する任意保険費用、3年毎の自賠責保険費用がメインになります。また、気になる電気代は、フル充電時でおおよそ100円~150円程度とのこと。既に述べたように、1充電で80kmほど走れますので、普段の買い物にも使えるのではないでしょうか。

EV-トゥクトゥクは、電動アシスト自転車よりも維持費は多少かかりますが、自転車と違って自走しますし、クルマのように屋根もあり、雨でも安心です。クルマに近い使い勝手ながらガソリンスタンドに行く必要がなく、自転車のように気軽に乗ることができるのが最大の魅力です。これなら自宅にクルマがあったとしても、「もう一台」として購入するハードルは低そうです。

今後、EVはクルマやバイクなどでますます普及していくと思われますが、気軽に乗れて維持費も安いEV-トゥクトゥクのような選択肢もアリなのではないでしょうか。