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テレビがXbox。MSがクラウドゲーミングを加速

マイクロソフトは「What's Next for Gaming」と題して、かねてから拡大してきたクラウドゲーミング戦略などの拡張を発表した。

同社は日本時間6月13日午前2時からオンラインで「Xbox & Bethesda Games Showcase」を開催し、新たなゲームタイトルなどを大々的に発表する。今回はその前に、それらのゲームをプレイする環境の拡大と、ゲームビジネス環境の変化についてアピールする狙いがある。

サムスン製テレビに拡大、Edge連携も強化

Xboxは'21年11月、「ゲーム機」として生まれてから20周年を迎えた。だが現在は、ハードウェア以上に「サービスプラットフォーム」としての意味合いが強くなっている。

その中で大きな武器となっているのが「クラウドゲーミング」だ。

クラウドゲーミングは、クラウド上にあるサーバー群の中でゲームそのものを動かし、プレイヤーが使っているハードウェアの性能に依存することなく、ハイエンドなゲームをプレイ可能にする仕組み。日本でも昨年10月より利用可能となっている。

この辺の事情と考え方については、昨年の「What's Next for Gaming」に関する記事もご参照いただきたい。

プラットフォーム拡大に関するもっとも大きなニュースは、同社がサムスンと提携し、サムスン製のスマートテレビに「Xbox Cloud Gaming」の機能を搭載することが挙げられる。ゲーム機を用意することなく、コントローラーのみをBluetoothで接続し、すぐにゲームをプレイ可能にする。

サムスン製スマートTVに、Xbox Cloud Gamingの機能が標準搭載される。公開は6月30日から

サムスンは日本でテレビ製品を展開していないものの、世界的にはハイエンドテレビのトップグループに位置する企業である。その中に標準機能として「Xbox Cloud Gaming」の機能が入るのは、プラットフォーム戦略としてインパクトがある。

この機能は海外のサムスン製テレビの2022年モデルに、6月30日より提供が開始されるという。

また、Windows 11との連携もさらに強化される。

Windowsの標準ウェブブラウザーである「Microsoft Edge」にXbox Cloud Gamingと連携する機能が追加される。カジュアルなゲームをすぐに呼び出すための「GamesHub」が搭載され、マイクロソフトが用意しているホーム画面の「Game」タブから、クリックするだけでXbox Cloud Gamingからプレイできる。

EdgeとXbox Cloud Gamingとの連携を強化

また、Edgeでクラウドゲーミングをプレイする場合には、映像をよりクリアにする「Clarity Boost」も可能になるという。

EdgeでXbox Cloud Gamingをプレイする際には、画質をクリアにする「Clarity Boost」も可能に

あらゆるデバイスに「Xbox Game Pass」を

マイクロソフトのCEO of Microsoft Gamingであるフィル・スペンサー氏は次のように述べている。

マイクロソフト・CEO of Microsoft Gaming フィル・スペンサー氏

「我々は何十億人ものプレイヤーにリーチできるプラットフォームを構築しています。コンソールであれ、PCであれ、Xboxであれ、クラウドストリーミングであれ、プレイヤーがプレイしたいデバイスにあるコンテンツを見つけることができるはずです。ウェブブラウザであろうと、アプリであろうと、テレビであろうと、ゲームをプレイするための専用デバイスであろうと、プレイしたいコンテンツを見つけられるようにすることが、Xboxの基本です」

狙いはあらゆるデバイスで「Xbox」というプラットフォームを使えるようにすることだ

先日はEpic Gamesの「Fortnite」をクラウドゲーミングで提供し、あらゆる環境でプレイ可能にしたことも注目された。Epic Gamesはアップルと「AppStoreの料金モデル」に関して係争中で、アプリとしてはiPhoneなど、アップルのプラットフォームには提供されていない。だが、クラウドを使うことでウェブブラウザーを介し、iPhoneでもプレイ可能になっている。

こうした環境を整備するのは、「Xbox Game Pass」という会員制サービスの存在が大きい。数百のゲームを「遊び放題」で提供し、ゲーム機・PC・クラウドから遊べるようにすることで、プラットフォーム拡大によって会員サービスによるビジネス基盤確立を目指しているのだ。6月13日午前2時 からの「Xbox & Bethesda Games Showcase」でもビッグタイトルを発表し、そうした基盤で「遊び放題」として提供、強固な会員基盤とファンの定着を狙う。

Xbox Game Passでの「有料サブスク会員増加」がマイクロソフトのビジネスモデルの軸だ

ゲームの早期公開と認知を助ける「Project Moorcroft」

また、面白い試みとなるのが「Project Moorcroft」だ。

これは簡単に言えば、ゲームの一部やデモなどを、オンラインを介してマイクロソフトのXbox Game Pass加入者に提供する機能。それもマイクロソフトだけでなく、小さなゲーム会社にも公開される。

狙いは、ゲームイベントなどのもつ「新しいゲームをアピールする」機能をオンライン化し、小さなゲームメーカーにも提供することだ。

ただ、Xbox Game Passでこうした機能を提供することで、ゲーム会社にビジネス上の負担が出るのは避けたい。

そこで、参加するゲーム会社はマイクロソフトから金銭的な補償と、「展示」したゲームへのフィードバックを得られる仕組みも導入される。

こうしたことは、PC用ゲームプラットフォーム「Steam」で「早期アクセス」として提供されているものに近い考え方だが、「有料会員制」の中で展開するのがポイントだろう。

この機能は2023年にリリースされる予定だ。