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セイコー「専用すぎる腕時計展」を見てきた すき焼き専用・両利き専用

セイコーウオッチは、東京・原宿で「専用すぎる腕時計展」を開催している。会期は3月31日まで(会期中無休)。時間は11~20時。場所はJR原宿駅前にある「WITH HARAJUKU」1階の「Seiko Seed」。入場料は無料。

このイベントは、同社のデザイナーが日常業務とは異なるアプローチでデザインを試みる「power design project」の2024年の展示となっている。

WITH HARAJUKU
Seiko Seed
展示の様子

これまでセイコーは、ダイバーズウォッチ、競技用ストップウォッチ、鉄道時計など様々な専用時計に注力してきた。今回、その歴史を受け継いで7人のデザイナーが思い入れを込めた“特定用途向け腕時計”を発案。商品化を前提とせずに突き詰めたデザインにすることで、腕時計の新たな可能性を探った。そのため商品化は未定となっている。

いずれの時計も実際に手に取れる展示になっており、質感や重量を確認できる。

これまでに同社がリリースした専用時計の展示も
飽和潜水用の1,000m防水ウォッチ(1986年)
宇宙活動専用腕時計「スプリングドライブ スペースウォーク」。国際宇宙ステーション滞在で使われた(2008年)
鉄道員専用ポケットウォッチ(1929年)
ホッケー競技専用ストップウォッチ(1964年)

晴れ男専用腕時計

腕時計型の日時計なので、“晴れ男”でないと使えないというアイテム。腕時計型の日時計自体は存在するが、本品は日時計としての圧倒的なこだわりが詰め込まれているのが特徴だ。

本体は折り畳み式になっており、各部の回転や緯度に合わせた角度調整機構、加えてコンパスや水準器も備えており、高い精度を目指したという腕時計だ。同社の計測では日差-1.59ミリ秒というから、クォーツ時計よりもよほど正確ということになる。

展開したところ

使うには、方位の確認、文字盤の展開、緯度に合わせたアームのセット、季節に合わせたケースの回転、標準時基準値との経度の差に合わせた文字盤の回転、指時針のセット、水平の確認といった流れが必要というスローな時計だ。

収納状態
水準器も装備
背面の世界地図で大まかな緯度を確認できる
使用方法

腕時計としてはやや大型で、金属のかたまり感がありずっしりと重い。メカニカルな作り込みで、機械式腕時計に通じる魅力もある。このまま商品化してもそれなりに売れるのではないかと思わせるアイテムだ。

日時計の仕組み解説のほか、江戸~明治期の携帯用日時計も展示

すき焼き専用腕時計

担当デザイナーが大好きだというすき焼きを最高の状態に作るためのタイマーを搭載した時計。

すき焼きで有名な「人形町今半」に1人前のレシピを作ってもらい、それを作る工程を盛り込んだ。具材の種類、投入時期、ひっくり返すタイミングなどを網羅した。開発は人形町今半と二人三脚というほどやり取りしたという。

文字盤には食材の名前が並ぶ

文字盤は都会的な印象だが霜降り牛肉をあしらっており、なんともすき焼きが食べたくなるデザインとなっている。名称も「SKYMASTER」ならぬ「SKYKMASTER」。すき焼き愛が大変感じられる1本だ。

内側には油脂、割り下、牛肉の投入タイミングも
ストラップは神戸牛製で、裏面はお肉をイメージしたグラフィックになっている
「すき焼きモード」を独立して備えている
人形町今半総支配人のコメントもあった

パンダ好き専用腕時計

腕時計愛好家は、特にクロノグラフの白と黒からなるモデルを“パンダ”と呼ぶことがある。しかし、動物のパンダ好きからすれば「それはパンダではない」となる。

そんな思いから誕生したのがこの時計で、単にパンダの顔を模したのかと思いきや、しっかりとクロノグラフ(ストップウォッチ)機能を搭載している本格派だ。

ストラップも起毛素材となっている
パンダの顔そのもの。名称は「PANDAGRAPH」で、この文字が口を表している

耳の部分がクロノグラフのボタンになっておりスタート/ストップとリセットができる。目の部分の針は通常の秒針ともうひとつは積算計となっている。

またクロノグラフウォッチによく搭載されているタキメーターも装備。この時計は目盛が二重になっていて、タキメーターのパンダ版として「SASAMETER」と呼んでいる。

二重のタキメーター目盛からなる「SASAMETER」。針は笹の葉をイメージしている

タキメーターは1kmを走った車の平均速度がわかる目盛で、外周部のタキメーター目盛は一般的なクロノグラフのそれだ。一方で内側の目盛は秒針の2周目を計測するものとなっている。

パンダが1kmを走るのに掛かった時間が、例えば2周目の6時位置を指した(90秒かかった)場合、SASAMETERの40の数字を読んで平均時速40kmとわかる(同社によるとパンダの走る速度は時速30kmとのこと)。

由来となったクロノグラフはそのままに、パンダ仕様に落とし込んだこれまたパンダ愛の溢れる時計と言えそうだ。

時計の背面はパンダの背中の柄。尻尾もある
ストラップを止める「つく棒」もパンダの手風
デザイン画などもあった

かくれんぼ専用腕時計

子供達のかくれんぼで鬼は不人気な役だそうで、そんな鬼でも「この時計が使えるならやってみたい」となるような腕時計を目指したとのこと。

異形の理由は、フタを開けて左目で時計を見ると右目も目隠しになるようにするため。レンズを通して覗き込むのでカウントに集中できる。時計は10秒や60秒のカウントができ、時間になるとかくれんぼで聞き覚えのあるメロディが聞こえる仕組みだ。

鬼が交代しても簡単に外せるようにストラップの固定は面ファスナー式。こちらは「赤鬼」バージョンだ
覗くと両目が覆われるようになっている
「青鬼」バージョンも
内部の時計本体も格好良い

鬼になるとカウントを素早く数えてしまう子もいるが、この時計を使うとそうしたこともできなくなる。日本かくれんぼ協会が協力し公式ルールに則った作りになっているため、本気で楽しめそうな時計になっている。

フタに付いているダイヤルを回すことで、見つけた人数のカウントもできる。ダイバーズウォッチの回転ベゼルのように、逆回転防止になっているのが時計メーカーらしいところだ。

人数カウント用のダイヤル。中央のインデックスは角をイメージしたもの
当初は大人用と子供用を別々にしていたが、中間のサイズで一本化した

両利き専用腕時計

作業によって利き手を使い分けている両手利きの人が一定数いるそうで、そうした人のために作られたのがこのモデルだ。

時計の上下の色や仕上げを変えることで、左手に付けたときと右手に付けたときで異なるデザインになるようにした。

針も2色になっている
リュウズも含めて上下で色が異なる。デザインも白い側はやや角張った形状になっていた

右利きの場合(左手に装着)は、左脳を使うことから論理的な思考をイメージする黒板の黒をメインカラーにした。反対に左利きの際は創造的な右脳を使うことからキャンバスや石膏をイメージした白基調のカラーになるようにしている。

黒い側から見たところ
白い側から見たところ

文字盤はダイヤモンドカットのストライプ状にすることで、斜めから見ると色が黒と白に変わる。また、針も2色にし、その時の文字盤カラーの反対の色の針で読めるようにした。

同社では「両手利きの人のパフォーマンスを最大化する」としている。

文字盤の拡大模型

パタンナー専用腕時計

パタンナーはデザイン画をもとに服の型紙を作る職業。まち針を刺せるピンクッションと一体になっているのが特徴だ。

実用的にまち針を刺しておくこともできるが、花形のクッションのほうは12分割されているので文字盤の延長として時間を絡めた場所に針を刺して目印にできる。

腕時計に大きな布製品が付いているのは珍しい
落ち着いたカラーも

文化学園大学の学生と教員が協力し、使い勝手などを検討していった。製作にはぬいぐるみ製作会社の協力も得たという力作だ。

リュウズが距離を経てクッションの外側に出ている構造も苦労した部分とのこと。また、下部のリュウズは文字盤の日付ダイヤルを回すためのもので、締切までのカウントダウンができるようにしてある。

2カ所のリューズもまち針がモチーフ。ストラップには服飾品のようなタグを縫い付ける工夫も
文字盤外周を回すことで日数のカウントダウンが可能
部材の紹介もしていた

マスキングテープ好き専用腕時計

コレクションとしてもファンが多いマスキングテープ(マステ)。それを時計にはめ込めるようにしたのが本作。

マステの着脱機構も色々検討し、ストラップを付けたままでも入れ替えができるようにした。付けるマステを替えると時計の雰囲気もガラッと変わる。

切り離してインデックスになるオリジナルマステも提案
ネジ式でマステを挟めるようにした

さらに面白いのは、切ったマステを内側に貼れるようにしていること。自分でインデックス風に貼り付けたり、何かの時刻のマーキングにしたりと文字盤をオリジナルにデザイン可能だ。

インデックスにマステを貼ったもの
こちらは3時のおやつを表現

ストラップを外せば置き時計のように使うこともできるので、好きなマステといつも一緒に過ごせる。

付けるマステによって印象が変わる。また上段右は置き時計としての例

機能美を堪能できる

以上簡単に紹介したが、関連資料の展示も多く見応えのあるイベントになっていた。どれも、例えばスマートウォッチとは比較にならないほど単機能な時計だが、それだけに道具感、機能美といったものを感じることができると思う。

過去のpower design projectの展示品もあった。これは初代クオーツアストロンをモチーフにしたもの

デザイナーと一緒に作品をまわるギャラリーツアーも行なわれているほか、ワークショップも今後実施される予定だ(詳細は公式Webサイトで告知される)。

ギャラリーツアーの日程

なお、会場でアンケートに答えるとシールがもらえるのでこちらも見逃さないようにしたい。

シールのプレゼント企画も