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地震発生時の新幹線緊急停止が2.6秒早くなる JR東日本

新幹線早期地震検知システム

JR東日本は、地震検知後に地震規模を推定するプロセスを改良し、地震発生後に新幹線を従来より早く緊急停止することを可能にした。鉄道総合技術研究所(鉄道総研)の研究成果に基づき改良が行なわれたもので、2024年3月の使用開始を予定している。

地震発生時に新幹線を緊急停止させる、「新幹線早期地震検知システム」は、各地の地震計で観測された地震動に基づき、地震計から変電所へ送電を停止させ、新幹線を少しでも早く緊急停止する仕組み。観測される初期微動(P波)と主要動(S波)のそれぞれを用いることで、緊急停止の早期化と多重化を図っている。

また、新幹線開業以来、地震計の増設や気象庁の緊急地震速報および防災科学技術研究所の海底地震計など、社外地震情報も活用して改良を行なってきた。

S波検知では、S波の振幅から列車を緊急停止させる仕組みだが、S波よりも早く伝播するP波による検知方法は、観測したP波から地震諸元(震央距離、震央方位、地震規模(マグニチュード))を推定し、推定したマグニチュードに応じた緊急停止範囲の新幹線をS波到達前に緊急停止させる仕組みとなっている。

マグニチュードの推定には、鉄道総研の研究成果に基づく推定式を使用。この推定式は、過去の地震で得られたP波の振幅、震央距離などとその際のマグニチュードから、統計的に求めている。

P波検知直後の推定精度が向上

マグニチュードはP波の振幅の大きさに比例することが知られるが、P波全体でもその振幅は時々刻々と変化するため、1秒ごとにマグニチュードを推定している。P波の振幅は時間とともに大きくなるのが一般的だが、これまで推定式の係数は時間に関係なく一定としていた。今回、推定式の係数を1秒ごとの時間とともに変化させることで、P波検知1秒後から4秒後の推定精度が今までよりも改善し、実際のマグニチュードにより近い値を、より早く推定することが可能になった。

これを過去3年間のP波検知により緊急停止した13地震で検証した結果、P波検知から送電停止までに要する時間が現行式の平均3.9秒から改良式では1.3秒と、平均2.6秒短縮できることがわかった。一例として、2022年3月16日に発生した福島県沖地震では、3.1秒の時間短縮となる結果を得られている。