こどもとIT

子どもたちが21世紀を生き抜くための“6つのスキル”を指標化したルーブリックを発表──日本マイクロソフトの教育向け新施策

日本マイクロソフト 執行役員常務 パブリックセクター事業本部長 佐藤知成氏

日本マイクロソフトは、2018年6月20日、教育分野における方針や新施策を発表する説明会を、東京・千代田区の3331 Arts Chiyoda(アーツ千代田 3331)にて行った。

同社 執行役員常務 パブリックセクター事業本部長の佐藤知成氏は、「日本マイクロソフトは、ゆりかごから墓場まで、幼児から老年まで人の一生に寄り添う企業を目指している。その一生に寄り添って様々な施策を展開している。ここでは教育事業について紹介する」と語った。

すでに同社は、新たなデジタルライフスタイルを提案する業界団体「WDLC」(ウィンドウズ デジタルライフスタイル コンソーシアム)の参画メンバーとして、プログラミングをいち早く取り入れたい小学校向けに「micro:bit」と授業案などを無償提供する各種の取り組みをスタートさせているという。

WDLCとの連携による家庭学習支援

教育分野において存在感を増すマイクロソフトの3つの取り組み

日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長 中井陽子氏

続いて、同社の文教営業統括本部を率いる中井陽子氏が登壇し、「教育の現場は大きく変わってきている。子どもたちは学校だけでなくインターネットを通じて無限の情報に触れられるようになり、学びの場も広がった。10年以内に見たこともない職業やテクノロジーが登場してくるなかで子どもたちは活躍していかなければならない。そうした現状のなか、学びの現場でどういうスキルを提供していくべきなのか、それをマイクロソフトがどう支援していけるのかを真摯に考えている」と語った。

文部科学省の2016年度の調査によると、教育用コンピューターの95%をWindows OSが占めているという。また、日本マイクロソフトの調査でも、日本全国の小中高でのOffice導入率は90%、2017年10月に登場したばかりのMicrosoft 365 Education契約校数も112校に上り、今もまだ増え続けているなど、教育分野における同社の存在感は強い。

中井氏は、「学びが変わるなか、教育現場を支えるソフトウェアも変わっていかなければ」と語り、下記の3つの観点からマイクロソフトの教育分野への取り組みを紹介した。

① 子どもの学び方
② 先生の教え方
③ 学校での働き方

① 子どもの学び方:「Future-ready skills」

世界的にも、教育は「協働学習」「コラボレーション」という方向にシフトしつつある。このたび日本マイクロソフトは、子どもたちが21世紀の国際競争社会を生き抜いていく力を「Future-ready skills」として“6つのC”にまとめた。

マイクロソフトが考える「Future-ready skills」

・Communication:議論しあう力
・Collaboration:協働しあう力
・Critical Thinking:疑問を逃さない思考性
・Creativity:創造性
・Curiosity:好奇心
・Computational Thinking:計算論的思考

「この6つは子どもたちの将来に向けた贈り物だ。日本マイクロソフトは、この原理をもとに、Microsoft 365 Educationの中でさまざまなアプリを提供していく」(中井氏)。

さらに同社は、このFuture-ready skillsを教育現場で推進するための日本独自の評価シートを制作、学校の先生が6つの力の進捗度を確認できるルーブリックとして定義した。このルーブリックは、文部科学省が発表した「新学習指導要領」に沿った形で作成しており、“完全にマッチングされているものではないが、ある程度カバーできる内容になっている”という。

「Future-ready skills」のルーブリック化
教則本「できる2020年教育改革 基本編 Microsoft 365 Education対応」を無償配布

また、Microsoft 365 Educationをどのように教育の現場で使うかという具体例をまとめた教則本「できる2020年教育改革 基本編 Microsoft 365 Education対応」も、学校関係者に無償配布する。

すでに2018年2月には、全国ICT教育首長協議会との連携のもと、Microsoft 365 Educationを搭載したWindows PCをモデル校に配布し、どう学びが変わるのか試してもらう「ステップモデル校プロジェクト」を開始し、現時点で8自治体が参加を表明しているという。2019年度にはさらに小中学校で6自治体、高校で5自治体の参加を目標としている。

Future-ready skillsステップモデル校プロジェクトへの展開

そのほか、教育機関向けWindows PCのラインナップが過去最高に増えたことにも触れ、「低価格のエントリーモデルからハイスペックなものまでニーズに応じて選んでいただける。かつてはタブレットPCという選択肢もあったが、最近は協働学習で他人に伝えるためにはキーボードが必須と言われている。また、ペンなど低価格だが入力デバイスとしてリッチなものも登場してきている」と中井氏は語った。

② 先生の教え方:教育者をサポートするプログラムを提供

マイクロソフトは、2015年より、教育者をサポートするプログラム「Microsoft Innovative Education Programs」も提供している。

オンライン・オフラインで行われる研修には、本説明会の時点ですでに国内543校の2万3867人が参加し、6953名がマイクロソフト教育者認定を取得している。

また、教育コンテンツをコミュニティ上で公開してもらう取り組みでは、すでに日本の先生による学習指導案、教材、レポートなど727件が無償公開されている。

さらに、とくに先進的な教育に取り組んでいる先生を「マイクロソフト認定 教育イノベーター」として認定しており、日本では現在113名が認定を受けているという。同認定を受けている人は全世界に6000人以上おり、教育イノベーターが集結するサミットなども開催されている。

教育者を支援するプログラムは大きく分けて3つある

教育者同士のマッチングプログラムもあり、例えば滋賀県立米原高等学校では、すでに世界数十か国の学校とディスカッションする取り組みを実施している。生徒たちにはディスカッションの度に「思っていたのと違う!」という驚きと学びが生まれ、能力アップにつながっているという。

同社は今後、新しい学習指導要領が浸透していくと見込まれる2022年までに、教員研修参加者を10万人、認定教育者を4万人、コミュニティで公開される指導案/教材/レポートを5000件、マイクロソフト認定教育イノベーター300人とすることを目標としているという。

③ 学校での働き方:先生の働き方を“見える化”して業務改善

中井氏は続いて、「先生方の長時間労働の改善が求められる昨今、働き方改革を実施したいと考える学校は50%を超えており、その中の7割以上がICTを活用したいと考えている」と中井氏は述べ、その課題に働きかけるソリューションを紹介した。それが教職員の勤務時間管理ソリューションだ。

教職員の勤務時間管理ソリューション 働き方の見える化

教職員が、各自の属性データを備えたExcelファイルに勤務時間を入力しアップロードするだけでデータが蓄積され、Power BIで自動的に視覚化される。日々のデータに閾値を設け、「月に40時間を超えると赤文字表示する」など、視覚的にフィードバックすることで働き方に対す る意識改革を促せる。さらに、「運動部の先生だけ」「進路指導をしている先生だけ」など属性による分析も可能であり、校長や学校経営者が全体の勤務状況を把握できるため、問題が生じている場合などタイムリーに対応することが可能だ。

また、さらに上のレイヤーでは、教育委員会が「学校別」「年代別」「部活別」などの勤務状況をチェックして課題を把握することができる。それを研修という形で各学校にフィードバックするなど、“攻めの働き方改革”が可能になるとしている。

本ソリューションは現在パートナーと協力して開発されており、マイクロソフトはこうした学校改革を支えるソリューションを今後も提供していく予定だという。

ルーブリックを地域単体で使うのではなく、相互に関連づけながら取り組むことが大事

北海道立教育研究所 所長 北村善春氏

最後に、地方で教育に携わる立場から、北海道立教育研究所 所長の北村善春氏が登壇し、「人口減少が進むなか、これからの北海道を支える人材の育成をどのように図っていくか。学校教育にできることは何かを考えたい」と語り、ステップモデル校プロジェクトの一環となる「十勝清水 未来教育プロジェクト」について紹介した。

北海道清水高等学校では、Microsoft 365 Educationやルーブリックを活用した指導の質の向上や、地域と連携した人材育成、業務の効率化、教職員向けICT活用研修や支援体制の構築に取り組んでいく。また、その成果をそのほかのステップモデル校プロジェクトや道内プロジェクトなどと相互に共有・活用していく計画だ。

十勝清水 未来教育プロジェクト

「地域ごとに課題は異なる。ルーブリックは目標であり評価仕様ではあるが、ただそれを地域単体で取り組むだけでは力はつかない。教育関係者や地域が相互に関連づけ、共同で実践、検証する取り組みが大事だ。そのなかで成果と課題が明らかになってくる」(北村氏)。

最後に中井氏は、「マイクロソフトの調べでは、これから7年後にはAIやロボティクスはある程度の職業をカバーできる時代がやってくる。例えばアメリカを走っている自動車の10%は自動運転になるだろうし、薬剤師の仕事は完全にAI化され、企業の監査の30%はAIでできるようになる。そんな時代を迎えるなかで、子どもたちに“6つのスキル”を身に着けていただきたい。そのためにも、3年後には半数以上の教育機関にMicrosoft 365 Educationを採用いただくことを目標に、教育者の方々とともにさまざまな改革を進めていきたい」と語り、発表を終えた。

池辺紗也子