こどもとIT

小学2年生がScratchで渋谷交差点をシミュレーションしてグランプリを獲得!

――「第4回全国小中学生プログラミング大会 最終審査会・表彰式」レポート

第4回全国小中学生プログラミング大会の最終審査会が、10月20日、秋葉原ダイビル秋葉原コンベンションホールで開催された。最終審査に選ばれた10組の小中学生の子供達の作品が一堂に介し、最終審査と入賞作品の表彰式が行われた。

審査委員による審査風景

15歳未満を対象とした小中学生向けのプログラミング大会で、今年で4回目となる。2018年からは「U-22プログラミング・コンテスト」と連携。プログラミングを追究したい子供たちへのネクストステップの提案や、両活動の強みを生かした連携施策を打ち出している。

審査会の舞台となった秋葉原コンベンションホールホワイエでは、小中学生プログラミング大会入選作品の展示と最終選考が行われ、同時にU-22プログラミング・コンテストの審査も行われた。

大会のテーマは、今年からは自由となった。PC・スマート フォン・タブレットで動作するプログラムやアプリ・ゲーム・ムービーなどのソフトウェア、ロボット、 電子工作などのハードウェアであれば使用言語や作品形式は問わずに応募できる。

グランプリを獲得したのは、「現実シリーズ2 渋谷スクランブル交差点信号機」を作った小学校2年生の小長井聡介さん。渋谷スクランブル交差点信号機は、その名の通り、渋谷駅前のスクランブル交差点の様子をシミュレーションしたもの。

「現実シリーズ2 渋谷スクランブル交差点信号機」の作者、小長井聡介さん(小2)

この作品を作るにあたっては、小長井さんは現地に出向いて取材を行い、さらに実際の航空写真を使ってグラフィック画面を作り上げた。渋滞の状況については、最初に設定しておくと信号が変わるごとに画面の中の人、自動車が動き出す。渋滞の様子をプログラミングでシミュレーションし、分析することで、安全で渋滞のない交差点を作ることができないか? と考えたことが開発のきっかけになったのだという。

現実シリーズ2 渋谷スクランブル交差点信号機は、実際に出向いて取材して開発したというシュミュレーション

審査委員長の東京大学名誉教授 河口洋一郎氏は、「社会的意義をつながる作品であること、現地に出向いて取材して作り上げたという姿勢も素晴らしい」とこの作品を高く評価した。

審査委員長の河口洋一郎氏は、「開発にあたって現地まで出向いて取材したことは素晴らしい」と高く評価した

準グランプリに選ばれたのは、「会話おたすけ音声ロボット」を作った小学校3年生の安藤颯亮さん。テレビでホーキング博士を見たのをきっかけに開発したという、身体が不自由な人でも指のわずかな動きで会話できるようになる、アーム付きシステム。ロゴブロックを使って作ったロボットハンドを腕にはめて、文字が書かれた画面を操作することで会話することができる。

「会話おたすけ音声ロボット」の作者、安藤颯亮さん(小3)
会話おたすけ音声ロボットは、身体が不自由な人でも会話ができるようになるシステム

ロボットハンドには大人用、子供用が用意され、大人だけでなく、子供でも利用できるように配慮されている。審査委員の松林弘治氏は、「人の役に立ちたいという気持ちは素晴らしい」とした上で、ソフトだけでなくレゴを組み立てて作ったロボットアームというハードウェアを組み合わせたシステムを開発し、「自分なりに形にして、身体をあまり動かせない人でも会話できるようにしたことは素晴らしい」と、考えたものを形にした点を評価した。

審査委員の松林弘治氏からは、ソフトとハードをセットで開発した点と、人の役に立つものを開発したいと考え取り組んだことに対して評価の声があがった

優秀賞・中学部門は、「Let’sえいごパズル!」を開発した中学2年生の平野正太郎さん。Let'sえいごパズル!は英単語学習システムで、文字を表示させる部分は基盤、筐体ともにオリジナルで作った力作だ。

「Let'sえいごパズル!」の作者、平野正太郎さん(中2)
文字を表示させる部分は基盤、筐体ともにオリジナルで作った英単語学習システム

優秀賞・小学校高学年部門は、「Famik」を開発した小学6年生の澁谷知希さん。スマートフォンアプリで、病院の検索、さらに病状の管理や複数の人の病状、熱などを時系列に記録できる、アプリストアで提供されていても不思議のないアプリだ。

「Famik」の作者、澁谷知希さん(小6)
病状を管理し、複数の人の病状、熱などを時系列に記録することができる病院探索アプリ

優秀賞・小学校低学年部門は、「まほうのぼうしと黒猫アキラとピカつむり」の越智千晶さん、小学校2年生。micro:bitを活用し、センサーで夏の暑い日でも、外に出ることなく温度や湿度を測って知らせてくれる。越智さんは、キラキラ光るプログラミング工作を「まほうシリーズ」として開発しているそうだ。

「まほうのぼうしと黒猫アキラとピカつむり」の作者、越智千晶さん(小2)
夏の暑い日でも、外に出ることなく温度や湿度を測って知らせてくれる

そのほか、入選となったのは次の5作品。

「ぺんき屋さん/PAINT!」は中学校3年生の荒島拓仁さんの作品。ブロックを塗りつぶす能力や、吸い取る能力を使いながらステージを進めていくゲーム。可愛いキャラクターも荒島さんが描いたオリジナルだ。

「ぺんき屋さん/PAINT!」の作者、荒島拓仁さん(中3)
ブロックを塗りつぶす能力や、吸い取る能力を使いながらステージを進めていくゲーム

「げきむずクレーンゲーム」は小学校5年生の白川瑛士さんの作品。その名の通り、簡単には景品を取ることができないクレーンゲームで、筐体から何から全て手作りで作り上げた。

「げきむずクレーンゲーム」の作者、白川瑛士さん(小5)
簡単には景品を取ることができないクレーンゲームを目指し、筐体から何から全て手作りで作り上げたという

「STAPLER」は小学校5年生の森谷頼安さんの作品。STAPLERはホッチキス芯を貯めるゲームで、忙しい人が多いのに、忙しく操作しなければいけないゲームが多いことに疑問を感じた森谷さんが、ノンビリ進めることを目指して開発したという。日本語だけでなく、英語モードも用意されている。

「STAPLER」の作者、森谷頼安さん(小5)
ノンビリ進められるゲームを目指して開発したホッチキス芯を貯めるゲーム

「TILES」は小学6年生の井上将煌さんの作品。タイルをつなげて道を作り、街を開拓していくゲーム。開拓にはお金や食料、人口などがゼロになるとゲームオーバーで、疫病や飢饉などの災害も起こる。

「TILES」の作者、井上将煌さん(小6)
タイルをつなげて道を作り街を開拓していくゲームで、お金や食料、人口などがゼロになるとゲームオーバー

「未来のごみ箱~CANBO~」は、小学校6年生の小川桃佳さん、小学校4年生の小川りりかさん、残念ながら当日参加できなかった小学校6年生の川添結衣さんの3人チーム「Step To The Future」の作品。機械学習によって瓶、缶といったゴミを正しく分類してくれるほか、自走機能によりごみ箱が近くに来てくれる、まさに未来のごみ箱だ。

「未来のごみ箱~CANBO~」の作者、「Step To The Future」の小川桃佳さん(小6)と小川りりかさん(小4)
機械学習によって瓶、缶といったゴミを正しく分類し、自走機能でごみ箱が近くに来てくれる

大会実行委員長で、東京大学 先端科学技術研究センター教授の稲見昌彦氏は、「4回の大会を全て見ているが、連続参加している方の成長を感じる部分もあり、新たに参加してくださった方も多く、コンテストが広がっていることを感じます。プログラミングというと、非人間的なものと思われがちですが、実はその人の個性が色濃く出るものだと感じています。是非、今回の作品を周囲のお友達にも見せてください」と最終審査会の結果についてコメント。

大会実行委員長で、東京大学 先端科学技術研究センター教授の稲見昌彦氏

確かに最終審査に残った作品からは、参加した子どもたちの個性が強く感じられた。個性を伸ばすひとつの道として、プログラミングコンテストが大きな役割を果たしているといえそうだ。

【お詫びと訂正】初出時に準グランプリのコメンテーターを「増井雄一郎氏」としていましたが、「松林弘治氏」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。

三浦優子

日本大学芸術学部映画学科卒業。2年間同校に勤務後、1990年、株式会社コンピュータ・ニュース社(現・株式会社BCN)に記者として勤務。2003年、同社を退社し、フリーランスライターに。PC Watch、クラウド WatchをはじめIT系媒体で執筆活動を行っている。