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東大とDNP、肌に貼り付け伸縮する「スキンディスプレイ」をフルカラー化

東京大学と大日本印刷の共同研究グループは、皮膚に貼り付けて使える伸縮可能な薄型フルカラーディスプレイの製造に成功したと発表した。

薄いゴムシート上に実装された、12×12ドット、144画素のフルカラーLEDディスプレイ。駆動回路、通信回路、電源が一体化しており、外部から送信された情報の表示に単体で対応する。

全体の厚みは約2mmで、130%までの伸縮を繰り返しても、ディスプレイの電気的・機械的特性が損なわれない点が特徴。人間の皮膚を含む様々な曲面に貼り付けて使用できる。表示部の駆動電圧は3.7V、表示スピードは60Hz、最大消費電力は平均100mW。

研究と開発を行なっているのは、東京大学の染谷隆夫博士率いる研究チームと、大日本印刷。同チームではこのディスプレイを「スキンディスプレイ」と呼んでおり、2018年には今回発表したフルカラーLEDスキンディスプレイの先駆けとなる、単色表示のディスプレイを開発している。2018年のスキンディスプレイ発表時に今後の課題として「構成デバイスの信頼性向上」や「さらなる高集積化」「大面積化」を挙げていた。

人間の肌のような「伸び縮みする曲面」に貼り付けられるディスプレイは、伸縮時の電気抵抗変動や繰り返しによる断線など、素材や実装上の課題を多く抱えていた。しかし同チームが独自に開発した「伸縮性ハイブリッド電子実装技術」によって、柔軟な基材を曲げ伸ばししても抵抗値が変わらない電極配線が可能となったほか、柔らかい部品と硬い部品が同時に実装された電子回路を形成した際にも断線しにくくなったという。

同チームではこの2年間でスキンディスプレイに使える部品の選択肢が増えたことによって、実用化のめどがついたと報告。発表資料では、スマートフォンから転送したカラフルなハートマークの画像をスキンディスプレイに表示しており、単体で機能するコミュニケーションツールにまとめている。

スキンディスプレイは、非対面コミュニケーション下における非言語コミュニケーション要素の欠落を補う手段としての利用が見込まれる。今後は、人間の体表面に近いところで表示するセンシングデバイスがコミュニケーションに与える効果を検証しながら、同時に実用化に関する検証に取り組むとしている。