ニュース

ヒトiPS細胞から生成のミニ腸を試験販売。再生医療や創薬・動物実験代替

ミニ腸

大日本印刷(DNP)は、再生医療や創薬への応用が期待できるという、生体の腸に近い特性を示す立体臓器(ミニ腸)の試験販売を実施する。

ミニ腸はヒトiPS細胞から作られた直径1.5mm以上の球状構造の細胞。DNPでは2017年に、国立成育医療研究センターと共同で試験管内でのミニ腸の創生に世界で初めて成功しており、研究用途で販売されることになった。

DNPでは試験販売の背景として、ミニ腸が、怪我や病気で失った臓器などを修復する再生医療での利用や、新薬の有効性・安全性を確認する創薬分野での応用が見込まれるとしている。また近年は動物実験の禁止・削減を求める機運の高まりや代替技術の発展により、ヒトの細胞や臓器に近い試験管の中で作られるミニチュア臓器(オルガノイド)が求められており、特定保健用食品や機能性表示食品の開発を行なう食品企業でもニーズが高まっているとしている。

提供時の状態(細胞培養用フラスコに入ったミニ腸)

DNP独自技術を使用、試験に利用しやすい構造

ミニ腸は、印刷プロセスで培ってきた微細加工技術や精密塗工技術などを応用・発展させたDNP独自の「薄膜多層パターニング技術」を活用、ヒトiPS細胞から試験管内で生成される。

ヒト腸管をそのまま小さくした立体臓器で、腸上皮細胞や筋肉細胞、神経細胞を持つほか、筋肉の収縮で食べ物を移動させる蠕動(ぜんどう)運動や吸収・分泌といった生体の腸に近い機能も有する。またヒトの下痢や便秘の際に使用する薬剤に対して、生体の腸と同様に反応することが確認されているという。

通常の腸は栄養を吸収する上皮が内側にあるが、ミニ腸は上皮が外側を向いているのも特徴で、薬などの効き目を評価する吸収試験に適した構造。またDNPが提供するミニ腸は直径1.5mm以上で、他社と比較して大きく、試験に使用しやすいサイズとした。到着後に培養する必要がなくさまざまな実証試験に利用できるとしている。

ミニ腸の構造模式図

再生医療への取り組み

DNPはミニ腸の試験販売を通じてニーズを収集、2025年の量産に向けて作製プロセスを開発していく方針。

同社は印刷技術や情報技術などの強みを活かしてメディカルヘルスケア分野の新規事業開発に注力しており、今後も特殊な細胞培養容器の品質・性能のさらなる向上、細胞画像解析技術を活かした非破壊での細胞品質管理技術の開発を進めていくとしている。