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日本の標準時、原子時計を超える超高精度“光格子時計”利用へ

ストロンチウム光格子時計

情報通信研究機構(NICT)は、原子時計を超える高精度な「光格子時計」を利用して、日本の国家標準時の生成に成功したと発表した。国家標準時を光格子時計で生成するのは世界初。今後は光格子時計を含めたシステムで、他国の時計に頼ることなく長期にわたって正確な時刻を刻むことが可能になる。

光格子時計が発生する1秒を基準として、日本の標準時が刻む1秒の長さ(刻み幅)を調整。協定世界時(UTC)に対する時刻差を、従来の10億分の20秒から10億分の5秒以内へと、4分の1以下に抑えられるようになった。

日本標準時は、2006年から水素メーザ原子時計と約18台のセシウム原子時計を組み合わせるシステムにより供給されてきた。これらの商用原子時計は、多数台の平均でも、発振周波数が15桁目で変動し、数カ月の単位でUTCとの時刻差が10ナノ秒以上に広がるという課題があった。このため、UTCを提供する国際度量衡局(BIPM)から半月遅れで公表される時刻差データを参照して、手作業で日本標準時の周波数を調整する必要があった。

一方、NICTが開発したストロンチウム光格子時計は、過去10年近く世界の多数の機関で測定された結果、周波数不確かさが極めて小さいことが分かっている。周波数は精度を劣化させずにマイクロ波の電気信号に変換し、これを日本標準時のマイクロ波と比べることで、どの程度ずれているかを16桁の精度で正確に計測できる。

NICTは妥当性評価を2021年6月から行ない、日本の標準時の周波数調整を継続的に実施、標準時のUTCに対する変動を抑えることができたとしている。

光格子時計の導入で低減した日本標準時と協定世界時の時刻差

近年はこのような光時計の進化が著しいことから、2030年に国際的な委員会で「秒の再定義」が検討されている。光時計による標準時の精度の維持は、「秒の再定義」において望ましい条件のひとつで、今回の成果はこの条件を満たす実証例になった。

今後NICTでは、次世代の通信技術(Beyond 5G/6G)や、相対論による測地技術などに活用する方法を開発・提案していく。

また、近年は過度なGPSへの依存に対して世界的に注意喚起が行なわれている状況で、日本がUTCやGPSなどの他国のシステムに依存せず正確な時刻を刻めることは、経済安全保障にもつながるとしている。このほか災害への耐久性の観点から、NICT本部(東京都小金井市)の原子時計のみによる標準時生成を、NICT神戸副局などを利用して分散化することにも取り組む。