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食事は食堂、家具・洗濯機はレンタル。クラウドサービス的な単身者マンション

パークアクシス錦糸町スタイルズ外観

三井不動産レジデンシャルは東京都の錦糸町に食堂やシェアキッチン、家具のサブスクリプションなどのある賃貸マンション「パークアクシス錦糸町スタイルズ」を竣工した。現在、入居者を募集中で、4月中旬ごろから入居を開始する。

パークアクシス錦糸町スタイルズは、専有部分を最小限にする代わり食堂やランドリーなどの共用部分を充実させた単身者向けの賃貸マンション。コロナ禍以降に多様化しているライフスタイルに対応するような物件となる。

「誰でも入居できる社宅」というようなイメージで、食事や洗濯は共用設備で行なったり、家具のサブスクリプションなどが提供される。いわゆるミニマリスト的な生活や家事に不慣れな学生や社会人1年目、単身赴任者などに向いた物件となっている。また、電気ガス水道は入居者が手続きすることなく定額で利用できるようになっているので、通常の物件より簡単に入退去できる。ウィークリーマンションのような短期利用だけを見込んでいるのではなく、長期居住も可能だ。

周辺環境。飲食店などは少なく、住居と事務所や工場が混在するエリア

建物は7階建てで、全96戸。敷地面積は238.9坪。JR総武線の錦糸町駅からは駅歩10分、東京メトロ半蔵門線の錦糸町駅からは徒歩11分、住吉駅からは徒歩10分、都営新宿線の菊川駅からは徒歩9分程度と、駅間のような位置にあるが、その分、複数の駅が使える。また、使える路線も多く、東京都区部の東部へのアクセスは良好だ。

三井不動産レジデンシャルでは各地に賃貸マンションのパークアクシスを展開していて、(スタイルズが付かない)パークアクシス錦糸町も別の建物として存在する。また、社宅なども手がけている。しかし食堂やランドリーなどの共用施設を充実させた一般向け賃貸マンションというのは今回が初の試みとなる。今後も同様の賃貸マンションを展開するかは、今回の物件の反響次第、という形だ。

食堂ラウンジ。奥が厨房

“ほぼ原価”の食堂。充実の共用施設

共用施設は1階に集約されていて、集合玄関を入ると、すぐに食堂にもなるラウンジとなっている。ラウンジの奥には厨房があり、朝食(平日6時半〜9時半)と夕食(平日18時半〜21時)が販売される。

メニュー例。最もシンプル
メニュー例。こちらは充実している
メニュー例。一人暮らしでは面倒な焼き魚もある
メニュー例。プレートで提供することでコストを下げている

この食堂は、「管理費共益費でコックを雇い、材料費を払って作ってもらう」というイメージで、食器の上げ下げはセルフサービスだが、原価に近い価格で提供される。メニューや価格は変わる可能性があるが、現状では朝食は200円〜450円、夕食は400円を想定している。支払いは非接触ICの電子マネー限定。

食堂ラウンジ。さまざまなタイプの机や椅子が並んでいる

このほかにも定期的にアルコールやジュースなどのドリンクを提供するイベントも実施する。その場合も500円程度と安価に提供される。

食堂の運営は株式会社LEOCが担当。メニューは価格や健康だけでなく、フードロスにも配慮し、通常は流通しない形状の悪い野菜なども使われる。また、材料が余るようなときは、入居者に割引販売の案内をして食材廃棄を減らす工夫もするという。

選書の本棚の一部。少しだけマンガもある

1階のラウンジはセキュリティロックのかかっている集合玄関の内側にあるので、入居者しか使えないが、入居者は2人までのゲストとともに利用することが可能。また、食事だけでなく、つろいだり作業をしたりするのにも使えて、有隣堂による選書の置かれた本棚もある。

ワークブース。キツキツというほど狭くはないが、ドアを閉めると圧迫感はあるかも

このほかには予約が必要なものの、無料で使える各種共用設備もある。例えばラウンジの隅にある扉付きのワークブースは、予約すれば無料で使える。

キッチン。オールステンレスでIH。
レンタルできる調理器具類。鍋やフライパンなどがある

ラウンジにあるキッチンも予約すれば無料で利用でき、調理器具や食器も同様に無料レンタルできる。使用後の調理器具などは厨房を担当するLEOCが洗浄してくれるので、「前の利用者がちゃんと洗ったかどうかよくわからん」ということがない。

レンタル器具類

ちょっとした家電なども予約すれば無料でレンタルできる。たとえば掃除機やアイロン、IHコンロ、炊飯器などの貸出があるので、自室で炊事しないといけないときにはレンタルできるというわけだ。

レンタル備品置き場のすぐ隣はウッドデッキがある。このウッドデッキ、避難経路でもあるので家具類は置かれていないが、入居者は利用できるので、折りたたみのアウトドアチェアなんかも欲しいところだ。

ラウンジにあるカウンター。食事に使っても良いけど作業にも良さげ
ソファのあるエリア。ゆっくり読書したいときはこちらか

ラウンジには作業向けのカウンターやリラックスできるソファなども置かれている。椅子や机は統一感なくさまざまなタイプが用意されているので、学生寮や社宅の食堂とは異なる、ゆったりとした雰囲気だ。気分によっていろいろな椅子やソファを使えるのも良いところ。ただしワークブース以外は予約制ではないので、座り心地の良い席は早い者勝ちになる。

男性用ランドリースペース

ラウンジの隣には予約制だが無料で使えるランドリースペースがある。男性用はオープンスペースにあり、女性用はセキュリティのかかったドアの中にある。男性用だけでも14台ものドラム式洗濯機があるので、数台壊れていても運用には問題がなさそうだ。

有償の駐輪場があるほか、無料のレンタサイクルがある。また、敷地内に身障者用1台を含む2台の駐車場、10台のバイク置き場もある。

宅配ボックスあり

集合玄関から入るにはセキュリティキーが必要。管理人は常駐せず、厨房担当者は長時間滞在する(現状の運用では厨房担当者は居住する予定とか)が、厨房担当者は管理会社への仲介はするものの、厨房以外のことには対応はしないため、通常の賃貸マンション同様、入居者は何かあったときは管理会社に電話などで連絡する。

廊下のないタイプは玄関ドアを開けるといきなり居室だが、玄関部に目隠しのロールスクリーンカーテンがある

個室は必要最小限。家具も借りられる

個室はすべてワンルーム仕様で広さは15.83〜18.00m2と、間取りも広さも最小限になっている。

6畳の部屋。ちなみに全室バルコニーがある

メインとなる部屋の広さは5〜6畳程度なので、本当に寝室1部屋のみという仕様だ。ベッドと机、テレビ台を置いたらほぼ一杯になるので、必要に応じてロフトベッドやソファベッドなどを活用するべきところだろう。

水回りはトイレ、風呂、洗面台のみで、各戸にキッチンは用意されない。細かい間取りの作り方は部屋ごとに違っている。これはパークアクシス錦糸町スタイルズのような賃貸マンションは三井不動産レジデンシャルにとって初ということもあり、実験的にいろいろな間取りを試している、という面もある。

洗面脱衣室にトイレのある欧米スタイル。効率的だ

たとえば12戸だけ、バスタブがなくシャワーブースのみの部屋がある。バスルームではなくシャワーブースになっているので、居室部分は同じ面積でも占有面積は小さく済むというメリットもある。基本的にバス・トイレは別となるが、間取りによって洗面所にトイレがある欧米スタイル、トイレが個室で洗面台や脱衣が廊下、といったバリエーションがある。

廊下のあるタイプ。廊下から直で洗面台、トイレ、風呂なので、風呂に入るときは廊下で脱衣する

家賃は部屋の広さで異なる。たとえばメインの居室が5.4畳、洗面脱衣トイレが1室になっているタイプだと、賃料が10.9万円+管理費共益費1万円。敷金礼金は1カ月で退去時の清掃費用は通常38,500円。駐輪ステッカー代は1,100円。

ユニークなポイントとしては水道光熱費は月8,800円の定額制となっている。電気ガス水道は運営会社側が契約するので、入居者による契約手続きが最小限となる。電気は建物全体で一括受電しているが、グリーン電力も取り入れるなど、環境へも配慮している。

各戸のインターネット環境は、つなぐネットコミュニケーションズが担当していて、ラウンジではWi-Fi、各部屋で固定回線が追加料金なしで利用できる。ただしこちらの回線の帯域は、建物全体の共有なため、多数の入居者が動画配信やビデオ会議などを同時に利用する場合、帯域不足になる可能性がある。

そこで、オプションサービスとして共有ではない通信帯域を確保する、「Connectix」という専用サービスも提供する。こちらはソフトウェア的に仮想ネットワーク回線を作るので、オンライン申込みにより工事不要、即日利用可能となっている。これにより、テレワーク時のビデオ会議で一人だけカクカクしている、といった事態を防ぐことができる。

ここに写っているベッド、マット、机、椅子、テレビ台で6,300円/月くらいとか

このほか、家具のサブスクリプションサービスも提供される。たとえばベッドが月2,000円程度、半年・1年・2年の契約ができる。2022年度中は限定キャンペーンとして、プロのインテリアコーディネーターが選んだ家具を借りることもできる。