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ソフトバンクもスマホ衛星通信? 「心境の変化は大アリ」 LLMは1兆超え目標

ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏

ソフトバンクは、2024年3月期第3四半期の決算を発表した。計画通りの進捗で、実力ベースでは増収増益とし、通期予想は上方修正した。

2024年3月期第3四半期累計の売上高は4兆5,116億円、前年同期比4%増だった。営業利益は7,319億円で、前年同期比7%増。

通期の業績予想は、上方修正により、売上高は6兆円から6兆600億円と、600億円の増加。営業利益は600億円増の8,400億円、純利益は420億円増の4,620億円としている。

ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏は、「どの分野というより、会社全体がうまく機能し、それぞれの努力が積み上がった結果」と上方修正の要因を語っている。

国産LLMは3900億パラメータ、小型モデルも

業績以外にも、進捗のあった事業や話題が広範に取り上げられた。同社が発表している国産LLMの開発は、順調に進み現在は1,300億パラメータのモデルが実現しているという。今後はこれを3倍にした3,900億パラメータのモデルの開発が目標。並行して、画像や符号、図表、コーディングなどに対応するマルチモーダルの実現も、3,900億パラメータのモデルで実現を目指す。

その内容は、日本の文化や習慣を理解したAIが目標という。この大型のLLMから「蒸留」の手法で小型モデルを生み出すなど「研ぎ澄まされたAI」を開発、これらを統合して1兆パラメータ超えを目指すとした。

PayPayの上場は「できるだけいい時期に」

PayPayの業績の推移や上場の可能性については、宮川氏は「営業黒字はもうちょっと先で、今年ではない。十分に手応えは感じている」とコメント。「上場は黒字化してからのほうがいいのでは、とアドバイスしてきた。それが2024年度中かどうかは、まだ何も決まっていない。決済サービスでは敵なしなので、できるだけいい時期にと考えている」(宮川氏)と、上場時期の市況も重要視する方針。

スマホの衛星通信「あらゆる角度で議論」

スマートフォンが低軌道の通信衛星と直接通信するサービスは、KDDIが次世代のスターリンクを利用するサービスとして提供予定を発表済み。ソフトバンクも関連技術の開発を行なっているが、成層圏で無人航空機を運用する(コンセプトが異なる)HAPSなどに注力してきた経緯がある。

しかし、能登半島地震でスターリンクが活躍した様子を目の当たりにして、宮川氏は「心境の変化については、大アリだ」と告白。「空からのダイレクトな通信については口酸っぱく言ってきたことだが、LEO(=低軌道衛星ブロードバンド)の実現の可能性について、深く追求しているところ。物理的な衛星を持っている会社とは、あらゆる角度で議論を重ねている」(宮川氏)と、実現に向け本格的に動いている様子を語っている。

KDDIのローソン共同経営「驚いた」

KDDIがローソンに出資し、三菱商事と2社で共同経営するという体制について、宮川氏は「正直言って、思い切った判断。驚いている」と感想を述べる。一方で、「(宮川氏が)やりたいものと想いが違う。求めているのはもう少しオープンな経済圏。特定の小売業者ではなく、小売業界全体のDXを目指す方向性」として、ソフトバンクの戦略とは異なる考え方であるとしている。

大阪向けの広告は「現場が調子こいた」?

なお、ドコモがネットワーク品質に関する説明会において、ソフトバンクが「大阪府でいちばん快適につながる」などと謳っている広告について景品表示法の優良誤認にあたるのではないかと指摘した件について問われると、「詳細は把握してきれていないが、(一般論として)どこでつながる・つながらないといったことは昔から各社でやりあってきて、しのぎを削ってきた。(最上級表示は)現場が調子こいたのではないか。よく確認しておきます」(宮川氏)と回答。行き過ぎた広告になっている可能性も含めて、再確認するす方針を明らかにしている。