ニュース

カードとID基盤で攻める楽天のキャッシュレス。「楽天ペイ」アプリに集約

「クレジットカードナンバーワン」でFintechをリード

楽天の三木谷浩史会長兼社長

楽天が開催した自社イベント「Rakuten Optimism 2019」。代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏らが登壇した初日の講演では5Gがメインテーマとなっていたが、その中でキャッシュレス決済に関する話題も多く、同社の力の入れ具合が分かる構成になっていた。

楽天のキャッシュレス決済の主力はクレジットカードの楽天カードだ。楽天クレジットを2004年に立ち上げてからすでに15年近くの実績があり、会員数は1,700万になった。取扱高は約7.5兆円に達し、しかも前年比20%増と年々上昇を続けているそうだ。三木谷社長は、「名実ともに日本ナンバーワンになった。成長も高く、クレジットカードのレイヤーでは圧倒的ナンバーワン」と胸を張る。

楽天のFinTech事業の取り組み。2004年にはクレジットカード事業を開始している
楽天カードの会員数の拡大
楽天カードの取扱高は拡大を続けている

楽天銀行は700万口座となり、「2~3年以内に1,000万口座を超える」(三木谷社長)見込み。2001年から発行を開始した楽天Edyは、利用可能個所は65万カ所、発行枚数は1億2,060万枚となり、「発行数もナンバーワン」(同)だ。

楽天Edyは古参電子マネーとして確実に存在感を示している
楽天FinTech事業の経済圏。楽天銀行、楽天カードに加え、楽天Edyや楽天ポイント、そして楽天ペイなどを抱える

共通ポイントの楽天ポイントは、2014年10月以来、拡大を続けており、取扱流通金額は前年同期比98.3%増と急拡大。発行したポイントの総額は年間2,500億になり、累計で1兆2,000億以上に達しているという。

1.2兆ポイントに達した楽天ポイントの累計発行額
他社と比べても多い年間2,500億というポイントを発行している

「楽天ペイ」アプリに機能集約し、顧客基盤を活用

これに最近はコード決済の「楽天ペイ」も用意。クレジットカード、電子マネー、QRコードといった幅広い決済方法をカバーする楽天だが、この決済方法レイヤーはオープン戦略を採用する。その一環が、来春から提供する楽天ペイアプリ内でのSuica発行機能だ。これによって楽天EdyとSuicaという2大電子マネーを一つのアプリでカバーできる。

楽天ペイアプリでSuicaチャージ可能に。JR東日本と楽天が連携

楽天のいう決済の3つのレイヤー。楽天ペイというワンパッケージのUIで決済をスムーズに行ない、それ以外のレイヤーはオープン戦略
楽天ペイ自体は同社の決済サービスをカバーする。今後、JPQRのサポートやSuicaの発行、銀行チャージの対応などを進める

このオープン戦略は、決済手法のレイヤーでも採用されている。楽天EdyはFeliCaを使った非接触決済、楽天ペイは二次元コード、クレジットカードはICといった具合に複数をサポートし、さらに同イベント内でもデモ展示されていた顔認証、モバイルオーダーといった新技術のように、決済をどのように行なうか、という部分はこだわらないという。

完全キャッシュレスや顔認証でペイ。「Rakuten Optimism」

その代わり、IDとインタフェースを楽天が抑える、というのが同社の戦略だ。楽天会員は約1億の大台となり、それだけの利用者数を抱え、楽天ポイントによる囲い込みも強化している。楽天ペイメントの中村晃一社長によれば、国内消費額285兆円のうち、88兆円がポイントによるものだという。-->消費税増税にともなう国のポイント還元施策もあり、今後も「ポイント経済はさらに拡大する」と楽天ペイメントの中村晃一社長。

会員数とポイントの囲い込み、そして対応店舗網の数といった3要素をサービスの柱とする
楽天Edy、楽天ポイント、そして楽天ペイ対応個所は300万カ所に達している

こうした会員数やポイント利用を背景に、共通したUIで決済を利用できる楽天ペイアプリを連携させることで、決済体験をよりスムーズにすることが狙い。決済を楽天ペイに集約することで、決済と共通ポイントの利用動向を踏まえた大量のデータを蓄積できるのも強みだ。

「現金のデータ分析は限定的」(中村社長)であり、キャッシュレス化によって支払いがデジタル化すると、決済情報や消費行動がデータ化できる、と中村社長は強調する。大量のデータを集めて分析することで、各種のマーケティングが可能になるという。

キャッシュレス化によって、決済にともなうさまざまなデータが収集できる
これによって、利用者にとっても役立つマーケティングを目指す

「マーケティングの進化は企業への競争力だけでなく、利用者にとっても快いアプローチ形成に役立つ」と中村社長。もちろん、そこにはデータの管理体制が必須で、個人情報やセキュリティ対策、各種法制度への対応などは、長年の金融事業でノウハウを蓄積。「体制や仕組み、ルールを作るだけでなく、データ活用にはフィロソフィが必要」(同)で、「やっていいこと」と「やってほしいこと」は異なることもある、と中村社長は指摘する。「ユーザーが喜ぶマーケティングこそサスティナブル」(同)。それを同社は目指す考えだ。

楽天ペイメントの中村晃一社長